個人的考察2
…まあ、こんなこといきなり言っても仕方ないですよね。なので、ここからはいくつかの証拠と私の考察を述べさせていただきます。
全部、私の聞き取り調査やネット上の信憑性の高い情報、常連の皆様のご意見等を参考に、私のこの考察をお聞きください。
おっと、飲み物が来ましたね。少しだけ一息つきましょうか。
_ふぅ、では再開です。
まずは「どうかいじょう」のスペシャルメニューについてです。
スペシャルメニューの日は毎月19日に出されますが、今回は7月から9月にかけてのラインナップを中心に調査を行いました。
その一部がこれです。
・2009年8月冷やし中華定食
・2017年8月スペシャルフライ定食
・2018年7月ステーキカレー
・同年8月ラーメン定食
・2019年7月ジビエ定食
・同年8月豚丼定食
・同年9月チャーシュー丼定食
…など他多数
一見何の変哲もありませんが、私が違和感を覚えたのはどの年の定食も7月から9月にかけてのみ、全品肉が使われているんです。
創業から閉店に至る年まで、7月から9月までの特別メニューにおいて、焼き魚や天ぷらの山菜盛り合わせ、煮物といった肉を使わなかったり、肉を使わずともできる料理は一品も出されていません。
私はここに若干の違和感を覚えました。
次に話は逸れますが、怪異の出没についてです。
これを見てください。うちの大学で出している新聞の特別付録です。
私は、このうちの怪異二体…「穴男」と「白手」に注目していただきたいのです。
「穴男」は記述の通り、1990年代から目撃されるようになり、2003年からはその目撃情報が毎年のように上がり始めています。
ですが不思議なことに、2010年7月12日の情報を最後にその目撃は途絶えています。
それと同様に、この「白手」も2000年代から目撃されていますが、2009年8月17日の目撃証言を最後に途絶えています。
それを踏まえたうえでこちらをご覧ください。
これは知久川市が主催する「知久川祭」で「どうかいじょう」の看板に書かれた合言葉です。
2009年は「白」。2010年は「穴」と記載されています。
そしてこれは、独自に調査した2012年からの、知久川市に寄せられた心霊相談や心霊関係の事案の件数です。
【特殊資料6】総合心霊件数録
1951年730件
…1959年810件
…1960年800件
1961年789件
~(中略)~
…2012年111件
2013年85件
2014年71件
2015年60件
2016年47件
2017年30件
2018年11件
2019年21件
2020年7件
2021年3件
ご覧の通り、2012年から2018年までは右肩下がりですが‥2019年になぜか一時的に件数が増え、2020年からは一桁台となり、過去最少となりました。
記録上の過去最多は1959年。件数は驚異の810件です。
記録が少ないだけでもっとある可能性が高いですけどね。
ですが、資料を見てもらって分かる通り、1959年に最大化した後は緩やかに数を減らしていき…ついに、2021年では3件のみ。去年は1件になりました。今年に入ってからは、報告は一件もありません。
そして…件数が減少し始めた1960年は、「どうかいじょう」が開業した年です。
「どうかいじょう」が開業し始めたと同時に、心霊系の件数が数値でも分かるほどに減り始めた。おまけに、都市伝説の身体的特徴であり名称であるものと酷似した合言葉…これは偶然でしょうか?
また集めた資料によると、7月から9月にかけては、お彼岸の季節だからか、怪異の出現率もどうやら高いそうです。風習的に地域差はあるようですが、この市では7月から9月にかけて、心霊系の情報が増えています。
これもまた、先ほどの肉料理のお話とも重なりますよね?これも偶然ですか?
…お答えにはなりませんか。そうですよね。あなたはあの店主さんが認めた賢妻だ。そう簡単に折れやしないでしょう。
ですので…ここで、店主さんのお話をしておきましょう。
早速ですが、店主さんのご実家をご存じでしょうか?
…ええ、ええ、そうですか。何度か足を運ばれた、と。
昔、弟さんが居られると聞きましたが、今もお元気で?
…なるほど、分かりました。では、やはりそうなのですね。
店主さんの旧姓は井澤で間違いない、と。
ご結婚されたときに、花さんのご実家の方に籍を入られたんですね。弟さんが現在は井澤の方を…
ならば当然知っておられますよね?
