セーラー服と海賊・7
「ぁ、あ・・・、ッ」
「夜チャン、理解したか?」
お前が喧嘩売った相手がどんな野郎かを。
「思い知れよ。海賊相手に啖呵切ったら、どうなるか」
凶悪な笑みで振り上げた拳は容赦なくクウヤに振り下ろされて。
通常なら避けられるだろうその拳を、クウヤは避ける事もせず受け入れた。
動けば、夜に何をされるか分からない。
動かなければ、夜に危害が加えられる可能性は少ない。
「夜、」
あぁ、こんなにもか。
「夜、」
お前さえ無事ならいい、だなんて、
本気でそう思えるんだ。
口から、頭から流れ出した赤い液体。
痛みも感じる。だがそれ以上に、胸が熱くて仕方がなかった。
無意識に浮かべるのは笑みで、その理由を探せばそんなものは簡単に見つかった。
ただ、守れているという実感が、たまらなく嬉しいんだ。
「ゃ、め、・・・っやめて、やめてやめてやめてやめて・・・────!!」
夜の泣き声が響く。
けれどセキの攻撃は止まらず、クウヤはただそれを受け続けるばかり。
そうする理由も意味もセキには全く理解など出来ず、ただ苛立ちだけが沸いてくる。
「、っ何なんだよ!!だせぇなぁ、獅子王!!!てめぇはそんなんじゃねーだろーが!!!」
怒鳴り声が、夜闇に響く。
クウヤは、燃えるような怒りを灯したセキの片目をしっかりと見上げ、
そして、
正に座して、頭を下げた。
「夜を、離してくれ。」
刹那、訪れた静寂。
“あの”獅子王が、人に頭を下げたのだ。誰もがその目を疑い、その光景に釘付けになった。
「っ・・・───────!!!」
猛ったのは、鬼。
意味の分からない怒りだけが頭を支配し、雄叫びのような声にならない怒声と共に、今までとは比べ物にならない程の力を込めて足を振り上げる。
誰もが動きを止めた。
夜を捕まえていた手からは不意に力が抜け、
その、刹那。
夜の足が床を蹴った。
「っ、!!!」
飛び込んだのはクウヤとセキの間。
それを二人は同時に目に映したが、足を止める事も、体を動かす事も出来はしなかった。
「ぁ、ぐ・・・ッ!!!」
鈍い、鈍い音がして、軽々と宙を舞った夜の体。
その後床に叩きつけられたその体から漏れたのは、小さな呻き声。
目が回った。
胃が熱かった。
すぐに吐き気が込み上げて、胃酸と鉄を味覚に感じながら、夜はそれを吐き出した。
「ぅ゛、えッ・・・ぁ・・・ッ」
力なく横たわり、ひゅーひゅーと必死に呼吸を繰り返す夜。
溢れた涙で滲む視界の先には、硬直した金色と立ち竦む赤色が見えた。
けれどそこに向かい言葉を発する余裕など今の夜には皆無。
痛みと吐き気と目眩で、ただただ嗚咽だけしか出なかった。
遠のく意識と暗転していく視界を感じたのはその直後。
痛みに、恐怖に、
夜はそこで意識を手放した。




