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セーラー服と絆創膏  作者: 柚月
セーラー服と海賊
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セーラー服と海賊・3

「やっちまった・・・」


風呂場に壁伝いに座り込んだクウヤは、思わず呟いて髪の毛をガシガシと掻き毟った。


うとうとと睡魔に襲われ、次に目を開いた時に映ったのは石けんの匂いをさせた、湯上がりで上気した頬をした夜で。

まともに働いてなかった頭は、理性よりも欲望を優先させた。


「、柔らか・・・」


男では有り得ない、白い柔らかな肌とか。

黒い、優しい目とか。

頼りない、細い体とか。


名を呼ぶ、声とか。


「っ・・・ッ、っ」


思い返すだけで、反応しそうになる男の本性。

どうにもならない高ぶりを抑えようと、クウヤは壁に頭を一発ぶちあてた。


「何が、」


何が何もしない、だ。



どう謝れば許してくれるかと考える頭の片隅で、居眠りをするほどに夜に対して心を許している自分に気付いたクウヤは、しっかりしろと再度壁に頭をぶつけた。




一方の夜はといえば、未だに回復出来ずに座り込んでいて。


クウヤの、首元にかかった吐息が。

弱々しい声が。


耳に、頭に、全身に染み付いて忘れていかない。


「・・・クウヤ、の、変態・・・!」


真っ赤な顔のまま小さく怒鳴った、



その刹那。



「まだガキじゃねぇかよ。」


ふと、背後に感じた気配。


驚いて振り向こうとすれば、それよりも早く床に押し倒され、頭の上で一括りに、片手で縫い付けられる両腕。


「っ・・・!?」

「ツラも普通。なんだぁ?獅子王の奴、趣味が変わってんなぁ。」


仰向けに倒された夜の上にのしかかった男は、獰猛な目で夜を見下ろしながら口元に弧を描いた。


「こんばんわ、お嬢チャン。」

「、っ、だ、れ・・・?」

「・・・俺?」


炎鬼だ。


男は笑みを浮かべたまま、そう告げる。


告げて、夜の顔に自分の顔を近付けた。


「獅子王は風呂?・・・なら、出てくるまで一緒に遊んでてくれねぇ?」


ぞわ、と夜の全身に立つ鳥肌。

知っていた訳ではないが、その男の目が人をいたぶるのを楽しむ類の人間なんだと感じさせて。


「や、っ・・・っ」

「はっ、声は合格。」

「はな・・・っ、はなし、て・・・ッ・・・!」

「度胸もなかなか」


品定めするような言葉に、背筋が戦慄く。

そんな夜を嘲笑うかのように、男の手が夜の上着に掛けられて。


「ひっ・・・!!」

「若ぇなぁ。キレーな肌してやがる」


隙間から入り込んだ手は夜の肌を撫でて。

その気持ち悪さに、思わず浮く涙。


ぞくり、男の背筋に何かが走ったのはその時。


「そそるなぁ、アンタのその顔。」


弧を描いたままの口が、ゆっくりと夜の口元に近付いて。


もうその距離が限りなくゼロに近付きかけた、その瞬間。


「てめぇ・・・今すぐその汚ぇ手を夜から離せ。」


地を這う、低すぎる声。

寝静まっている筈の外の木に止まっていた鳥達が奇声を上げて飛び立つ程の殺気が込められたその声に、男の動きが止まった。


「炎鬼・・・てめぇ何してやがる」


あまりにも威圧の込められた声に、炎鬼、と呼ばれた男も思わず汗を浮かべる。


「別に。お前が風呂から出てくるまで、遊んでもらってただけだ」



「・・・殺す。」


一言。

だった一言それだけ言うと、クウヤは近場に置いてあった剣を手に取った。


そして、一歩一歩縮めていく距離。


「うごくな。」


と、不意に混ざった新しい声。


その声は夜の頭側から聞こえ、それと共に感じる、冷たい感触。


それが己の首筋に当てられたら刃物のそれだと気付いた夜は、小さく悲鳴を上げた。


「っ・・・」

「うごけば、こいつをころす」

「・・・クロ、手ぇ出すんじゃねぇよ」

「さわぎが、ばれた。ひとがくるまえににげる」


冷静なクロと呼ばれた男の声に、炎鬼と呼ばれた男は舌打ちをすると夜の上から退く。

そしてクウヤに向き直ると、笑みを浮かべながら窓の方へ行けと顎で指図した。


「ついて来いよ。このガキ、大事ならなぁ。」

「・・・・・・・・・」


睨みをきかせながらも、その言葉に従うクウヤ。

首にナイフを当てられたままの夜はクロに立ち上がらせられ、そして抱えられる。


「っ・・・ぅわ・・・ッ」

「つかまっていろ。」


返事を待たず窓に足を掛けたクロは、そのまま外へと飛び出す。

部屋は三階。

たまらずクロにしがみついた夜を見て、クウヤの顔が殺気を増す。


「夜・・・!!!」

「心配しねぇでも同じトコに連れてってやるよ。おら、ついてこい。」

「・・・ちっ・・・」


言われ、同じように窓から外へ飛び出す二人の男。


外はもう夕闇に覆われていて、四人の姿はすぐにそれに紛れて消えた。



何が起こっているのか。

世界に無知な少女は涙を浮かべる。


何故、少女を巻き込んだのか。

獅子は怒りの業火を胸に燃やした。


何故、こんな少女を気にとめるのか。

鬼は困惑に気付かないふりをした。


何故、この子はこんなにも軽いのか。

死神は思わず少女を覗き込んだ。



それぞれの思いを交錯させて、その中心にいる少女は落とされないように必死にクロの服を握り締めていた。



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