ご主人である店主さんのご実家が、神主のご家系であるということに。
こちらの新聞。見覚えがおありでしょう?『XZ新聞』の「地元神社再興へ 1982年夏 復興予定」という記事です。当初の予定通り1982年の夏、復興されたご実家です。
つまり、店主さんは神主の一族であり、決して神や霊とのつながりや教養が零ではなかったということです。
神主になったり、それに関わる仕事をするには、多少なりとも神社の基礎や日本の霊的なものについての知識が必要だ。
それが先祖代々からともなれば、現代では常識的にあり得ないことや知られていない知識だって、口承または文献で繋がっていてもおかしくはない…なにせ、日本は昔、公的な文書に妖怪や妖術師の記述が載る国だ。
怪異を何らかの方法でお祓いしたり、退治したり、加工したりできる技術があるかもしれない。
…まあ、あくまで推測ですよ。現実的に考えてあり得ないと考えるのが、私達の脳味噌ですから。
でも、そう考えれば辻褄は合うんです。
店の創業後に起きた怪異の減少は、店主さんがその何らかの方法で怪異を殺していたから。
店の定食の値段が安かったのは、怪異の肉を使うことによって高コストの肉を、原価零で提供できていたから。牛や豚っぽく加工したりも、できた可能性もあります。怪異の肉についての知識はありませんが。
特別メニューが肉関係ばかりだったのは、7月から9月にかけてのお盆シーズンにより、怪異の出現率が高かったから。
そして、大助君が祠を破壊したのは…怪異が減り、店が今までのように営業できなくなること恐れた店主さんが、祠を破壊して効力を弱めることにより、怪異の出現を増やそうと画策したから。
その結果、一時的には増えたものの、後が結局は続かず、怪異は減少し、お店は今まで通りの経営ができなくなった。
だから、お店は閉店せざるを得なかった。安さが取り柄で、且つあの某感染症による影響だ。畳むにはちょうどいい時期だと思われたのでしょうね。
もういいお歳でもありましたよね?80を超えておられたはずです。
だとすれば、綾小路さん…いや、正豊さんですね。彼が散々店を批判していたのも納得できる。
たしかに「怪異の肉を料理に使っている店」なんて、彼のような将来の神主候補からすれば異常そのものです。批判もしたくなって当然ですし、恐怖を抱くのも想像に難くはありません。
自分の知らぬところで、こんな大それたことを行っている店があった。
その事実と自分の無能さに腹が立ってもしょうがないでしょう。
大学近辺の神社は、万羅神社のみですし。
ただですよ。私はそれもおかしいと思うのです。彼の祖父が本当に何も知らなかったのかなー?と。
彼の祖父である正嗣さん、現当主の神官様だって、数十年神に仕えている立派な神主ですよ?知らなかったと思いますか?
ですので…私はこう考えています。
彼の祖父と店主さんはグルだった。
忌み地を浄化するという名目で、裏で金銭だか、情報だか、負担軽減かは知りませんが、取引を行っていた。しかも、他の人たちも何人か巻き込んで。
であれば、若手の正豊さんが知らなかったのも理解できます。教えられていなかったのでしょうね。彼自身も、自分の祖父がグルだなんて思ってもいないでしょう。
えっ?心霊系をどうやってここまで調べた…?嗚呼、大学のオカルトのプロフェッショナルにご協力いただきました。
先ほど出したこの大学の方の記事ですよ。
『万羅大学新聞特別付録!:大学の怪談・噂御三家』です。
この著者である「米永明作」さんに力を貸していただきました。
何でも、お兄様が怪異に襲われたご経験があって、今でもそれがトラウマとなり引き籠っておられるそうです。
その怪異を探るべく、大学のオカルト研究サークルにわざわざ入られたそうですよ。
…ええ、怪異に襲われたと。本人は証言しておられます。
何でも、死を覚悟するほどのご体験をされ、救急車で運ばれたときは全身が血まみれだったのだとか。
そのときの最後の景色で、自分を殺そうとした怪異が、血を多量に流しながら、何者かに引きずられていく様子を見たのだそうです。
米永 明…このお名前に聞き覚えはありませんか?




