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セーラー服と絆創膏  作者: 柚月
セーラー服と海賊
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セーラー服と海賊・10

「っ、ぃ・・・ッ!!?」

「コラ!何動いてんの!」


不意に動いたのは夜で。

いくら麻酔が効いているといっても、動けばなかなかの激痛が体を電撃のように走る。

それに思わず呻き声を上げれば、気付いたサラクに怒られた。


「あ・ん・せ・い!」

「いや・・・でも、私、」


行かなきゃ。


脂汗を浮かせて苦笑いする夜に、サラクとクロは眉根を寄せる。

なぜ、という問いしか浮かばないからだ。


そんな二人の疑問に気付いたように、夜はベッドから必死に体を起こしながら言葉を続けた。



「クウヤ、私を守ってくれるんですよ。」


そう、誓ってくれた。


「だから、私もクウヤを守るよ、って」


そう、約束した。



「"ともだち"、なんです。」


だから、行かなきゃ。

だから、止めなきなきゃ。


「理由があろうとなかろうと、私は知ったこっちゃないんです。私には関係ない。」


でも、小さい頃に皆習うでしょう?


「ケンカは、だめ。仲良くしなさい、って。」


誰も止めないなら、誰も教えないなら、


「なら、"私が"止めてあげなくちゃ。」



さも当たり前だと言わんばかりに告げる夜。

呆れを通り越して驚くクロを尻目に、サラクは夜に近付いて、夜の体をひょい、と抱き上げた。


本物の姫を扱うような、至極優しくお姫様抱っこで、だ。


「夜ちゃんにとったら、セキも獅子王も子供扱いなのね。・・・ふふっ・・・ほんっと、変わった子。」

「ぅわわわわ・・・っ!!?ちょ、サラクさん!?」

「痛くて歩けないでしょ?いいから大人しくしてなさいな。」

「・・・お、重く、ありません、か・・・?」

「まさか!羽みたいに軽いわよ?」

「っ、ッ・・・」


あーこの人、天然タラシだ。絶対そうだ。


顔を真っ赤にした夜がそんな失礼な事を思いながら押し黙ったのを確認したサラクは、満足そうに笑いながらそのまま歩き出す。


「さ、さらく、」

「あんたも一緒に来るんでしょ?ほら、行くわよ。」

「、あ、あぁ、わかった。」


心配そうにあたふたするクロにそう言うと、三人は揃って部屋の外へ出た。


すると、廊下の窓から差し込む光を目に映した夜。

あれ、と思わず声を上げれば、それに気付いたサラクがその疑問に答える。


「一晩中、まるーっと寝てたのよ。だから今は朝。因みにここは海の上。」

「え?」

「お天道様が上がってる真っ昼間に海賊船なんかが港にいたら、流石に捕まっちゃうじゃない。」

「あ、そっか。海賊、なんでしたね。」

「怖い?」

「逆にびっくりするくらい、怖くないです。」


えへへ、だって海賊さんなのに、私のこと助けてくれるなんて。


「言われなきゃ、海賊だって分かんないくらい。」


クスクスと笑みを漏らす夜。

サラクは何度目になるか分からない苦笑を浮かべて、それ以上は何も言わなかった。


どうにもこの子にはペースを乱される。


それだけ思ってもう一度苦笑した後、サラクは辿り着いた甲板へのドアへと手をかけた。



「さ、て。馬鹿達はどこかしらね?」


ぎぃ、とドアを開ければ、差し込み溢れ出す眩しすぎる光に夜は目を細めて。

徐々に慣らしながら目を段々と開いていけば、その目に飛び込んできたのは、真っ青な空と深い群青の海と真っ白な雲。


「わ、ぁ、」


思わず漏れた歓声だったが、それは次の瞬間には野太い声たちに掻き消された。


「頭ぁ!!いけぇぇぇ!」

「そこだ!っ、てめ、獅子王!!避けてんじゃねぇぞ!!!」



「・・・・・あっち、ね。」


深い深い溜め息を吐き出したサラクは、声のする方へと足を進める。


少し歩けば、そこに丸くなり、中央を空けるように円上に集まった男達。

その中心からは鈍い音が幾度も聞こえてきて、更に重い溜め息をついたサラクはその中心に向かって歩みを進めた。


「はいはい、ちょっと退きなさい。」

「ちょ、押すな・・・って、サラクさん!?」

「セキと獅子王はココ?」

「は、はい!!」


正にモーゼの如く。

あまりにも自然に出来ていく中心までの道を、サラクは当然のように進む。


そしてすぐにその中心に辿り着き、呆れた声を上げた。


「何してんのよ。」


サラクの視線の先には、中々に怪我だらけの鬼と獅子が一匹ずつ。

こちらの登場にさえ気付いていないのか、互いしか見えていないかのように拳を交わす二人。


「い、ってぇな・・・!!!」

「はっ、避けられねえてめぇが悪いんだろうが!鈍くなったんじゃねぇか!?獅子王さんよぉ!!」

「手ぇ抜いてやってんだよ・・・!」


呆れてものも言えないとは正にこの事。

言葉もなく呆れるサラクの腕の中で、夜だけは思わず声を漏らした。


「クウ、ヤ、」


それは小さな声だった。

最も側にいたサラクがやっと聞き取れる程度の、だ。




それ、なのに。



「、夜・・・?」



ふ、と向けられる声と視線。


次の瞬間には時間が止まり、そして瞬間移動のように夜の元へと駆け寄ったのはクウヤで。


「夜、」

「うん、そうだよ。おはよ。」


朝から何してんの。

だめだよ、ケンカ。

あーあー、怪我だらけ。

せっかくの男前が台無しじゃん。

まったくもー。



捲し立てるように言えば、しばし呆然となるクウヤ。

だがすぐに我に返ると、サラクの腕から夜を奪い取ろうと手を伸ばす。


「こら、この子は怪我人。乱暴しないの。」

「夜に触るんじゃねえよ。」

「はいはい、焼きもち妬かないの。なーんにもしないわよ。」


言われ、恨めしそうにサラクを睨むクウヤ。

サラクはそんな視線などさらっと無視して、当て付けるかのような嫌味な笑みを浮かべた。



そんな光景を近場で見ていた夜が、ふ、と吹き出したのはその直後。


「あは、は・・・大丈夫そうで良かった。」


その、言葉に。


正に空気が固まった。



「っ・・・だ、」




「大丈夫じゃねぇのは、てめぇだろーが!!!」




正に、怒声。


しかもその声は、クウヤの物でもサラクの物でも、クロのものでもなく。


怒鳴り掛けたクウヤの声を遮った人物は、クウヤと先程まで対峙していた、



セキ、の、ものだった。




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