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そのままのキミが好き!  作者: 星名柚花


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25/29

25:それでも、変えたくなかった理由

「――はいっ、おしまい。多分、ひよりんがやりたかったのはこんな感じでしょ?」

 最後のポーズまでバッチリ決めたあと、美弦ちゃんは上げていた両手を下ろした。


 たった一回踊っただけで、へとへとになった私と違って、息一つ乱れてない。

 あと10回連続で踊っても平気って感じだ。


「うん。美弦ちゃん、すごいよ。ほんとに……ほんとに上手だった!」

 もはや悔しいという感情すら出てこなくて、私は大きな拍手を送った。

 雪村くんも美弦ちゃんのダンスに圧倒されたらしく、無言で拍手してる。


「どうもどうも。じゃあ、二人に質問。いまのダンス、見ててどう思った? 変身ポーズも決めポーズもあって、盛りだくさんの振りつけだったけど。楽しかった?」

 美弦ちゃんはしゃべりながら、その場に座った。


「いや、本当に上手だとは思ったけど……」

 雪村くんは言いづらそうな顔をして、口ごもった。


「えんりょしなくていいよ。正直な感想をどーぞ」

 美弦ちゃんは右手で拳を作り、マイクのようにして雪村くんに近づけた。


「……じゃあ、正直に言わせてもらうけど。楽しくはなかった。一つ一つの動きが早すぎて、見てて疲れた」

「私もそう思った。せっかくの変身ポーズも、すぐ次の動きに入っちゃうから、流されちゃって、印象に残らない」

「そのとーり! この振りつけはズバリ、つめ込みすぎ! こんなに激しく動いたら、踊る私も疲れるわ!!」

 美弦ちゃんは大きくうなずいてから、ツッコミを入れるように、バシッと地面を叩いた。


「まあね? やりたいことをやりたい二人の気持ちはわかるんだよ? この振りつけいいよねー、あーこれもいいわーって感じで、かたっぱしから採用しまくったんでしょ? でもね、つめ込みすぎたら、踊るほうも見てるほうも疲れるの」

 美弦ちゃんはうつむいて、自分のスマホをいじった。

 美弦ちゃんが見ているのは、まほアクの公式チャンネルで公開されている、子ども向けの簡単なダンス動画だ。


「そんなに激しく腕や足を振り回さなくてもいいの。ただ曲に合わせて腕を振るだけでも、魅力的に見せることはできるんだよ。ひよりん、またスマホ借りるね」

「どうぞ。自由に触っていいよ」

「ありがと」

 美弦ちゃんは私のスマホをいじった。

 スピーカーから再び『マジカル☆レボリューション』が流れ出すのと同時に、美弦ちゃんは立ち上がって踊り始めた。


 曲に合わせてステップを踏んで、ジャンプ。

 両手を広げて、くるっと回る。

 手を叩いて、またステップを踏む。その繰り返し。


 一つ一つは小さな子どもでもできるような、簡単な動きだ。

 それなのに、美弦ちゃんのダンスは、目が離せなくなるほど綺麗。

 それはきっと、足のつま先から手の指の一本一本まで、きちんと意識しながら踊っているから。

 綺麗かどうかなんて意識する余裕もなく、ただ踊るだけで必死だった私のダンスとは、大違いだ。


「…………」

 美弦ちゃんのダンスを見て、私と雪村くんは顔を見合わせた。

 私がうなずくと、雪村くんも何も言わずにうなずいた。

 雪村くんも、このままの振りつけじゃダメだって、思い知ったみたい。


「はい、おしまい。こんな簡単な振りつけじゃ、見てて退屈だった?」

 踊り終わって、美弦ちゃんは再びその場に腰を下ろした。


「そんなことない。さっきのダンスより、気持ちに余裕を持って、最後まで楽しく見てられたよ」

「北園さん。おれたちと一緒に、新しい振りつけを考えてほしい」

 雪村くんは真剣な表情で美弦ちゃんを見つめた。


「もちろん。そのために、私がいるんだから」

 美弦ちゃんは、二ッと笑ってから、首をかしげた。


「てかさ。二人とも、実際に踊ってみて難しいと思わなかったの? 練習してて『こりゃ無理だわ~』ってならなかったのが不思議なんだけど」

「それは……思ったんだけど」

 私はチラッと雪村くんを見た。

 雪村くんも私を見て、それから、また美弦ちゃんを見て言った。


「おれも、思ったけど。せっかく二人で決めたから、変えたいって言えなくて……」

「……私も」

 私も、雪村くんと全く同じだ。

 二人で動画を見ながら振りつけを決めたあの時間は、本当に楽しかったから。

 やっぱり変えたい、なんて、言い出せなかった。


「…………」

 美弦ちゃんは、気まずそうにうつむいている雪村くんと、ひざを抱えている私を交互に見て。


「あははっ。なるほど、そういうことかぁ。青春だねえ」

 なんだか楽しそうに、けらけら笑った。

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