33:価値があるのはどっち?
「なに。どうしたの、日和?」
一人でアワアワしている私を見て、芽衣ちゃんは不思議そう。
驚きすぎてなにも言えないから、私はスマホの画面を芽衣ちゃんに見せた。
「えっマジで!? 当たったんだ!! すごい!! 雪村くーん、ちょっとちょっと!! こっち来て!!」
芽衣ちゃんは椅子を蹴飛ばす勢いで立ち上がり、教室の中央付近にある雪村くんの席に走った。
6月のはじめに席替えがあって、雪村くんは教室のほぼ中央、私は廊下側に移動したんだ。
私の右隣は壁で、左隣は鈴本くん。
そして、私の後ろの席には美弦ちゃんが座ってる。
「なになに? アクキー当たったの?」
後ろで話を聞いていたらしく、美弦ちゃんと聖華ちゃんが近づいてきた。
「うん! 当たったの!!」
私は立ち上がって、二人にスマホを見せた。
「おおー!! おめでとう!!」
「おめでとうございます!」
二人が拍手している間に、芽衣ちゃんに連れられて、雪村くんと久城くんが歩いてきた。
「雪村くん! アクキー当たったよ! ほら!!」
私は雪村くんにスマホを見せてから、久城くんにもスマホを見せた。
「やったじゃん!! おめでとう!!」
「やったねひよりん!! 雪村くん!!」
久城くんは笑顔で手を叩き、美弦ちゃんは私と雪村くんの肩を叩いた。
「……当たった……?」
雪村くんはまだ現実が信じられないみたいで、呆然と私のスマホを見てる。
「そうだよ、当たったんだよ! あの、ちょ~可愛いアクキーは雪村くんのものだよ!!」
夢じゃないとわかってほしくて、私は雪村くんの腕をポンポンと叩いた。
「……うん」
雪村くんは嬉しそうに笑ったけれど、すぐに不安そうな顔になった。
「でも、本当に、おれがもらっていいの? 花崎さんもほしいんじゃ……」
「あー、あのさー。そのことなんだけど」
話に割り込んできたのは、美弦ちゃんだった。
美弦ちゃんは自分の机に置いていたスマホを持ち上げて、私たちに見えるように高く上げた。
スマホの画面には、私が受け取ったものと全く同じ内容のダイレクトメールが表示されている。
「えっ?」
私と雪村くんの目は、点になった。
「どういうこと?」
「北園さんも、キャンペーンに参加してたの?」
「いやあ、二人があんなに頑張ってたのに、当たらなかったらかわいそうだなーと思ってさ。キャンペーンの締め切りギリギリに、サブアカ作って投稿してみたんだよね。そしたら、当選しちゃった」
美弦ちゃんはスマホを片手に持ったまま、笑顔でピースした。
「ちょ……ちょっと待って? 美弦ちゃん、ダンスの練習とかしたの……?」
あまりのことに、声が震える。
「ううん。参考動画を見て、そのまま一発撮りでーす」
「私たちは一か月も練習したのにーーっ!!」
私は叫んで頭を抱えた。
「うう。これなら最初から、美弦ちゃんに頼めば良かったかも……」
「いやいや。それだったら、私は『嫌』って断ってたと思うよ。ひよりんは、他人からもらったアクキーと、自分で頑張って手に入れたアクキー、どっちに価値があると思う?」
美弦ちゃんに聞かれて、私は手を下ろした。
そんなの、考えるまでもない。
「……自分で頑張って手に入れたほう」
「でしょ? 手に入れるために頑張ったからこそ、そのアクキーは宝物になるんだよ。二人が本気で努力してたから、私もアクキーをプレゼントしてあげたいなって思ったんだよ。自分でなんの努力もせずに、ただアクキーほしいから踊ってって頼まれても、私は断ってた」
「……そっか。変なこと言ってごめん」
私は、自分で自分の努力を否定するようなことを言ってしまった。
最初から美弦ちゃんに頼めば良かったなんて、そんなことあるわけない。
こんなの、一緒に頑張ってくれた雪村くんにも、ダンスの先生役をしてくれた美弦ちゃんにも、失礼だよね。
「うん。わかってくれたんならいいよ」
美弦ちゃんは、にこっと笑った。
「んじゃ、私が当てたアクキーはひよりんにあげる! 頑張ったひよりんへのご褒美ってことで!」
「えっ。いいの!?」
美弦ちゃんの頭の上に、天使の輪っかが見える気がする。
「いいよ。ていうか、そもそも、当たったら二人のどっちかにあげるつもりだったし」
「ありがとう……!!」
私は、ひしっと美弦ちゃんに抱きついた。
「わかった。わかったから離れて」
美弦ちゃんは照れたような、困ったような顔で私の腕を振りほどいた。
「良かったねえ、日和」
「うんっ!!」
芽衣ちゃんの言葉に笑顔でうなずく。
実は、私もアクキーほしかったんだよね!
私だって、まほアクの大ファンだもん!!
「理玖も良かったな。これで『自分だけアクキーもらっちゃって、悪いなあ』なんて思わなくて済むじゃん。それに、花崎さんとお揃いだ」
「うん。嬉しい」
笑ってる雪村くんを見て、私もますます嬉しくなった。
本当に、美弦ちゃんには感謝しかない。




