08:初投稿
「それじゃ早速、『カワラブ同盟』のタグを付けて投稿しよう! 記念すべき初投稿だ! ってわけで、可愛いもの代表として、いまのれもんの写真撮っていい? その服、すっごく可愛いし! 全世界にアピールしなきゃ損だよ!」
「全世界って、大げさ。『バーチャル・ドール』の中だけだよ?」
おかしそうに笑う声が、スマホ越しに聞こえた。
「写真撮るのはいいけど、どうせなら一緒に撮ろうよ」
「え、私も? でも、この服、公式ショップで買ったやつだし。れもんみたいなオリジナルの服じゃないから、映えないよ。れもんだけで撮ったほうが絶対バズるよ」
「映えるとか、バズるとか、そんなの気にしなくていいよ。おれもサクラと一緒に撮った写真、自分のSNSにアップしたいし。記念すべき初投稿だっていうならなおさら、二人で一緒に撮りたい」
「!」
ドキッとした。
一緒に撮りたい、そう言ってもらえたのが嬉しくて。
なんだかちょっと、照れてしまう。
「じゃあ、ちょっと待って。持ってる中で一番可愛い服にする。あと、ルームの背景デザインも変えたい」
私はサクラにお姫様みたいなドレスを着せた。
髪は緩く一つにまとめて、頭にはティアラをつけて。
首と耳はキラキラ輝く宝石で飾って、はい完成!
サクラを着替えさせた私は、続いてルームの設定画面に移動した。
うーん、どうしようかな。
サクラとれもんがドレスを着てるから、プリンセスが住むお城のような部屋にしようっと!
ゴージャスな天蓋付きのベッドに、金色の模様が入った赤い絨毯。
花の模様の壁紙に、天井には大きなシャンデリア!
うん、超~いい感じっ!!
「できた! 準備オッケー! それじゃ、どんなポーズで写真撮ろうか? 思い切って、変顔とかしちゃう?」
「いきなり変顔はちょっと……。最初はシンプルに、笑顔でいいんじゃない? 横に並んで、左右対称でピースするとか、どう?」
「いいね! じゃあ、私が右手でピースするから、れもんは左手でピースして!」
私はサクラを移動させて、れもんの隣に立たせた。
「わかった」
「じゃあ行くよー! 3・2・1!」
カウントに合わせて、私たちは同時に『笑顔』の表情ボタンを押した。
サクラは右手で。
右腕にウサギのぬいぐるみを抱いたれもんは、左手でピースする。
それから雪村くんはエフェクトボタンを押したらしく、ぬいぐるみの耳がピョコンっと可愛く跳ねた。
――雪村くんがこんな遊び心を出してくれるなんて!
私は笑いながら、光のエフェクトボタンを押した。
並んで立ったサクラたちの周りに、キラキラ輝く虹色の星が降り注ぐ。
よし、いまだっ!
私は撮影ボタンを押して、スマホにスクリーンショットを保存した。
「撮れた!」
「おれも。いい感じだね。普段はこういうノリ恥ずかしいけど、なんか楽しい」
雪村くんの声が聞こえて、私はますます嬉しくなった。
「じゃあ、アップしよう!」
私は自分のSNSを開こうとして、手を止めた。
――雪村くんがどんなことを書くのか、見たい!
やっぱり、雪村くんの投稿を見てから投稿することにしようっと!
SNSの画面を閉じて待っていると、五分くらいして、雪村くんが言った。
「投稿したよ」
「見たい!!」
私は雪村くんのSNSを開いた。
キラキラ降り注ぐ星の中で、サクラとれもんが笑顔でピースしてる。
最高の写真と一緒に、こんなメッセージが添えられていた。
『友達のサクラちゃんと「カワイイものを愛する同盟」、略してカワラブ同盟を始めました!
これから二人でカワイイものをアップしていくよ~♪
←サクラ
れもん→
よろしくね~!
#サクラとれもん
#カワイイものを愛する同盟
#カワラブ同盟』
雪村くんの投稿を見て、私は思わず「へ~」って呟いちゃった。
私は『可愛いもの』って、普通に漢字で考えてたんだけど。
雪村くんは『可愛い』じゃなく、『カワイイ』ってカタカナで考えたんだ。
考え方の違いがわかって、面白いな。
カタカナで書くと、特別って感じがする!
それに、さりげなく『サクラとれもん』ってタグをつけてくれたのも嬉しい!
「どうかな?」
「うんうん、可愛い! ばっちりだよっ!!」
私は大はしゃぎした。
一番嬉しかったのは、可愛いアバターたちの写真じゃなくて。
雪村くんが打ってくれた『友達』っていう文字だったのは、内緒!
――あれっ?
私は雪村くんが投稿したメッセージの右下で、星がキラキラ輝いているのを見つけた。
「えっ。すごい! 投稿して一分も経ってないのに、星ギフもらえてる!!」
星ギフっていうのは、ユーザーが『素敵!』って思った投稿に対する無料の応援ギフト。
ギフトが多く貰えると、その日の『星ギフランキング』に乗れるんだ。
私のSNSはフォロワーが8人しかいないけど。
去年ファッションテストで準優勝したれもんはフォロワーが100人以上いるから、多くの人の目に留まりやすいんだろうな。
「あっ、また! すごい! あっという間に星が3つになった! 今度は『可愛い』ってコメントまで来てる!!」
雪村くんのSNSに『可愛い』ってコメントしたのは、パステルカラーのパジャマを着た女の子アバターだった。
「うん、すごいね」
雪村くんのテンションも上がってる気がする。
だって、声がいつもより明るいもん。
「さすがれもん! 新作コーデは注目度バツグンだね!」
「いや、サクラとれもんの写真なんだから、おれと花崎さんの力だろ?」
「……うんっ!! 雪村くんが一緒にやってくれるから、私もすごく楽しい!! これからもっともっと、一緒に可愛い写真アップしていこうね!!」
なんだか胸が熱くなって、私はスマホを握り締めて笑った。
「……うん。こっちこそ、よろしく」
少し間をおいて、雪村くんは照れたようにそう言った。




