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そのままのキミが好き!  作者: 星名柚花


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19/25

19:それはダメ

 月曜日の朝。

 雪村くんと約束したから、私はいつもより三十分早く登校した。

 教室に入ると、雪村くんは自分の席でスマホを見ていた。

 スマホの画面に表示されているのは、まほアクの公式チャンネルで公開中のダンス動画だ。


 まほアクの公式チャンネルには、2種類のダンス動画がある。


 一つは、子ども向けの簡単な振りつけ。

 もう一つは、動きが多くて難しい、ちょっと本格派なダンス。

 雪村くんが見てるのは、もちろん難しい方だ。


「…………」

 真剣な顔で動画を見ている雪村くんを見て、私は唇をきゅっと結んだ。

 学校では、まほアクの話題は絶対に出さないようにしてたのに。

 教室で動画を見てるってことは、本当に、ファンだと明かすつもりなんだ……。


 雪村くんの本気が伝わってきて、私も覚悟を決めた。

 頑張って、完ぺきなダンスを踊ってみせる!!


「雪村くん。おはよう」

 挨拶すると、雪村くんがこっちを見た。


「おはよう。それじゃ早速、打ち合わせしようか。ダンスはどっちのパターンでいく? おれは②のほうがいいと思うんだけど」

 雪村くんはダンス動画を表示したまま、机に置いた。


「私も②がいい」

 ①は飛んだり跳ねたり、同じパターンの繰り返しで、本当に小さな子ども向けなんだよね。


「わかった。じゃあ、これをベースにして、色々アレンジしていこう」

「うん」

 雪村くんのスマホでは、アニメのスタッフさんらしき男女がペアで踊っているけれど、全く同じように踊らなくても大丈夫だ。

 動画の説明欄にも、『これは参考用動画だから、この通りに踊らなくても大丈夫! みんなで自由に踊ってね!』って書いてるしね。


「おれはオルカのコスプレするつもりだけど、花崎さんは誰のコスプレする?」

「あれっ。アクアちゃんのコスプレじゃないんだ?」

 アクアちゃんのコスプレした雪村くんが見られるかも!? って、ちょっぴり期待してたんだけどな。


「うん。おれはフリルとか好きだけど、見てるとテンション上がるっていうだけで、実際に着たいってわけじゃないから。可愛いドレスを着て楽しむのは、バーチャルの世界だけでじゅうぶん」

「そっか、わかった。私は一番好きなイルカちゃんにするよ。イルカちゃんとオルカくんだったら、お揃いのコーデになって、一緒に踊っても映えると思うし!」

「わかった。衣装はどうしよう? 自分で作るって言ってたけど、花崎さんは裁縫、得意なの?」

「……ううん……苦手……」

 私は目を逸らした。

 お裁縫なんて、小学校の家庭科の授業でしかやってない。


 絶対、雪村くんのほうが上手に決まってる。

『バーチャル・ドール』のSNSにあげてたあみぐるみの写真も、プロみたいなレベルだったし。

『これ本当に手作り!?』『すごすぎる!』って、コメントや星ギフもいっぱい来てたよ。


「じゃあ、花崎さんの分の衣装も、おれが作るよ」

「えっ? いいの?」

「いいよ。裁縫好きだし。材料費もおれが出すから気にしないで」

「いやいやいやいや!! それはダメ!!」

 私は首を振って、力いっぱい否定した。


 雪村くんのおじいさんは『雪村総合医院』の院長で、雪村くんのご両親は二人ともお医者さんだって聞いた。

 広い庭つきの大きな家には、お手伝いさんもいるんだって。


 雪村くんの家は私の家より、はるかにお金持ちだ。

 でも、だからってお金を出してもらうのは、絶対違う!!

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