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第3話:「遺書の中の言葉」

信田が亡くなってから3日が過ぎ、陽子は静かな部屋の中で一人、彼の遺品を整理していた。彼女は何度も手に取ったその品々を見つめ、深い無力感と喪失感に包まれながらも、どうにか一歩踏み出そうとしていた。だが、信田が亡くなった理由に対する答えは、依然として見つからなかった。


陽子の心には一つの疑問が渦巻いていた。彼が死んだ理由は本当に「闇営業」のせいなのか。それとも、何か他に隠された真実があるのではないか。信田が死ぬ前に、何かを伝えようとしていたのではないか。その気持ちが陽子を突き動かしていた。


「信田……一体何があったの?」


陽子は呟きながら、信田の衣類や持ち物を整理していた。バッグの中、ポケット、引き出し……ありとあらゆる場所を確認し、彼の足跡を辿っていった。その中で、信田が使っていたスマートフォンの他に、目を引いたものがあった。それは、彼が大切にしていたと思われる小さな箱だ。箱の中には、いくつかの書類や小物が入っていたが、その中に一つ、黒く埃をかぶったUSBメモリが見つかった。


陽子はそのUSBメモリを手に取り、少しの間眺めた。これが何かの手がかりになるのではないか、そんな予感が胸に湧き上がってくる。だが、それが本当に信田の死に繋がる何かを示しているのだろうか。


「もしかして……」


陽子はそのUSBメモリをパソコンに挿入し、内容を確認しようとした。画面に表示されたファイルは、すぐに「削除済み」となっていた。陽子は思わずため息をつき、さらにファイル復元ソフトを起動させた。


「どうして、こんなに……」


陽子は復元作業を試みながら、思わず自分に問いかけた。信田が本当にこれを隠していたのか、それとも誰かに強制的に消去されたのか。作業が終わると、画面には信田の名前と日付が書かれたファイルが表示された。


陽子はそのファイルを開くと、驚きと共に目を見開いた。そこに書かれていたのは、信田が自殺する直前の記録と、誰かとのやり取りのメモだった。


「陽子には秘密にしておくべきだ。」


その言葉が、ファイルの最初に書かれていた。陽子はその部分に目を止め、何かを感じ取った。それは、信田が最後まで陽子を守ろうとしていたのか、あるいは彼が抱えていた何かを陽子に知られたくないと思っていたからなのか。


その後に続いていたのは、暗い内容だった。


「あの日、俺は間違っていた。業界の闇に足を踏み入れてしまった。」


「でも、今更引き返すこともできない。」


「桐生に頼んだことは後悔している。でも、信じてくれ。あの仕事は俺が選んだ。」


その言葉に、陽子は心を締め付けられるような思いを抱いた。信田がどれだけ苦しんでいたのか、そしてどれほど後悔していたのか。それでも、彼はその苦しみを抱えたまま、最終的には命を絶つしかなかった。


「信田……」


陽子は胸が痛んで、パソコンの前でしばらく動けなかった。信田が残したこのメモは、彼が命を賭けて隠したいことだったに違いない。それが何であれ、陽子はその真実を知りたかった。


だが、そのメモの最後に記された言葉が、陽子の心に重くのしかかった。


「黒いヒマワリのことが、全てを知る鍵だ。」


「黒いヒマワリ……」


陽子は呟いた。その言葉が、彼女の頭の中で何度も響いた。黒いヒマワリ。それが何を意味するのか、信田がそれに触れようとした理由は一体何だったのか。陽子は、信田が追っていた「黒いヒマワリ」に繋がる何かがあることを確信した。


その時、突然、部屋のドアがノックされた。陽子は一瞬驚き、すぐにスマホを手に取って確認した。そこには桐生竜一からのメッセージが表示されていた。


「陽子、話がある。」


陽子はそのメッセージを見て、心の中で何かが突き刺さるような感覚を覚えた。桐生。信田の相方であり、彼の死に何か関与している人物。その桐生が、何かを隠していると確信していた。


「今、桐生が来る……」


陽子はその時の自分の気持ちを整理する間もなく、再びパソコンの画面を見つめた。信田が残したメモに記されていた「黒いヒマワリ」。それを探し求めて、陽子の目はすでに次の一歩を踏み出す準備ができていた。


「これが……真実に繋がる道。」


陽子はUSBメモリを手に取り、桐生の到着を待ちながら、心の中で新たな決意を固めた。彼女が信田の死の真相を追い求めるのは、単なる復讐ではない。彼女の中で、その真実を暴くことが、信田を救うためにできる唯一の方法だと感じていた。


その時、部屋のドアが再びノックされた。陽子はゆっくりと立ち上がり、ドアを開けた。


「桐生。」


彼が立っていた。桐生はいつものように無表情で、少し目を伏せた。


「陽子、話を……」


その言葉が、陽子の中に強い感情を呼び覚ました。桐生は、何かを隠している。そして、そのことを今、明かすべき時が来たのだ。

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