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第14話:「死者が語る」

陽子は桐生から聞かされた信田の死に関する「真実」に衝撃を受けた。信田が流星グループの圧力に屈し、最後に自ら命を絶ったこと。それを知った陽子の胸中には、怒りと悲しみが渦巻いていた。信田が自分で選んだわけではなく、業界の腐敗と闇に巻き込まれた結果の死だったということを理解した瞬間、彼女は決して許すまいと誓った。


だが、その真実を暴くためには、さらに多くの証拠が必要だということも痛感していた。信田一人の命が犠牲になっただけではない。この業界では、同じような死が繰り返されている。陽子は次の一手を考えながら、信田の死の裏に隠された真実を追い続ける決意を固めた。


その時、記者の田辺が再び陽子に接触してきた。


「陽子さん、少し話をさせてください。」


田辺はいつも冷静で冷徹な印象を与えるが、その目には何か決意が宿っているように感じた。陽子は彼の誘いに応じ、指定された喫茶店で会うことにした。


「どうしたの?」


陽子は田辺に会うと、最初にそう尋ねた。田辺は少し静かな声で答えた。


「実は、10年前に自殺した芸人の遺族と接触しました。その遺族が、信田さんの死に非常に強い関心を持っているんです。」


その言葉を聞いた陽子は、興味を持った。


「10年前の芸人? その遺族が信田の死と関係があるの?」


田辺は静かに頷いた。


「その遺族は、信田さんが死んだ方法と、10年前に自殺した芸人の死が非常に似ていると言っていました。手口がまるで同じだと。」


陽子は驚いた。もしその遺族が言う通り、信田の死が10年前の自殺と似ているのなら、その事実は信田の死の真相を明るみに出すための重要な手がかりになるかもしれない。


「その遺族と会いたい。詳しく話を聞きたい。」


陽子はそのまま決意を固めた。田辺は少し驚いた表情を見せたが、すぐに手帳を開き、会う日時と場所を伝えてきた。


「遺族は都内の郊外に住んでいる。今週末に会える予定です。そこで話を聞いてみてください。」


その週末、陽子は田辺と共に遺族の家を訪れた。場所は都心から少し離れた静かな住宅街の中にあった。古びた一軒家の玄関先で、陽子はその遺族と初めて対面した。年齢は40代後半から50代前半くらいで、どこか落ち着いた雰囲気の男性だった。彼は陽子を見て、一瞬目を細めた後、静かに挨拶をした。


「こんにちは、私は松尾健一と申します。お会いできて光栄です。」


陽子はその名前に心当たりがあった。松尾健一――10年前、闇営業の問題が取り沙汰され、突然自殺した芸人の名前だった。彼の死は、当時芸能界で大きな波紋を呼んだ。


「松尾さん、信田の死について、どうして関心をお持ちだったのですか?」


陽子は尋ねた。松尾は少しだけ黙ってから、ゆっくりと話し始めた。


「私の兄、松尾雅彦も芸人でした。10年前、流星グループが関わっていた闇営業に巻き込まれ、突然自殺してしまった。兄の死を知った時、私はすぐに疑問を抱きました。彼が本当に自ら命を絶ったのか、そしてその死に何か隠されたものがあるのではないかと。」


松尾は目を伏せ、過去の痛みを思い出しているようだった。その後、彼は顔を上げ、陽子に向き直った。


「そして、信田さんが死んだ時、私はその手口に驚きました。全く同じだったんです。自殺という形で、業界の闇から逃れられないまま死に追いやられた。私の兄が死んだ理由と、信田さんの死の理由が、同じように感じたんです。」


その言葉に、陽子は言葉を失った。松尾の兄、雅彦が10年前に亡くなった時、確かに多くの人々はその死を「自殺」として片付けていた。しかし、その背後に隠されたものを考えると、信田の死と同じように業界の闇が絡んでいる可能性は高い。


「兄が亡くなった時、私も一緒に調査を始めました。しかし、どれだけ調べても、信じられないことばかりが出てきました。兄は、流星グループと何らかの関係があったことを知っていたんです。」


松尾は、少しだけ声を震わせながら続けた。


「そして、信田さんが死ぬ前に、何か大きな圧力を感じていたのではないかと思うんです。私も信田さんの死の報道を見て、ただの自殺ではないと感じました。彼が死ぬまでに、何かを知りすぎたのではないかと。」


その言葉に、陽子は心の中で確信を得た。松尾の兄、雅彦の死と信田の死には、明らかに共通点がある。どちらも業界の闇に巻き込まれ、最後には命を絶つという結果になった。そして、それが偶然ではなく、流星グループが関与している可能性が非常に高いということだ。


「松尾さん、あなたが言う通り、信田の死にも何かが隠されている。私もその真実を暴くために動いています。あなたの兄が関わった闇営業のことも調べています。」


陽子は強い決意を持って言った。松尾は静かに頷いた。


「もし、信田さんの死が私の兄の死と同じだとすれば、それを知ってしまった者は、必ず消されるでしょう。でも、私はそれでも構いません。真実を知りたいだけです。」


松尾の言葉に、陽子は胸が熱くなった。彼の兄が命をかけてまで守りたかった真実。信田もまた、同じように死を選ばざるを得なかったのだろうか。彼の死の真相を知るために、陽子はその証拠を集める決意を新たにした。


「松尾さん、あなたの兄の死も調べてみます。信田の死に関連しているかもしれません。」


その言葉に、松尾は静かに頷いた。


「ありがとうございます。私も信田さんの死を悼んでいます。もし、あなたが真実を暴いてくれるなら、私は全力で協力します。」


陽子は松尾に感謝し、彼の家を後にした。信田の死と10年前の自殺事件。その二つの死は、どこかで繋がっている。陽子はその真実に近づくために、さらに深く調査を進める決意を固めた

お読みいただきありがとうございます。


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