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※とある動画投稿サイトの「本当にあった怖い話」


どうか語らせてください。

これは今からちょうど一年前のお話です。


私はその日、知久川市の森林へ向かったんです。なぜ向かったのかというと、ヤマセミと呼ばれる鳥を撮影するためです。


私の趣味はバードウォッチング。つまり、鳥見でして、色んな鳥を見たり、撮影するのが目的なんです。

そのために朝早くから車で出かけることもあって、その日もそうだったんです。朝3時半頃、まだ辺りが真っ暗な時間帯に外出して、この時期にしか見れないヤマセミの若鳥を見に行ったんです。


ヤマセミはとても警戒心が強い鳥で、人の気配があるとすぐにどこか彼方へ逃げてしまうんです。だから、結構入念な準備が必要な、妖精のような鳥なんです。

でも、若鳥だったら、まだ経験の浅い新人君なので、用心深い大人よりは楽に撮影ができるんです。


話を戻しましょう。

それでですね。森林は山のすぐ近い場所にある絶好の鳥見スポットで、友人から教えてもらった穴場だったんです。


懸念として、場所がある大学の近くではありましたが、その時は運のいいことに夏休み期間中で、学生さんや関係者さんとは一切会いませんでした。

私は苦労して手に入れた30万円ほどの超ハイテクカメラを片手に、ヤマセミの目撃情報付近まで歩き、遠くからでも集中して観察できるように、神経を尖らせていました。


そして、ついに私は念願のヤマセミを撮ることができました。そうですそうです。パシャパシャとね。

ヤマセミは森林の中にある小川近辺の木々に紛れていました。

かなり遠くの枝先ではありましたが、なんとか撮ることができました。レンズの調整、倍率、雰囲気、息のひそませ方。どれをとっても我ながら完璧でした。

一枚だけでなく、七枚も撮影できたことは本当に僥倖だったのでしょう。



そのときだったんです。

ビューと風が私の頬を触り、ヤマセミがどこかへ飛んで行った直後でした。


見えたんです。川の木々の奥。そのさらに奥の方です。

薄っすらとした黒い何かを私の目は捕らえました。私の目は、年々進む老眼のはずなのにです。


そんな気がした、とでも言うのでしょうか。

私は自然とカメラをそれに向けていました。カメラならばあの距離からでも視認できるのではと。はっきり見えるのではと思ったからです。


それは黒い大きな人の手でした。

しわの一つもなく、爪にいたるまで黒一色で彩られた左手でした。

ですが、その左手はさらに恐ろしいものを生やしていました。

ミミズに似た薄ピンク味のかかった触手のようなもの。それが黒い謎の手から何十本と生えていたのです。

明らかに粘り気を纏い、獲物を探しているかのように上下左右にウネウネと動いていました。


この時点で私はもう冷や汗が止まらず、足がすくんでいました。ですが、不思議なことにカメラを閉じて逃げる気にはなりませんでした。気が動転して、変な使命感に駆られていたのでしょうか?今となっては分かりません。


しばらくすると、その黒い謎の手は、突然ある方向に向けて指をさし示したのです。

その次の瞬間、瞬きした私の目に、そして、私のカメラにその黒い謎の手はもう映っていませんでした。


私はカメラを腰まで下ろして、完全に唖然としていました。

たまに猟師をやっている友達から、そういうものとの遭遇エピソードを聞いたことはありましたが、まさか、自分が遭うだなんて信じられませんでした。

「早くここから離れよう。もう目的は果たしたのだし」

そう思って動こうとしたときでした。


「良かったさあネェ」


こんなことは想像していませんでした。

途端に全身が硬直し、時が止まりました。

後ろから冷たく、野太い男の声が聞こえてきたのです。

いや、男の声かどうかも怪しかったです。無機質で、あまりにも落ち着いていて、場違いすぎて、人が話しているのに、人に限りなく似たAIが声を出しているだけのようでもありました。

恐る恐る振り返ると、そこにはこげ茶色のボロボロの継ぎはぎの服を着た男性が立っていました。


「良かったさあネェ。良かったさぁネェ」


男は先ほど全く同じことを言っていました。ぱっと見、人間としか思えない体をしていましたが、どうも表情、ぎこちなさ、そして、風格的に人でないことは瞬時に理解しました。

私は直感でその危険性を察知していましたが、「喋れるのなら話せるのか…?」と思い、一か八かで声をかけました。


「良かった…?何がだ?あなたはいったい…?」

小川のせせらぎが、異様に大きく聞こえました。



「良かったさあネェ__オラは、●〇〇●(※解読不可能)」

と、言っていました。何を言っているのか分からない?

そうですね。私もそう思います。今の発信も、外国語を学ぶ時のように、本当に合っているのか分からずに発音していますから。何を言っていたのかは分かりません。


ですが、一瞬目を閉じた後___もうそこに男は居ませんでした。

蜃気楼、幻覚、妄想。それらの類なのかもしれませんし、先ほど見た謎の黒い手の影響が残っていたのかもしれません。

けれども、私の脳みそには確かにそんな記憶が張り付いて離れないんです。


あの後、すぐに森中に止めていた車に乗り込み、急いでその場から離れました。恐ろしくてしょうがなかったのもありますし、本能が逃げろと言っていたのもあるのでしょう。

これ以上ないくらいのスピードを車から出した状態で、私は家に帰りました。


後で知ったのですが、どうやら黒い手が指をさしていた方角で、とある破壊事件があったそうなんです。きっと、無関係ではないのでしょう。

結局、あの謎の手も、あの男も、何にも正体は未だに分かりません。


それから余談になりますが、家に帰ってから撮った写真を一枚一枚丁寧に確認したのです。そしたら…一枚だけ、このようなものが映っていたんです。




(※多数の黒い目をした人の顔が映った写真)


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