セーラー服と海賊・4
夜闇の中、黒、赤・金の順で跳ぶように駆ける三つの影。
誰の目にも映らぬ程の静けさと速さで向かう先は、波の音しか聞こえぬ海岸で。
岩場の向こうに僅かな灯りが見えてくれば、あとはもう、当然の如くそこに辿り着いた。
「めをあけてもだいじょうぶ」
「、・・・っ」
クロの声で、恐る恐る目を開く夜。
暗闇に慣れていない目は目眩を引き起こし、僅かに体がふらついた。
「ぅ、わ・・・、ッ」
「、」
と、咄嗟にその体を支えてくれたのはクロの手で。
夜は一瞬驚いてから、微かに見えるようになったクロの顔を見上げながら、薄くはにかんだ。
「すみません、ありがとうございます。」
今度はクロが驚く番だった。
刃を、つきつけたのだ。
自分は、この少女に。
それを忘れているとでも言うのか。
クロの動揺は口にさえ出なかったものの、思わず夜を凝視すれば夜の目がきょとんとこちらを見上げていて、クロは慌てて目を反らした。
と、
不意に声が聞こえたのはその時。
「てめぇの船までわざわざ連れて来て、何のつもりだ?あぁ??」
「そうトゲトゲすんなよ。せっかく宴会開いてやろーとしてんだからよ。」
「・・・はっ、ロクでもねぇ宴会に呼び出しやがって・・・覚悟は、出来てんだろうなぁ?」
言葉一つ一つに込められた殺気。
肌に感じる痛いほどのそれに、夜は思わずその場に崩れ落ちるように座り込んだ。
「っ夜!!!」
咄嗟に叫んだのはクウヤ。
慌ててそちらに近付こうとすれば、セキがそれを遮るように刃をクウヤの前に突き出して。
「・・・夜チャンのトコに行きたきゃ、・・・・分かってンだろ?どーすりゃいいか。」
「殺されてぇのか」
「冗談、」
殺してーんだよ。
刹那、散った火花。
それはクウヤとセキの顔を照らした。
怒りに哮る獅子と、
怨みに燃える炎鬼。
双方の目には確かな殺意。そして手にした刃は、容赦なく互いに振り下ろされて。
「・・・セキ、」
小さく漏れたクロの声。
それを耳に拾った夜がクロを見上げれば、そこから見えたのは何かに耐えている目。
そして固く握り締めた拳が震えるのを見て、夜はふと、何かに気付いた気がした。
クロの目線の先。
そこには闘う二人の姿。
押しているのは、クウヤだ。
刃同士が合わさった時に散る火花の明るさで見える2人の様子で、クウヤの優勢が見て取れる。
実力に、さほど差があるわけではないように見えるのに、どこかに違和感があった。
「・・・目、だ。」
そうだ、そうじゃないか。
目に眼帯をしていた。
こんな暗闇で、力の均衡した相手で、片目で戦って優勢なワケがない。
だけど、
「ここを、選んだ」
例え知っている船だとしても、灯りの殆どないこの場所を。
そして、
「一言も、言わない」
私を、人質にしようとは。
考えつかないワケがないのに。
弱みを握っているのに。
それなのに、
「なん、で、」
呟いた夜の声を拾ったのはクロ。
すっと夜の隣に膝をついたクロは、夜を立ち上がらせてやりながら言葉を発した。
「せいせい、どうどう」
ししおうにたいしては、
「それでかたないと、いみがない」
クロの言葉を全部理解した訳ではなかった。
けれど、なんとなくは理解出来たつもりで、
そして気付けば、履いてきてしまっていた宿のサンダルを、クウヤとセキの二人に向かって思い切り投げつけていた。
「フェアじゃない!!!」




