10:みんなで頭の体操
午後一時。
お昼ごはんを食べたあと、私たちは再び食堂に集まった。
いまから始まるのは、午後のレクリエーション。
でも、身体を動かす前に、まずは頭の体操をするんだって。
「これから3つの問題を出す! 心配はいらない! 五桜学園の厳しい受験を勝ち抜いた君たちなら、簡単に解ける問題だ!」
私たちの前でそう言ったのは、学年主任の加藤先生。
いつもは厳しくて怖い先生だけど、今日は珍しく笑顔だ。
加藤先生も、オリエンテーションでテンション上がってるのかも?
「えー、ホントかなぁ……」
「解けなかったらどうしよう……」
私の近くにいる女子たちが、不安そうに呟いている。
「制限時間は30分! 各班ごとにクリアまでの時間を競ってもらう! 3位以内に入れたら、順位に応じて夕食のバーベキューの肉が増えるぞっ!!」
――おおおおおおおおお!?
肉が増えると聞いて、生徒たちが盛り上がった。
特に盛り上がったのは、大食いの男子たちだ。
「…………」
私は同じ班になった子たちと、顔を見合わせた。
班のメンバーは、班長の芽衣ちゃん、私、北園さん、姫宮さん。
そして、久城くんと雪村くんの6人だ。
みんな、ちょっとそわそわしてる。
お肉が増えるなら、増やしたい。
その思いは同じらしい。
「いまからプリントを配るけど、まだ問題は見るなよー。全部解けたら、班長はプリントを提出するように。提出が早くても、全問正解じゃなきゃ、その班の記録にはならないからな」
玉木先生は各班ごとに3枚のプリントを配った。
班長の芽衣ちゃんは先生からプリントを受け取って、裏返しにしたままテーブルに置いた。
「それじゃ行くぞー。よーい、スタート!」
各班の班長たちがいっせいに動いて、プリントをひっくり返す。
班員たちは身を乗り出して問題を確認した。
1枚目は、写真が左右に並んでるプリントだった。
どうやら、私たちがいま使ってる合宿施設の風景を撮ったみたい。
プリントの上には『第一問 間違い探し』と書いてあった。
「間違い探しか。これはたしかに、勉強じゃなくて、頭の体操だな」
難しい問題じゃないことがわかって、久城くんはホッとしたように呟いた。
「間違いは10個と書いてありますが……難しくありませんか? よく見ないとわかりませんよ」
写真を見比べて、姫宮さんが困ったように言った。
敬語は使わなくていいよって言ったんだけど、姫宮さんは敬語を使わないと落ち着かないんだって。
普通の家に生まれた私と違って、姫宮さんは本物のお嬢様だから、きっと言葉づかいも厳しく教育されたんだろうなあ。
「あっ、窓枠がない!」
芽衣ちゃんが叫んで、プリントに赤ペンで丸をつけた。
「しーっ、芽衣ちゃん。声が大きいよ。みんなで競争中なんだから、静かに」
「ごめん。つい」
「ここ、女の子の髪の長さが違う」
「ナイス!」
北園さんの声を聞いて、芽衣ちゃんがプリントの煙の部分に赤丸をつける。
8個までは順調に見つけることができたけど、あと2個が見つからない。
みんなが写真に顔を近づけ、目をこらしている。
だから、私は逆に身体を引いて、写真全体を見るようにした。
「あっ、山の大きさが違う。右のほうがちょっと小さい」
私は山を指差した。
「えっ、ホントだ。凄い。よくこんな微妙な間違いに気づいたね」
芽衣ちゃんが山全体を赤丸で囲む。
「うーん……あと一個が見つからない……」
「看板の『L』の文字だけ反転してる」
雪村くんが写真の看板を人差し指で指した。
「おおっ、雪村くんナイス! これで10個全部見つけたよね!? 次行こう!」
芽衣ちゃんは赤丸をつけた1枚目のプリントを横に退けて、2枚目のプリントを出した。




