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そのままのキミが好き!  作者: 星名柚花


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23/29

23:ダンスの先生がほしい

 金曜の夜。

 入浴を終えた私は、パジャマ姿でベッドにごろんと寝転がった。


 スマホの画面をつけると、表示された時刻は『21:21』。


「お、ゾロ目だ」

 なんか、いいことありそう。

 私は小さく笑って、『バーチャル・ドール』を開いた。


 今日は『カワラブ同盟』の投稿がまだだから、投稿しておかないと。

 毎日投稿しなきゃいけないってルールはないんだけど、もはや日課になってる。


 明日が土曜日だからか、広場は大賑わいだった。


 カフェスペースは満席で、おそろいの服を着たグループが楽しそうに笑っている。

 星の浮かぶ夜空では、羽の生えたアバターたちがキラキラ輝く光のエフェクトを雨のように降らせていた。


 ライブステージは今日も大盛況。

 スポットライトを浴びた美少年アバターたちと一緒に、ファンのみんなが踊ってる。

 画面の右下に表示されているオープンチャットは、ものすごい勢いで流れていた。


「あ。芽衣ちゃんも、聖華ちゃんもログインしてる」

 フレンド欄の名前リストの横に表示されたマークの色で、その子がログインしてるかどうかわかるんだ。


 二人に声をかけるよりも先に、私はSNSの画面を開いた。

 今日投稿したのは、おばあちゃんからもらったお菓子の箱の写真。

 メルヘンチックなリスの絵が描かれてて、すっごく可愛いの。

『カワラブ同盟』のタグをつけて、投稿完了っと!


 それから私は、『カワラブ同盟』のキーワードを検索した。

 今日の『カワラブ同盟』の投稿数は13件。

 全ての投稿をチェックしながら、私はメッセージの右下の星マークを押して、星ギフトを贈った。


「雪村くんが今日投稿したのはれもんの写真か。衣装作りやダンス練習で忙しいんだろうな」

 雪村くんの投稿にも星ギフトを贈ったときだった。


『やっほ~日和。学校ぶり~』

 芽衣ちゃんから個別チャットがきた。


『聖華と話してたんだけどさ。ひまだったら、日和もあたしの部屋に来ない?』

『行くー!』

 返信してから、私は芽衣ちゃん――『海月』の部屋に飛んだ。

 

 海月の部屋は海の中のようなデザインだった。

 壁一面が水槽になっていて、色鮮やかな魚たちが泳いでいる。

 水色の髪にオレンジ色の目をした海月は、その名前の通り、くらげをモチーフにした服を着ていた。


 ちなみに、私のサクラはアクアブルーを基本としたイルカちゃんの衣装を着ている。

『魔法少女キューティーアクア』とのコラボ期間中は、ユーザー全員に魔法少女たちの衣装が配られてるんだ。

 せっかくだから、着なきゃ損だよねってことで!


『日和さん。こんばんは』

 聖華ちゃんのアバター『紅雪べにゆき』は、長い黒髪に赤い目をした美少女だ。

 綺麗な蝶の模様が入った着物を着て、頭には大きな花のかんざしをつけていた。


『こんばんは。二人でなんの話してたの?』

『体育祭の話をしていました。体育は苦手なのに、実行委員になってしまったことを嘆いていたところです』

 五桜学園では、五月末に体育祭がある。

 聖華ちゃんはジャンケンで負けてしまい、実行委員になったのだった。


『苦手っていっても、私ほどじゃないでしょ』

『そうですね』

『何もないところで転んじゃう日和に比べたらね』

『フォローしてよ!?』

 ツッコむと、二人はクマが大笑いしてるスタンプを返してきた。

 芽衣ちゃんなんて、二連打だ。

 くうっ、意地悪!


『通話しちゃダメ? 文字打つの面倒』

『あたしはいいけど、聖華はダメなんだよね?』

『すみません。家族に聞き耳を立てられてしまいますので、私は無理です』

『じゃあ、このままチャットで話そう』

『すみません。ところで日和さん、ダンスの練習は順調ですか?』

 芽衣ちゃんと聖華ちゃんは、私と雪村くんがダンスの練習をしてることを知ってる。

 目的がまほアクのアクキーだって知っても笑わずに、応援してくれてるんだ。


『うーん。振りつけは覚えたんだけどね。手と足の動きがバラバラになったり、曲とタイミングがズレるんだ。踊ってる自分の姿をスマホで撮って、確認したりしてるんだけど。どうすればいいのかわからなくて。ここが違うとか、もっとこうしたほうがいいよって、教えてくれる先生がいたらな~』


 毎日一生懸命練習してるのに、どうしても曲に合わないのが、悔しい。

 このままじゃ、雪村くんの足を引っ張っちゃう。

 火曜日の放課後は、雪村くんと一緒に踊ることになってるのに。

 私の下手っぷりを見て、「やっぱりもっと上手い人と踊る」なんて言われたら、どうしよう。

 そんなことになったら、ショックで立ち直れないかも……。


「…………」

 想像だけで大ダメージを受けた私は、うつぶせに寝転がった。

 スマホを握って、そのまま動かずにいると。

 ピコッていう音がして、聖華ちゃんから新しいメッセージが届いた。


『美弦さんに先生役を頼んでみてはどうでしょう? 美弦さんは幼い頃からダンスを習っていたので、とても上手ですよ。ダンス部に入ったばかりなのに、もう選抜メンバー候補になっているようですし』

『そっか、美弦ちゃんがいたんだ! ありがとう、頼んでみる!』

 やっと悩みの出口が見えた気がして、私は大喜びでメッセージを返した。

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