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魅了魔法で変わってしまった王子様を舞踏会で取り戻します。

作者: 槙村まき

 王子様は、魅了魔法のせいで変わってしまった。


「ルシー公爵令嬢。僕は、あなたとの婚約を破棄する」


 王子様は真っ直ぐな新緑の瞳で、邪悪な女を糾弾する。


「あなたのせいで、僕のいっ愛しいミリアが毎日泣いていたんだ」


 レックス王子様は私の腰を引き寄せた。

 腰に回った手が微かに震えていて、彼の緊張が伝わってくる。

 安心させるように、彼にぴとっと体をくっつける。


「あなた、わたくしの婚約者に何をされているの!」


 公爵令嬢がわなわなと怒りはじめた。

 もっと怒らせたくて、私はうるませた瞳で王子様を見上げる。


「王子様ぁ、怖いですぅ」

「……み、ミリア、少し手加減を」

「王子様ぁ、助けてくださぁい」


 情けない声を出す王子様を無視して、私はさらに甘えた声を出す。

 すっかり王子様の顔から仮面は剥がれて、なぜか泣きそうになっている。

 それを見た公爵令嬢が、キーと叫んだ。


「王子様がそんなだらしない顔をするなんてありえませんわ!」


 公爵令嬢がさらにわめく。


「王子様は完全無欠なのよ。それなのに、そこの女と会ってから変わったわ。きっと魅了魔法のせいよ」


 王子様は、いまも昔も変わっていない。

 彼を変えたのは、目の前にいる公爵令嬢だ。


「魅了魔法を使っていたのはあなたです、ルシー様」


 妾の子として生まれた王子様は、幼少期に行方不明になっていた時期がある。

 その間、彼は孤児院にいた。

 その時から他の孤児とは違う雰囲気を持った少年だった。

 いつも私の後ろに隠れてしまうほど、気が弱かったけれど。


「王子様は、あなたが願うように完璧な王子様ではないんですよ」


 王家に戻った王子様は、気の弱さが嘘かのようにいけ好かない性格になった。

 王子様になったからだと思っていたけれど、学園に入学してから気づいた。


 浄化の力を持った私は男爵家の養子になった。

 最初は私のことを相手にしなかった王子様だったが、毎日辛抱強く会い続けたことで、彼のことを浄化することができた。


 今日の王子様は素面だ。私のために、公爵令嬢を糾弾してくれている。


「あなたが僕に魅了魔法を使ったことは調べがついている。よくも謀ってくれたな。僕の心を勝手に変えて、自分のことを守ってくれる王子を求めていたようだが、僕の心は昔からミリアのものだ。あなたにあげられるものは何ひとつない」


 顔面蒼白になった公爵令嬢が兵士に連れられて行く。

 王家を影から操ろうとした公爵家はもう終わりだ。


 健気でかわいい王子様は、私のもとに戻ってきた。


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