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第9話:「突き放された真実」

陽子は信田の死の真実を追い続けていた。彼の死が自殺だと言われ、業界内ではそれ以上の話は出てこなかった。しかし、彼女はそれが本当の理由だとはどうしても思えなかった。信田が追い詰められ、絶望して自ら命を絶ったのか。それとも、誰かに仕組まれたのか。陽子は心の中で答えを求めていた。


「私は必ず真実を暴く。」


陽子は何度もその言葉を自分に言い聞かせ、幾度となく深い夜を過ごしてきた。信田が抱えていた「黒いヒマワリ」とは一体何なのか。それを知ることで、信田の死に対する疑問はすべて解けるのかもしれない。だが、次々と明らかになる事実に、陽子はますます足元が崩れていくような気がしていた。


「流星グループの幹部に会わなければ……」


陽子は決意を固め、流星グループに足を運ぶことにした。信田が所属していた芸能事務所。信田が自ら命を絶ったその背後に、何かがあることは間違いない。そして、流星グループこそがその鍵を握っているはずだ。


陽子が事務所に到着すると、幹部が待っていると言われた会議室に案内された。陽子は深呼吸をし、足を踏み入れる。会議室の中にいるのは、流星グループの幹部たちだ。その中には、信田がかつてお世話になった人物や、彼が所属していたチームのマネージャーもいた。皆、陽子を見て一瞬黙り込むが、すぐに冷徹な表情を浮かべた。


「陽子さん、お待ちしていました。」


一番年長の幹部が席を立ち、陽子に向かって微笑んだが、その笑顔には温かさは全く感じられなかった。陽子はその冷徹な笑顔を無視し、静かに言葉を発した。


「信田の死について、あなたたちが何か知っていることがあるはずです。」


幹部たちは一瞬、顔を見合わせた。陽子の言葉に、彼らは少し動揺したように見えたが、それでも誰もが冷静さを保った。


「信田さんの死に関しては、すでに警察も関与しており、全ては自殺だと結論が出ています。これ以上話すことはありません。」


その言葉に、陽子は無力感を感じたが、それでも諦めるわけにはいかなかった。


「自殺? 本当にそれで終わらせていいんですか? あんなに苦しんでいた信田が、あれで終わると思っているんですか?」


陽子の言葉に幹部の一人が目を細めて見つめてきた。陽子はその視線に挑発的に向き合いながら、言葉を続けた。


「信田が死ぬ前に、何かがあった。『黒いヒマワリ』という言葉が、彼の手元に残されていた。それが意味することは一体何だったのか。」


幹部たちはその言葉を聞いて、少しだけ表情を変えた。しかし、すぐにその顔を戻し、どこか冷たい調子で言った。


「『黒いヒマワリ』? それが何か関係あるんですか? あなたも分かっている通り、信田さんの死は本人の選択であり、それに関して我々がどうこう言うことはありません。」


その言葉に陽子は声を荒げた。


「どうしてそんなことが言えるんですか! どうしてあなたたちがそれを決めつけるんですか!」


会議室の空気が一瞬で重くなり、幹部たちは少しばかり顔を見合わせた。その中で、先ほどの年長の幹部が再び口を開いた。


「陽子さん、あなたがどれだけ苦しんでいるか、私たちも理解しています。しかし、これ以上この件を引っ掻き回すことは、あなたにとっても良い結果を生まない。」


陽子はその言葉を聞きながら、心の中で何かが決定的に崩れる音を感じた。彼らの言葉には、何か隠されたものがある。信田の死が自殺で終わるはずがない。それは彼女の中で確信に変わっていた。


「それなら、あなたたちに一つ聞きます。信田が関わっていた『闇営業』について、あなたたちはどう関与しているんですか?」


その言葉が、部屋の空気をさらに重くした。幹部たちの顔色が一瞬で変わり、陽子の質問に動揺が見え隠れした。しかし、すぐにその冷徹な表情を戻した年長の幹部が言った。


「闇営業だと? それは完全に噂の域を出ません。私たちは信田さんがどんな選択をしようと、それを責めるつもりはありません。しかし、あなたがこれ以上真実を追求し続けると、あなた自身にも不利益が生じることになるかもしれません。」


陽子はその言葉に衝撃を受けた。すでに脅されているような感覚を覚え、彼女の手は震えた。しかし、その震えを感じ取られまいと必死で耐え、冷静さを取り戻そうとした。


「信田はあなたたちに殺されたんですか?」


陽子がその言葉を放った瞬間、幹部たちは明らかに動揺した。だが、年長の幹部はすぐにその動揺を隠し、陽子を見つめた。


「陽子さん、あなたがここまで追い詰められる理由は理解できます。しかし、これ以上掘り下げても、あなたにとっても、信田さんにとっても何の利益にもなりません。」


その言葉を聞いた瞬間、陽子は思わず立ち上がった。


「分かりました。あなたたちが何を隠しているか、私は必ず暴きます。信田の死を、あなたたちの手で終わらせることはさせません。」


幹部たちは何も言わず、陽子が部屋を出て行くのをただ見守るだけだった。陽子はそのまま部屋を出て、廊下を歩きながら、背後で聞こえる幹部たちの言葉を耳にした。


「彼女は、本当に分かっていない。」


その言葉が、陽子の心に重く響いた。彼女が向かう先にあるのは、どれほどの危険が待ち受けているのか。それでも、陽子はもう後戻りはできないと感じていた。信田の死を知るために、どんな危険も乗り越えて進んでいく覚悟を決めていた。


「必ず、真実を暴いてやる。」


陽子はそう心に誓い、足を速めて事務所を後にした。

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