セーラー服と海賊・2
ぴちゃん、と。
湯の張られた湯船に浸かれば、今日一日の疲れがどっと襲ってきて。
「・・・クウヤめ・・・」
少しうとうとしながらも、未だに赤い顔をお湯に半分ほど漬けた。
ぶくぶくと息を吐き出しながら、心臓の高鳴りを抑えようとする夜。
「・・・、」
そりゃ、びっくりするでしょう。
仮にも好意を寄せてくれてる人と、同じ部屋で寝泊まりなんて。
誰かと付き合った経験なんてない。
好きって思った人も居たにしても、それが本当の気持ちなのかなんて分からない。
「うぅぅ・・・」
普通にしてればいいんだ。
そうだ、きっとそうなんだ。
これ以上考えているとのぼせそうな気がして、夜はざばんと浴槽から立ち上がった。
脱衣場に出れば、いつの間にやら寝間着代わりの服が用意してくれてあって。
クウヤ以外それをしてくれる人はいないだろうし、そんな事を考えれば自然と浮かぶ笑み。
「優しい、ん、だよね。」
今日一緒に居て気付いた。
怖いとこしか見ていなかっただけで、本質は優しいんだ。
ふとどうしてもお礼が言いたくなり、服を着て髪の毛をガシガシと適当に拭きながら足早に向かう寝室。
「クウヤ・・・?」
その部屋のソファに膨らみを見つけ、名を呼びながら近づいても反応はなく。
「寝ちゃってる?」
顔を覗き込めば、そこには寝息を立てるクウヤが居て。
その整った顔に思わず硬直したその時、拭い切れていなかった髪の毛の水滴がクウヤの頬に落ちた。
「ん、・・・?」
「わゎっ・・・ごめん!」
しまった、と慌てて起き上がろうとする夜。
だが、それは反対に引き寄せられる力に負けて再び近付く距離。
「石けんの、匂い」
「っ、っ・・・!!??」
寝ぼけているのか、舌足らずな声。
けれどもその力は成人の男のそれで、なす統べなく抱き締められる形になった夜の首元に埋められるクウヤの顔。
「よる、」
名を呼ぶ声が、
「よる、」
まるで子供のようで、
「よる、」
泣きそうな、
「・・・よる。」
子供のようで。
痛いくらいに跳ね上がる心臓。
抵抗も何もかも、強い力で抑えられては全てが無意味。
「ク、クウ、ヤ・・・っ」
必死に上げた声。
その、直後。
「夜・・・?」
はっきりとした声は覚醒の証拠。
面白いくらいに硬直したクウヤの体は、その瞬間有り得ないほど早く夜から離れて。
「っ、な、っ・・・ッ!!?」
真っ赤な夜の顔に、反対に真っ青になるクウヤの顔。
「、わ、わりぃ・・・っ」
逃げるように早足で向かう風呂場。
残された夜は腰を抜かしてソファの横に座り込み、熱くなった顔を両手で包み込んでいた。




