セーラー服と異世界・10
「ツィーリさんは、クウヤの友達なの?」
ツィーリの店をあとにして、しばらく歩いた頃に夜は不意に思いついた言葉を口にした。
それにクウヤは心底嫌そうな顔をしてから眉間にシワを寄せて、夜の問い掛けに答える。
「冗談でもやめてくれ。あんなババァとダチになんざなれっかよ。」
「えー、ツィーリさん美人だしめちゃくちゃ良い人なのに勿体無い!」
「・・・無理。そもそも、俺にダチなんざ居ねぇっての。」
友達とは、きっと一緒に居る人の事を言うのだろう。
くだらない話でバカ騒ぎして、落ち込むような日には話をしたり聞いたり。
気付けば隣に居て、居る時間が長くてもまるで気にはならない。
「そんな奴、此処でもあっちでも居た事なんざねぇ。」
夜はその言葉の後、言葉を一旦止めた。
“言葉を選んで”話さなきゃいけない事なんだと、何となく気付いたからだ。
人は一人じゃ生きてけないよ。
その言葉は、16年を孤独に耐えた人に言っていいものじゃないだろう。
そんな事ないよ。
その言葉を言う程に彼の事を知っているわけじゃない。
辛くないの?
その言葉は、きっとただの憐れみにしか聞こえないだろう。
言葉を考えて考えて、ちゃんと考えて言わなければいけないことなんだと、夜の勘が告げていて。
だからしばらく考えたあと、夜はクウヤの前に回り込むとその金の双眸を真っ直ぐ見上げた。
「ごめん、何て言えばいいのか分かんない。」
「は・・・?」
「分かんないけどさ、」
そして差し出す手。
それが握手を求める物だとクウヤが気づく前に、夜は強引にクウヤの手を取った。
「クウヤ、私と友達になって。」
何からも守ってくれる、と。
そう言ってくれた事に、きっと偽りはないだろうと信じる。
だからその代わりに、
「クウヤがピンチの時には、私が助けるから。」
絶対、に。
「それを人は、友達って言うでしょ?」
じゃあクウヤと私は友達だね。
憐れみ、慰め、そんなものが含まれた言葉ではなかった。
あまりにストレート過ぎるその言葉にクウヤは一瞬で顔を真っ赤にして、それからそれを隠すように夜を追い越して歩き出した。
「ば、バッカじゃねぇの・・・ッ、っ!!」
クスクス笑う夜。
耳まで赤くなるクウヤ。
けれど離されない手に、夜の笑みはますます深くなるばかり。
「ふ、は・・・っ、クウヤ、可愛い」
「っ・・・夜、てめぇ・・・!!」
あまりに夜が笑うから、クウヤは思わず勢いよく振り返る。
その時。
「・・・っ」
目に映った、心底嬉しそうな笑顔。
目を、心を奪われるというのは、こういう事なんだろう。
「友達、より、」
恋人、に、
なんて、今の状態じゃ格好悪すぎて言えない言葉を飲み込んだクウヤは、せめての抵抗にと夜の頬を軽く抓ってやった。




