Accelerando
*
「ただいま~」
流加が家に帰ると庭では
「―――っ、てやぁ!!」
兄の犀斗が剣術の鍛錬を行っていた。
「兄さん…相変わらずすごいね…」
「おう、お帰り流加。学校どうだった?」
「相も変わらず大変だよ。今日も20人くらい連行してきた」
「ははっ、全然変わってないな」
「兄さん、卒業したの去年でしょうが…」
朗らかに微笑む兄を半眼寸前で見ながら流加がぼやく。
「じゃあ晩御飯これから作るから」
「いつも済まないな。」
「そう言うんならちょっとは料理も練習してよ…」
「はっはっは」
朗らかを通り越して阿呆の境地に到達しかねない笑い声をあげる兄、それを溜息交じりで見やりながら流加は自分の部屋に荷物を置きに行った。
*
「じゃあ僕寝るから」
寝間着に着替えた流加は横になりながらテレビを眺めている犀斗に声をかけて自室に戻った。
「さっさと寝よ。明日はケーキ奢んなきゃな…」
と呟く流加は次の瞬間
―――ばさっ
布団に倒れこみ意識を失った。
*
「流加は?」
犀斗が後ろに控えた男に問う。
「はっ、寝所で意識を失われました」
「やはりか…」
そう呟いて、目の前に置かれた神棚の上に浮かぶ青白い石を見つめる。
「楯たる鉾、数多の時を超え、幾多の戦いを繰り広げた我が家にこんな子が生まれるとはな…」