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そのままのキミが好き!  作者: 星名柚花


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3/7

03:大ピンチ!

 1年1組の教室に行くと、さっき見た男の子が廊下側の席に座っていた。

 誰とも話すことなくうつむいて、スマホをいじっている。


 あの子も私のクラスメイトになるんだ。

 名前、何ていうんだろう?


 私は芽衣ちゃんと一緒に黒板に近づいた。

 そこに貼ってあった座席表で自分の席を確認してから、彼の名前をチェックする。

 廊下側の、前から三番目の席は……『雪村理玖ゆきむらりく』。

 そうか、あの子は雪村くんっていうんだ。


「理玖、おはよー!」

 元気の良い挨拶が聞こえて、私は反射的に振り向いた。

 雪村くんに声をかけたのは、雪村くんに負けないくらいに格好良い男の子だった。

 きちんと制服を着てる雪村くんとは対照的に、派手に制服を着崩してて、髪はつんつん跳ねてる。


天馬てんま。おはよう」

 雪村くんはスマホを机に置いて、ちょっとだけ笑った。


「同じクラスになれて良かったなー」

「うん。安心した」

 二人は友達みたいだ。

 私と芽衣ちゃんみたいに、小学校が同じだったのかも?

 クラス分けの張り紙の前で笑ってたのは、天馬くんと同じクラスになれたのを喜んでたのかな。


 雪村くんに注目するのはそこまでにして、私は教室を見回した。

 教室の中では、もういくつか仲良しグループができているようだった。

 私には芽衣ちゃんがいるから、どこかのグループに入らなきゃ! って焦らなくても良い。


 私は芽衣ちゃんと別れて、自分の席に座った。

 私の席は教室の廊下側から三番目の列、一番後ろだ。

 カバンの中身を机の中に移して、空になったカバンを机の横のフックに引っ掛ける。

 スマホを見ると、れもんからメッセージが届いていた。


『入学式、今日だったよね。緊張すると思うけど、頑張ってね! あんなに練習したんだもん、絶対だいじょうぶだよ! 自信もって! ふぁいと~!』


『ありがとう。頑張るね!』

 そう返信して、私はふふっと笑った。

 れもんが励ましてくれたことが、すごく嬉しかった。


 


 1年1組の担任は玉木たまきという男の先生だった。

 玉木先生の話を聞いた後、私たちは講堂へ移動して、入学式が始まった。


 理事長先生が話をしたり、祝電が読み上げられたり。

 色々あったけれど、頭の中に入ってこない。


 バクバク。バクバク。

 心臓の音がうるさい。

 胃はますます痛くなるし、変な汗が出てくるし、もう倒れそう。


「新入生代表挨拶、花崎日和!」

「!!」

 ――ついに、私の出番だ!!


「はいっ」

 私は息を吸って、大きな声で返事をした。

 階段を上り、壇上のマイクの前に立つ。

 新入生や在校生が、先生が、保護者たちが――たくさんの人が、私を見ている。


 しん、と静まり返った講堂で。

 私に向けられる、たくさんの、目、目、目――。


 だ、だいじょうぶ。

 落ち着け。

 入学式のリハーサルだってやったし!

 これまで何回も、何十回も、練習してきたんだから!


 私はマイクの位置を調整してから、スイッチをオンにした。

 さあ、後は声を張って、頭の中の文章を読み上げるだけ!


「――――」

 あれ? 

 おかしい。


 あれだけ繰り返した文章が、一生懸命考えた文章が、一文字も出てこない。


 落ち着け、落ち着くんだ、私。

 カンペがあるから!

 だいじょうぶ!!


 私は震える手をスカートのポケットに入れて、カンペを取り出そうとした。

 でも、いくら探っても、ハンカチしかない。


 なんで?

 カンペがない!!

 どこに行ったの!!?


 パニックになりながら思い出す。

 入学式が始まる前、私はトイレに行った。

 そのときにポケットからハンカチを取り出して、手を拭いて……あ!!


 もしかしてハンカチを取り出したとき、カンペがポケットから落ちちゃったのかも!?


 最悪だ!!

 どうしよう……!!

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