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第17話:「告発の時」

陽子は、信田の死に関わる闇がどれほど深いのかを知りつつ、次第にその真実に近づいている感覚を持っていた。彼女は少しずつ手に入れた証拠を整理し、流星グループの圧力がどれほどのものだったのかを理解し始めていた。信田が何を知っていたのか、そしてその死が業界のどれほど深い部分に触れた結果だったのか、陽子はその全容を明らかにする決意を固めていた。


だが、すべての証拠を揃えたわけではない。陽子は、信田の死の背後にあるさらなる真実を暴くために、次なる一手を考えていた。その中で、何か新しい動きが起きた。それは、先輩芸人の矢口正志が突然、末期がんを公表したことだった。


「矢口が……末期がん?」


陽子は、突然のニュースに驚きとともに深い疑念を抱いた。矢口は、信田が死ぬ前に関わっていた人物であり、彼が信田を脅したことが録音されていた。その矢口が今、がんを告白し、しかもその告白の中で何かを告発しようとしているのではないか。陽子はその報道を見た瞬間、すぐに動かなければならないという直感が働いた。


「矢口が公表したことで、何か動きがあるかもしれない。」


陽子はその日、すぐに記者の田辺に連絡を取った。田辺はすぐに返答し、矢口が公表した内容について詳細な情報を集めていた。


「矢口は、がんで余命がわずかだと告白しました。そして、信田の死に関わることを暴露するつもりだと話しています。彼が最後に何を語るのか、非常に注目されています。」


「暴露する? それが本当なら、信田の死の全容が明らかになるかもしれない。」


陽子はその一言に希望を感じた。矢口が今、命を懸けて語ろうとしているなら、それは信田の死に関する決定的な証言となるだろう。しかし、陽子は同時に矢口がその証言を本当にするのか、またそれが信田の死にどれほどの影響を与えるのかを慎重に見極める必要があった。


「矢口が今、暴露する内容を聞く前に、彼がどれだけ信田に関わっていたのかを掘り下げるべきだ。」


陽子はその決意を固め、矢口が公表した声明をじっくりと読んだ。そこで明かされた事実は、陽子にとって衝撃的だった。矢口は、信田の死に関して、深く関与していたのだ。その関与は、信田が暴露しようとした闇営業にまで及び、さらにそれが流星グループの金銭的な流れに繋がっていたことを示唆していた。


「信田が最後に知っていたこと、それを暴露するために、矢口は自らを犠牲にしようとしているのか。」


陽子はその公表に強く引き寄せられた。矢口が語ろうとしていることには、信田の死の真実を明かすための重要な手がかりがあるはずだ。陽子はすぐに、矢口に接触しようと考えた。


その日、陽子は矢口の元に向かうことを決めた。彼が入院している病院に足を運び、直接会うことを決意したのだ。陽子は、その決断に込めた思いを胸に、病院へと向かった。


病院に到着した陽子は、矢口が入院している病室を訪れた。彼は、かなり弱っている様子だったが、それでも陽子に向かって力強い眼差しを送ってきた。


「君が来ると思ったよ。」


矢口はその一言を言うと、陽子を招き入れた。陽子は少し躊躇しながらも、その言葉に引き寄せられるように、矢口の前に座った。


「矢口さん、あなたが言った通り、信田の死に関わっていたことは本当だったのですね。」


陽子は静かに言った。矢口はその言葉を聞いて、少しだけ顔をゆがめたが、すぐに深い息をついて言った。


「信田の死は、俺が間接的に関わっている。あの時、彼を脅したこともあった。でも、俺が言ったのは、彼にとって最良の選択だと思ったからだ。でも、それがどれだけ信田を追い詰めたのか、今思えば…」


矢口は言葉を詰まらせた。陽子はその様子を見て、少しだけ同情の気持ちが湧いた。矢口もまた、信田の死に深く関わっていたことを悔いているようだった。


「でも、信田が死ぬ直前、俺に言ったんだ。『この業界は腐っている。これが最後のチャンスだ』って。それが、彼の最後の言葉だった。」


矢口の声はかすれていたが、その言葉には深い悲しみと後悔が込められていた。


「信田が何を知っていたのか、それを暴露しようとしていたんですね?」


陽子は少し声を震わせながら尋ねた。矢口は静かに頷いた。


「俺は、信田が自分の命を賭けてでも暴露しようとしたことを知っていた。だから、彼を止めるべきだと思って、脅したんだ。でも、それが間違っていた。」


矢口は目を閉じ、深いため息をついた。


「でも、今さら遅い。信田が死んでしまった。俺があの時、何もできなかったからだ。」


その言葉に、陽子は強い怒りを覚えた。矢口が信田を脅したことは、もはや言い訳にはならない。信田が命を絶つ原因となったのは、流星グループの圧力と、矢口の無力さによるものだった。


「でも、今なら何かできるかもしれない。」


陽子はその一言を言い放った。矢口は驚いた表情を浮かべたが、陽子はその目を見つめ続けた。


「信田の死を無駄にしない。あなたの告白が、全てを暴く鍵になる。あなたが今、暴露しようとしていること。それが、信田の無念を晴らすための最も重要な証拠になる。」


矢口はしばらく黙っていたが、やがて重い口を開いた。


「信田が最後に見たもの、それがこの業界を変えることになるのかもしれないな。」


陽子はその言葉を胸に刻み、再び信田の死の真実を暴く決意を固めた。矢口が語ろうとしていること、それが信田の無念を晴らすための一歩になることを確信した。



お読みいただきありがとうございます。


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