24:振りつけの問題点
土曜日の午後三時。
私は駅前の広場で、まほアクのオープニング曲を踊っていた。
美弦ちゃんに教えてもらったこの広場には大きな鏡があって、多くの人がダンスの練習をしてる。
私よりはるかに上手い人ばっかりで気後れしちゃうけど、みんな練習に夢中で、私のことなんて見ていない。
だからこそ、曲の最初から最後まで全力で踊り切ることができた。
「ど、どうかなっ」
ぜえ、はあ。
私は肩で息をしながら、黙って見ていた美弦ちゃんにアドバイスを求めた。
「うーん。そうだなあ。正直な感想言ってもいい?」
美弦ちゃんは右手を腰に当てて、じっと私を見つめた。
「もちろん」
私は覚悟を決めて、うなずいた。
「じゃあ言うけど。全然ダメ」
――グサッ!!
美弦ちゃんの言葉は矢になって、私の胸に突き刺さった。
「まず体力が足りてない。たった一分半の曲を踊っただけで、そこまで息切れするとかありえない。踊り切る体力がないから、どんどん動きが適当になって、最終的にはグダグダになっちゃってる。もし私がダンスの審査員だったら、問答無用で×するね」
美弦ちゃんは胸の前で両腕をクロスさせて『×』を作った。
「……そんな……」
私はヘナヘナと地面に座り込み、うなだれた。
決して上手な踊りじゃないのはわかってた。
それでも、毎日一生懸命練習してきたのに……。
「ひよりんのダンスって、まほアクの公式チャンネルに出てる動画と全然違うみたいだけど。振りつけは、雪村くんと二人で考えたの?」
美弦ちゃんは私の前に屈んで、手を差し出してきた。
「うん、そう」
差し出された手をつかむと、美弦ちゃんは私を引っ張って、立ち上がらせてくれた。
「ふむ。ひよりんって、雪村くんのライン知ってる? 知ってるなら、呼び出してほしいんだけど」
「呼び出すって、ここに?」
私が地面を指さすと、美弦ちゃんはうなずいた。
「うん。振りつけについて相談したい。できれば、いますぐ」
それから三十分が経った頃、雪村くんが広場にやってきた。
雪村くんも私と同じように、動きやすそうな服を着ている。
「雪村くーん、こっちこっちー」
美弦ちゃんは雪村くんに向かって、大きく手を振った。
美弦ちゃんの動きに気づいて、雪村くんが歩いてくる。
「こんにちは、北園さん。花崎さん」
「こんにちは! いきなり呼び出しちゃってごめんねー」
「いや、だいじょうぶ。家でコスプレ衣装を作ってただけだったから。それより、振りつけを変えたいって、どういうこと? どこを変えるの?」
「んー」
美弦ちゃんはあごに手を当てて、首をかしげた。
「見ていて『いいな』って思った振りつけや、二人が絶対やりたい振りつけは残したいけど、それでも順番を変えたりしたいからなー。ほとんど1からやり直しみたいになるから……うん、やっぱり全部ってことになるかな!」
「全部変えるの?」
雪村くんは目を丸くした。
「そ。いまの振りつけには大きな問題があるの。ひよりん、スマホ触っていい?」
私のスマホは、bluetoothでスピーカーとつながってる。
「いいよ」
「ありがと。ちょっと見てて」
美弦ちゃんは私のスマホを操作して、スピーカーから『マジカル☆レボリューション』を流し始めた。
そして、当たり前のように、私がさっき踊ったダンスをそっくりそのまま再現してみせた。
――すごい。
私は思わず、息をのんだ。
たった一回見ただけなのに、美弦ちゃんは私たちが考えた振りつけを踊ってる。
しかも、私よりずっとずっと――比べるのが申し訳なくなるくらいに、めちゃくちゃ上手い!!
でも、なんだろう。
ものすごく上手いんだけど……なんだか、見てると疲れる……?




