07:カワラブ同盟
「でも、なんで誰とも話せなかったの? まほキューって、超有名な国民的アニメだし。見てる子、周りにもいるでしょ? 同じファン探したりしなかったの?」
「しないよ。ファンだってバレたら、馬鹿にされるだけだし」
雪村くんは小さな声で言った。
「なんで馬鹿にされるの?」
「いや。だって。中学生にもなって、それも、男子が魔法少女のファンって……普通、変だって思われるだろ」
「そんなことないよ。好きなものは好き、それでいいじゃない。何が悪いの?」
どうして雪村くんは『普通』とか『変』って言葉を使うんだろう。
なんだか悲しくなって、私はスマホの画面の中のれもんを見た。
私たちが知り合ったのは、一年前。
ファッションコンテストの後、私が思い切って、れもんに「その服、可愛いですね!」って声をかけたのがきっかけだ。
れもんは可愛いものが好きだと教えてくれた。
たとえば、フリルがいっぱいついたドレス。
ふわふわのぬいぐるみ。
キラキラのアクセサリー。
そういうものを見ると、テンション上がるんだって。
私も可愛いものが好きだから、わかるわかるって頷いた。
それから、私たちは色んな話をするようになった。
れもんは自分が着てる服の作り方とか、似合うコーデとか、色々教えてくれた。
れもんが私と同い年で、中学受験のために勉強してるっていうのは、フレンドになってから聞いた。
そのときの私たちはただのネット友達で、お互いの本名も顔も知らなかった。
それでも、同い年だってわかってからは、ぐんと仲良くなったんだよね。
「悪くなくても、中には馬鹿にしてくる奴がいるんだよ。前の学校で、魔法少女のアニメ見てるなんてダサいってからかわれたんだ。天馬は助けてくれたけど……あの時のことは、忘れられない。すごく嫌だったから」
雪村くんの声は、辛そうだった。
「そっか……なんで、馬鹿にしたりしてくるんだろうね……」
私にも心当たりがあるから、胸の奥が痛くなった。
芽衣ちゃんは馬鹿にしたりしないでいてくれたけど。
中には「え~、あんな子ども向けのアニメ見てるの~? ダッサ~」とか意地悪なことを言う子もいて、魔法少女ファンだってことは言わないようになった。
女子でこれなら、男子ならもっと、酷いこと言われたりするんだろうな……。
「魔法少女アニメを見てることや、可愛いものが好きだってことは内緒にしてるから。おれがれもんだってことも、言わないでくれる? からかわれたくないんだ」
「うん。約束するよ」
「ありがとう」
雪村くんはホッとしたような声で言った。
「…………」
でも、雪村くんはこのままずっと、好きなものを隠し続けていくの?
そんなの、なんか悔しい。
好きなものは好きって、自由に言える場所があったほうがいいんじゃないかな?
自分の気持ちを吐き出せないのって、辛いと思うし。
私は考えた。
頭が痛くなるくらい、いっぱい考えて、考えて。
「あっ」
一つ、思いついた。
「あの、じゃあさ! 私と『可愛いものを愛する同盟』作らない? うーん、これじゃ長いかな。可愛いものを愛する……よし、略してカワラブ同盟にしよう!」
「……カワラブ同盟? 何それ?」
雪村くんは不思議そう。
「私たちは可愛いものが大好きです! ってアピールする同盟。可愛いな~って思うものを見つけたら、『バーチャル・ドール』のSNSに写真をアップして、一緒に盛り上がろうよ! ネタがなかったら、その日のアバターの写真をアップするだけでいいし! とにかく楽しくをモットーに、ゆる~く活動するの! どう?」
私はドキドキしながら、返事を待った。
雪村くんは何か考えてるみたいで、何も言わない。
……いきなり何言ってんだこいつ、とか思われてたらどうしよう。
そんな不安がこみ上げて来て、私は慌てて言った。
「無理にとは言わないよ。嫌だったら……」
「いや。面白そうだし、やりたい」
良かった、受け入れてくれた!!




