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そのままのキミが好き!  作者: 星名柚花


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18/22

18:キミと一緒に踊りたい

「悪者あつかいされてもいいよ。他人が何を言ってもいいから、アクキーがほしい。アクキーを雪村くんにプレゼントしたいの」

「……なんで?」

「入学式に助けてもらったお礼がまだだから。どうせなら、雪村くんがいま一番ほしいものをプレゼントしたいの。この前、サクラとれもんのダンス動画がバズったでしょ? バーチャルで踊るのも楽しいけど、現実で雪村くんと一緒に踊るのは、もっと楽しいんじゃないかなって思ったの」

 雪村くんは何も言わない。

 不安になって、私は言葉を重ねた。


「アニメに興味ないってことにしてもいいよ。それでも、だめかな?」

「………」

 十秒経っても、三十秒経っても、雪村くんは何も言わないまま。


 やっぱり、だめなのかな……。

 祈るような気持ちで、私は雪村くんの返事を待った。


「……ちょっと、考えさせてほしい」

 一分くらい経って、やっと雪村くんはそう言った。


「……うん。わかった」

「電話、切るね」

「うん。またね」

 電話が切れて、私はスマホを置いた。


 それから、枕を抱きしめて、ベッドに寝転がる。


 雪村くん、なにか考え込んでたみたいだったな。

 やっぱり、踊ろうなんて言うんじゃなかったかな。

 アクキー可愛いねーで、終わらせるべきだったかな。


 どうしよう。

 調子に乗って、グイグイいきすぎたかも。

 踊ろうなんて言って、嫌われたかな……。


 頭の中は、ぐちゃぐちゃだ。


「踊ろうなんて、言わなきゃ良かった……」

 私は枕に顔を埋めた。

 どれくらい、そうしていただろう。

 だんだん息が苦しくなってきて、私は枕を横に退けた。


 ベッドに仰向けに寝転がって、ただ、ぼうっと天井を見上げる。

 部屋は静まり返っていて、外を走る車の音だけが遠くに聞こえた。


「……現実でも、一緒に踊ってみたかったんだけどなあ……」

 呟いてから、私は起き上がった。

 スマホを手に取り、ラインの画面を開く。


 さっきは、変なこと言ってごめん。

 雪村くんは踊ってでもアクキーがほしいなんて、一言も言ってないのに。

 一人で勝手に盛り上がってごめんって、雪村くんに謝ろう。


 決意して、文字を打ち始めたときだった。


 ――シュポンッ。


 そんな音と一緒に、ラインの画面が上に動いて。

 雪村くんから、メッセージが届いた。


『さっきの話だけど。おれと踊りたいって言ってくれてありがとう。おれも、花崎さんと一緒に踊りたい。でも、花崎さんに言われたから、仕方なく、なんて、たとえ嘘でも言いたくない。もう隠すのはやめる。誰かに聞かれたら、まほアクのファンだってちゃんと言うよ。だから、おれと一緒に踊ってくれない?』


 ラインの画面を開いていたから、すぐに『既読』の二文字がついた。

 だから、雪村くんは私がメッセージを読んだと気づいて、返信を待ってるはず。


「…………」

 でも、私はなかなか返信できなかった。


 指が震える。

 喉の奥がきゅっとなって、視界がにじむ。


 ――雪村くんは、まほアクのファンだってことを打ち明けるって言ってくれた。


 ただ、私と一緒に踊るために。

 からかわれて傷ついたことがあるのに、それでも、勇気を出してくれたんだ。


「……私のせいにしていいのに。本当に、真面目だよね」


 雪村くんは朝、教室で会ったら挨拶してくれる。

『バーチャル・ドール』でも、毎日欠かさず『カワラブ同盟』のタグをつけて投稿してくれていた。


 だから、今日はどんな投稿してるかなって、『バーチャル・ドール』で雪村くんのSNSをチェックするのが楽しみになってるんだよね。

 私は濡れた目元を指で拭って、微笑みながら文字を打ち込んだ。


『もちろん。嬉しいよ、よろしくね』

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