29:私たち、バズりました
次の日の昼休み。
私は自分の席でスマホをいじっていた。
私の周りには雪村くんたちが立っている。
「ついに投稿かあ。なんか、ドキドキするね」
横から私のスマホ画面をのぞき込んで言ったのは、美弦ちゃん。
美弦ちゃんは今朝、私たちのダンス動画を送ってくれた。
きっと昨日の夜は、頑張って動画編集してくれたんだろうな。
美弦ちゃんには最後までお世話になりっぱなしだ。
今度、なにかちゃんとお礼をしようって、雪村くんと相談中なんだ。
「あんなに頑張ったんだから、バズるといいな」
「うん。バズったら、当たる確率も上がるかもしれない」
久城くんの言葉に、雪村くんは真剣な顔でうなずいた。
「昨日は踊ったあと、花崎さんと神社に行って、当たるようにお祈りした」
「そこまでやる!?」
「どんだけほしいの!?」
久城くんと一緒に、芽衣ちゃんがツッコんだ。
「できることはしておきたかったんだもん。後悔しないように」
やりとりを聞いていた私は、スマホに文字を打ち込みながら言った。
「ふふ。本当に、当たるといいですね。私もお祈りしておきます」
聖華ちゃんは口元に手をやって、穏やかに笑った。
「ありがとう、聖華ちゃん」
お礼を言いながら、私は文字を打ち込み続けた。
『友達と踊ってみた!
アクキーが当たりますように~!!(*>人<)
#踊ってみた
#マジカル☆レボリューション
#まほアクコスプレ
#マジ☆レボで踊ろうキャンペーン』
キャンペーン応募用のタグもしっかりつけてから、私はダンス動画を貼りつけた。
動画の中で踊る私たちの目には、個人が特定されないように、カラフルなサングラスがかかっている。
このサングラスは、美弦ちゃんが動画編集で付け足してくれた。
派手なコスプレ衣装に、派手なサングラスがばっちりハマってる。
美弦ちゃんって、ほんとにセンスがいい。
「できた。いくよ」
私はみんなの顔をぐるっと見回した。
「うん」
「いっけー!」
「バズれー!」
「アクキー当たれー!!」
――えいっ!
みんなの声に背中を押されて、私は投稿ボタンを押した。
みんな、ワクワクした顔で私のスマホを見てる。
でも、三十秒経っても、一分経っても、私のスマホは静かなまま。
「……。リツイートされないね」
美弦ちゃんはガッカリしてる。
「そもそも日和のフォロワーって、あたしを含めて4人しかいないもん。日和は普段、全くツブヤイターに投稿してないし。前回の投稿なんて、一か月も前だよ? しかも、『今日は満月だ』なんて、どーでもいい内容! これじゃ、反応なくて当たり前だよ」
芽衣ちゃんは自分のツブヤイターのアカウントを開いて、私の投稿をリツイートしてくれた。
私のスマホの画面に『投稿がリツイートされました』という通知が出る。
「ありがと、芽衣ちゃん。なんか、ごめんね。ツブヤイターじゃなくて『バーチャル・ドール』のSNSなら毎日使ってるんだけどな。フォロワーだって、50人はいるし……」
『カワラブ同盟』を作ってから、私も雪村くんも、どんどんフォロワーが増えていってるんだよね。
ツブヤイターじゃなくて、『バーチャル・ドール』のSNSで投稿してたら、バズってたかも?
「オレも花崎さんのアカウントフォローするわ。リツイートしとく」
久城くんはポケットからスマホを取り出して、いじりはじめた。
「理玖もリツイートしろよ。お前と花崎さんの動画なんだからさ」
「うん。でも、おれのフォロワーって天馬しかいないんだけど」
「リツイートの意味ねー!! もっと友達作れよ!!」
「……『バーチャル・ドール』なら200人以上いるし……」
ムッとしたのか、雪村くんは小声で呟いた。
「え? なんて?」
「なんでもない」
「私もリツイートしよっと」
「私も、日和さんのアカウントフォローさせてもらいますね」
『アカウントがフォローされました』、『投稿がリツイートされました』。
そんな通知が連続でやってきた。
「ありがとう、みんな」
応援してくれることが嬉しくて、私は微笑んだ。
五時間目と六時間目の間の、短い休み時間。
次の授業の準備をしていると、美弦ちゃんが叫びながら走ってきた。
「ひよりん!! ツブヤイター見た!?」
美弦ちゃんは私の机に両手をついて、身を乗り出した。
美弦ちゃんに呼ばれたらしく、少し遅れて雪村くんもやってきた。
「え? ううん――」
「見て!! 早く!!」
「わ、わかった」
私は勢いに押されて、カバンに入れっぱなしだったスマホを取り出した。
画面をつけると、ツブヤイターの通知がたくさん来ていた。
昼休みのときには残り80%はあったはずのバッテリー表示が、赤くなってる!
「えっ!?」
ツブヤイターを開いた私は、目を丸くした。
ダンス動画が、800リツイート!?
1000いいね!?
コメントもたくさん来てる!!
『可愛い!』
『ダンス上手! キレッキレ!』
『マジ☆レボのダンス動画で一番うまい。冗談抜きで』
『最後の笑顔がいい!』
『↑笑顔って、目隠ししてるじゃん』
『↑目隠ししてても、笑ってるのはわかるだろ』
『コスプレ衣装、どこで買ったの? 手作りだったらすごい! 神!』
……まだまだ続いてて、すぐに全部は読み切れない!
「……なにこれっ!?」
びっくりして、美弦ちゃんを見上げる。
「ひよりんたちの努力が世界に認められたってことだよ! おめでとう!!」
美弦ちゃんは笑顔で両手を上げて、私と雪村くんに手のひらを向けた。
私と雪村くんは顔を見合わせて、ほとんど同時に笑った。
それから、三人でハイタッチ!
――パチンっ!
気持ち良い音と感触が、手のひらで弾ける。
「やったね、雪村くん!」
私は心の底から笑った。
「うん」
雪村くんも、とびっきりの笑顔を見せてくれた。




