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そのままのキミが好き!  作者: 星名柚花


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26/29

26:やっと合格もらえたよ

 五月最後の日曜日。

 くもり空の下、私と雪村くんは大勢のダンサーにまじって、駅前の広場で踊っていた。

 スピーカーから流れる曲に合わせてステップを踏み、最後のポーズを決める。


 ――よしっ、今回はちゃんとできた!!


 私は軽く息をはずませながら、美弦ちゃんを見つめた。

 私の隣で、雪村くんも美弦ちゃんの反応を待っている。


「どう……だった?」


 無表情の美弦ちゃんが怖くて、口から出てきた私の声は、ちょっぴり震えている。

 ダンスのことになると、美弦ちゃんはめちゃくちゃ厳しい。

 上げた腕の角度や、ほんのわずかなリズムのズレだって、すぐに見抜かれてしまう。

 この三週間、私はずっと『不合格』をつきつけられてきた。

 でも、今回こそは、合格したい!!


 期待と不安で、心臓がドキドキ騒いでいる。

 ごくりと唾をのんだ、次の瞬間。


「うん、バッチリ! ひよりんも合格! 文句なしの満点!!」

 美弦ちゃんはパッと笑顔になって、親指を立てた。


「えっ、本当に!?」

 驚きのあまり、声がひっくり返った。

『合格』の言葉が信じられなくて、思わず雪村くんを見る。


「おめでとう」

 雪村くんは少しだけ笑って、両手の手のひらを向けてきた。


「うんっ!! やったぁ~!!」

 私は雪村くんとハイタッチしてから、ぴょんぴょん飛び跳ねた。

 子どもみたいって笑われてもいい!

 嬉しくて、嬉しくて、飛び跳ねずにはいられないよっ!!


「いや~ほんと、よく頑張ったねえ。初めてひよりんのダンスを見たときは、正直、ダメそうって思ったんだけど。努力で評価をひっくり返したね」

「うんっ。私、ほんとに……本当に頑張ったよ……」

 涙が出てきて、私は手で目元をぬぐった。


 この三週間、私は美弦ちゃんのアドバイスにしたがって、毎日体幹トレーニングとストレッチをした。

 リズム感をつけるためにリズムトレーニングもしたし、体力作りのためにジョギングもした。

 一人で走るのは危ないからって、ジョギングには家族が付き合ってくれた。


 家族が温かく応援してくれたから、私は一日も休まず走ることができたんだ。

 中間テストがあった日の朝だって、ちゃんと走ったんだよ!


 昨日は体育祭だったんだけど、100メートル走でビリにならずに済んだのは、毎日のジョギングのおかげだと思う。


「お疲れさま、花崎さん」

 泣いている私を見て、雪村くんが優しく言った。

 雪村くんは五日前に合格をもらってる。

 それでも、私が合格するまで、練習に付き合ってくれたんだ。


「うん。本当に良かった。これでやっと、動画撮影できるよ! 長かった~! もう、キャンペーンの締め切りまで間に合わないんじゃないかってヒヤヒヤしたよ! 6月10日までに投稿できなかったら、何のために頑張ってたんだ!? って感じだもんね。せっかく雪村くんが素敵な衣装を作ってくれたのに」

 私は花壇の横に置いてある紙袋を見た。

 あの中には、雪村くんが持ってきてくれたイルカちゃんのコスプレ衣装が入っている。

 本当に手作りなの!? ってビックリするくらい、素敵な衣装!


「あれは絶対、全世界にアピールしなきゃもったいない!! 本当にすごいもん!! 作ってくれてありがとう!!」

 私は雪村くんの手を握って、ブンブン上下に振り回した。


「どういたしまして。喜んでもらえてよかった。作ったかいがあったよ」

 雪村くんは笑った。

 嬉しそうな笑顔を見て、私は改めて決意した。


 雪村くんは頑張って衣装を作ってくれたんだ。

 私だって頑張って、あの衣装に相応しい、完ぺきなダンスをしてみせる!

 合格をもらったからって安心せずに、本番まで毎日練習するぞ!!


「ところでさ。撮影場所って、もう決まってるの?」

 美弦ちゃんが質問してきた。


「ううん。公園とか、河川敷かな?」

「そうだね。なるべく人のいないところがいい」

 私が顔を向けると、雪村くんはそう言った。


「じゃあさ。学校のダンスレッスン室、借りられないか先生に聞いてみようか?」

「えっ、いいの!?」

 私は美弦ちゃんの提案に大喜びして、両手を握った。


「人目を気にしなくていいし、あそこで踊れたら最高じゃん……!」

「うん。天井も高いし、鏡も音響もある。最高の環境だ」

 雪村くんもうなずいている。


「明日、先生に聞いといてあげるね。ついでに、ビデオカメラも貸してあげようか? スマホで撮るより綺麗に撮れるよ。三脚もあるから、持ってきてあげる」

「女神さま……」

「ありがとう。お願いします」

 私は両手を組み、雪村くんは小さく頭を下げた。


「はっはっは。ぞんぶんにおがむがいい」

 美弦ちゃんは腰に両手を当てて、冗談っぽく笑った。

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