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セーラー服と絆創膏  作者: 柚月
セーラー服と海賊
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セーラー服と海賊・5

投げたサンダルはちょうどクウヤとセキの間を通り抜け、ちゃぽんと小さな音を立てて真っ暗な海へと飲み込まれていった。


「「は・・・?」」


同じ声は違う口から出て。

一瞬唖然とした二人は、またも同時にサンダルが飛んできた方向を見て。


「・・・なに、を・・・?」


その言葉を発したのは、クウヤとセキと同じような唖然とした表情を伺わせるクロで、それを聞いた夜は少し息を荒げながら早口で喋り出した。


「こんな暗闇で、しかも片目見えなくて、それで正々堂々なワケない!!」


同じ環境で戦うからこその正々堂々だ。

たとえその眼帯の下に本当に見えない目があるとしても、


「それでも昼間ならまだ見えるはずだもん・・・!」


わざわざ自分に不利な状況を選ぶのは、


「それは、勇敢なワケじゃない」


そんなの、


「そんなの、ただの負けた時の言い訳になるだけだ・・・っ」



ドス、と。


鈍い音がしたのはその直後。



気付いた時にはもう、夜の背中は気の床に当たっていて。

腰に跨がる男の手に握られた刃が、夜の顔の数ミリ隣に突き立てられていた。


「夜チャン、今、何か言いやがったか?」

「、・・・こんなのを、正々堂々なんて言わないで下さい。」

「ッ・・・!!」


高い、音がした。


それが自分の頬を張られた音だと夜が気付いた時にはもう、その頬は朱に染まっていて。

拳で殴らなかった分威力は抑えたであろうそれも、夜からすればかなりの衝撃で。


無意識でも浮きそうになる涙を感じながら、それでも夜は自分を真上から睨み付けるセキの目を真っ直ぐに見上げた。


「・・・正々堂々は、真正面から相手の顔を真っ直ぐ見て、」


堂々と高らかに、己の名を告げ、


「それから、力を交える」


微塵も、欠片も、互いの条件に・・・自分の状態に不満足ではいけない。

負けて言い訳が残るのも駄目だ。

勝って不服が残るのも駄目だ。



「正々堂々、」


それは、


「それは限り無く対等でなくてはいけない。」



祖父の言葉を思い出しながら、ゆっくりと告げていく夜。

心の奥でずっと覚えているその台詞は、祖父が自分に教えてくれた言葉の中でも特別残っているものだった。


「・・・っ、お前に何が分かるってんだよ・・・!?」

「何も。でもだからこそ、」


だからこそ、言えるんです。



真っ直ぐな言葉は、セキの言葉を奪った。

何も返せず固まるセキを、クウヤが蹴り飛ばしたのはその直後だった。


「退け」


勢いよく入った蹴りは容赦なくセキを遠くへと弾き、倒れていた夜は次の瞬間にはもうクウヤの腕の中へ。

そして親指で優しく夜の頬を撫でると、まるで自分が痛みを感じているかのように顔を歪めた。


「・・・大丈夫、か?」


守ると、言ったのに。


守ると、誓ったのに。



守れなかった事が、ただ悔しくて。 



「・・・く、クウヤ、」

「悪い・・・」

「大丈夫、だから、」


だから離してくれという夜の声を、クウヤは聞こえないフリをした。


情けなく歪んだ己の顔を、夜にだけは見せたくなかったから。




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