セーラー服と異世界・9
ツィーリからモルガナを受け取った夜。
そんな夜に、ツィーリは腰にそれを携える為のベルトも見繕って渡した。
「ツィーリさんのお店は、宝箱みたいですね。なんでも出てきちゃう。」
「表向きは服屋なんだがね、どーにも気に入ったモンを集めちまう性分なんだ。」
それもたまには役に立ってんだろ?そう言って笑うツィーリに、夜もまた笑顔で応えた。
そんなこんなで約二時間程そこに居たのだろうか。
勘定を済ませ、店を出ようと支度をする夜とクウヤに向けて、ツィーリはある疑問を投げかけた。
「そーいや、これからどこに向かうんだ?」
「とりあえず、もう一回“祠”へ行く。何か掴めんだろ。」
夜を元の世界へ戻す鍵、それを探しに行く。
そう言うクウヤに、ツィーリの表情が僅かに固くなった。
「・・・無駄だと、思うぜ。」
「は?」
「てめぇがアソコに向かった次の日に、国王の軍勢が徒党組んで同じトコに向かいやがった。目的は、てめーと一緒だ。」
だがその軍勢は、ものの数時間で帰ってきやがった。
「理由?“先見の神子様”(せんけんのみこさま)が視たんだと。祠がきれいさっぱりなくなっちまってんのを。」
「・・・何、だと?」
「行ったところで無駄足だぜ?何せ国王様が絶大な信頼を寄せてる神子様の先見だからな。ガセってことはねぇだろ。」
確かにあそこにはあったんだ。異様な力を感じる祠が。
けれどそれがなくなったと言う。
理由は分からないが、消えたのだと。
「当てもなし、か。」
どうしたものか、いくらクウヤが思考を巡らせても出ない答えに苛立ちさえ覚えた、その時だ。
「とりあえず、今のところ時間制限はなさそうだし、」
色々探し回るしかないよねー。
困った困ったなんて呑気な笑い声。
確かに困った風ではあるのだが、そこまで気にする素振りも見せない夜にクウヤもツィーリも目を点にする。
「お前、焦らねぇのかよ?」
「え?いや、焦って何とかなるなら焦るけど、帰れないって決まった訳でもないし・・・」
「ヨル、そんな呑気な・・・」
「だってツィーリさん、とっくに私の頭はキャパオーバーですもん。今さらどーしよーとか言ってもしょーがないっすよ。」
あはー、なんて笑われれば反論する気さえ殺がれて。
クウヤとツィーリは互いを見合わせて苦笑。
「なかなか大物じゃねぇか。てめぇの手に負えんのか?」
「うっせぇ、ババァ。負うに決まってんだろーが。」
「そりゃ上等。しっかり守れよ、クソガキ。」
ツィーリの言葉に鼻で笑って返すクウヤ。 そこに確かな覚悟を見て、ツィーリはもうなにも言わなかった。
「気をつけろよ、ヨル。特に隣のケダモノには、な。」
「はい!ツィーリさん、ありがとうございました!!また来ますね!」
「あぁ、いつでも来いよ。」
ぶんぶん手を振り遠ざかる夜とクウヤの姿。
それを見送ったツィーリは、小さく溜め息をもらした。
「・・・てめぇ、盗み見たぁいい趣味してんじゃねぇか。」
「・・・・・・・・・・・・」
「相変わらず無口な野郎だな。・・・あの子達に手ぇ出したらただじゃおかねぇ・・・って、てめぇのとこの大将に言っとけ」
「・・・きにいった、のか。」
「てめぇには関係ねぇ。」
不意に現れツィーリの背後に立った黒ずくめの男は、それだけ会話を交わすと再び姿を消して。
ツィーリは手に隠し持っていたナイフを力任せに柱に突き立てた。
「厄介なのに、目ぇつけられやがって・・・!」
その言葉もその真意も、今はまだ夜にもクウヤにも届くはずもなく、
見送った二人の去っていった方角を、ツィーリは険しい目で睨みつけた。




