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そのままのキミが好き!  作者: 星名柚花


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27/30

27:変身魔法をかけられて

 木曜日の放課後。

 更衣室で着替えた私は、鏡に映る自分の姿に見とれていた。


 オレンジ色のリボンを結んでツーサイドアップにした、長いアクアブルーのウィッグ。

 何枚もフリルを重ねたアクアブルーのスカート。

 上着の胸元にはリボンがついていて、リボンの真ん中でハートの宝石が輝いてる。

 服の袖はふんわり膨らんでて、袖口にはアクアブルーのリボンが結ばれていた。


 雪村くんが作ってくれたなんて信じられないくらい、完成度が高い。


 衣装代にかかったお金を見たときは、お母さんもお父さんも「こんなにかかったの!?」って驚いてた。

 でも、実際に完成した衣装を見たら「このクオリティなら仕方ないな」って納得した。

 だって、お店で売ってるコスプレ衣装より、はるかに立派だもんね。


 くるっと一回転すると、長い髪と一緒にフリルのついたスカートがふわっと広がって――すっごく素敵!


「は~、すごいなぁ。大好きなイルカちゃんの衣装を着られるなんて、夢みたい……」

 うっとりしてから、ハッとする。


「って、浮かれてばかりもいられないよね。これからが本番なんだから」

 私は鏡から離れて、更衣室の扉の前に立った。

 緊張のせいか、目の前の扉が、別世界へ続く扉のように感じる。


 ――すう、はあ。

 扉の前で立ち止まり、大きく深呼吸したあとで。


 ――よし、行くぞ!

 私は勇気を出して、目の前の扉を開けた。

 廊下を進んで、ダンスレッスン室の扉を開けると、雪村くんと美弦ちゃんが待っていた。


「お~。ひよりん、イルカコスプレ似合うじゃん! ちょ〜可愛い!」

 設置したビデオカメラの横で、美弦ちゃんが拍手してくれた。


「ありがとう。なんか、照れるね」

 私は頬をかいてから、オルカくんのコスプレをしている雪村くんを見た。


 頭にかぶっているのは、ディープブルーのウィッグ。

 下はディープブルーのハーフパンツ。

 上着の袖は私と同じように膨らんでて、袖口にはディープブルーのリボン。

 胸元のリボンの真ん中では、スペードの形の宝石が輝いてる。


 うわあ、すごい!!

 雪村くんは格好良いから、本当に、オルカくんが現実にあらわれたみたい!!


「雪村くん、格好良い!! よく似合ってる!!」

 私は興奮して駆け寄り、変身した雪村くんの姿をまじまじと見つめた。


「あ、ありがとう……」

 ちょっと目をそらした雪村くんの顔は、ほんのり赤くなってる。


「花崎さんも……その、よく似合ってる。可愛いよ。嘘じゃない」

「えへへ、そう? ありがとう。雪村くんって、本当にすごいねえ。この服、私にピッタリだよ! 手を伸ばしたりしても、きつくないし! 動きやすい!!」

 私は腕を大きく回したり、その場でジャンプしてみせた。


「良かった。動きやすいようにゴムを入れたり、なるべく伸び縮みする生地を選んだんだ。大変だったけど、作るのは楽しかったよ」

 雪村くんは小さく笑った。

 雪村くんの笑顔を見て、私のテンションは最高潮!


「よーしっ! 雪村くんのおかげで、変身魔法もばっちりかかったし! 練習の成果を発揮できるように、お互い頑張ろうね!!」

「うん」

 私が胸の前で拳を作ると、雪村くんも拳を出してくれた。

 こつん、と音を立てて、ふたりの拳が軽く触れ合う。


「なんだか、決戦前の主人公になった気分だね」

 雪村くんが、また笑った。


「そうだよ! 私たち、いまからダンスの主人公になるの!」

 私は大きくうなずいてから、美弦ちゃんが用意してくれているビデオカメラの前に立った。


 雪村くんも並んで私の隣に立つ。

 これで、踊る準備は整った。


 ドクン。ドクン。ドクン――

 心臓が強く脈打ち始める。

 私は胸に手を当てて目を閉じ、自分に言い聞かせた。


 落ち着け、落ち着け、だいじょうぶ。

 あれだけ何度も練習したんだから、本番でもちゃんと踊れるはずだ。


 ふと思い出したのは、入学式のときのこと。

 あのとき、私は挨拶文を忘れて、壇上で泣きそうになってた。


 でも、いまは一人じゃない。

 隣に雪村くんがいるから、きっとだいじょうぶ!!

 私は閉じていた目を開けて、まっすぐに前を見つめた。


「二人とも、準備オーケー?」

 スマホを右手に持って、美弦ちゃんが確認してきた。


「うん!」

「オーケー」

 私の隣で、雪村くんもうなずいた。

 でも、雪村くんの顔は少しだけこわばってる。

 私の心臓も、まだドキドキうるさいままだ。


 私たちの緊張を見抜いたらしく、美弦ちゃんは手を振った。


「失敗してもだいじょうぶだから。タイムリミットの18時になるまでは何回でも踊れるから、緊張しないで。難しいことは考えない! とにかく気軽に、全力で楽しむこと!!」

「はい」

「はい、先生!!」

 私たちの返事が重なった。

 雪村くんの肩から力が抜けて、顔のこわばりが消える。

 私も意識して笑顔を作り、唇の両端を持ち上げた。

 壁一面に貼られたピカピカの鏡に映る自分も、笑ってる。


「よし、良い笑顔! 二人とも、その調子でね! じゃあ、スリーカウントでいくよ! 3・2・1――」

 美弦ちゃんがスマホをいじると、部屋のコーナーにある4つのスピーカーから『マジカル☆レボリューション』が流れ始めた。

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