97話 Plazma
光琅がマスター『消滅者・オーガウルフ』を表にする。続いて、尚無鏡がマスター『竜滅化・機戦姫アリストス』を表にする。コイントスの結果、光琅の先攻で始まった。
「それじゃあオレの先行、ドロー。手札1枚を捨ててエネルギーを2つチャージ。『漆黒ギーズ』を前衛にコール。そしてエリアシステム[場に設置して使用するシステムカード]『ロストコスモ・レフトポイント』。その効果により、マスターの破損率を20%修復。破損率が0%を下回る場合、代わりに数値を累積できるシールドを展開する」
【オーガウルフの破損率・0%/シールド・20%】
「まだまだ行くよ、エリアシステム『ロストコスモ・ライトポイント』を設置。その効果により、1ドロー。さらにシステム発動、『鬼喰らい』。ギーズを破壊し、エネルギー+1、破損率、いやシールドを10%回復、そして2ドロー……破壊されたギーズの効果で、エネルギー+2、シールドを10%回復だ」
【オーガウルフの破損率・0%/シールド・20%→40%】
「すごい回復してくるね……」
「一年前の環境デッキだからね、念には念というわけさ。エネルギーを2つ払い、ウェポンシステム[マスターに装備して効果を発揮するシステムカード]『鬼狼餓爪』を装備……そしてエンドフェイズ─────」
「え?前衛に機体とか出さないの?」
「ああ、これでいいんだよ────シールドを20%破損させ、エリアシステム『ロストコスモ・ペンデュラム』を発動」
【オーガウルフの破損率・0%/シールド・40%→20%】
3枚目のエリアシステムカードを設置して、彼はこちらに微笑みを向ける。
「……これでオレのターンは終了だ。この時、鬼狼餓爪の効果により、マスターの破損率を50%回復させるけど、増えるのはシールドの数値だね」
【オーガウルフの破損率・0%/シールド・20%→70%】
彼の盤面はとてもキラキラしている。どれもレアリティが高い。
最初のターンで光琅のシールドは70%。つまりこれを突破しないとマスターにダメージを与えられない。しかし、こちらは現環境のデッキ。引きが良ければこのターンで倒せるはず。そう信じて、
「それじゃあ、私のターン──────」
尚無鏡が自分のターンを宣言した瞬間、光琅は罠に掛かった小動物を見るように笑みを浮かべた。
「ターン開始時、ロストコスモ・ペンデュラムの効果により、阿鏡のマスターの破損率を65%にする」
「な、なん────!?」
【アリストスの破損率・0%→65%】
「さらに、ライトポイントの効果により君は破損率を修復できず、レフトポイントの効果により君の場のカード全てのパワーを-2500する」
「そんな……でも、まだ負けたわけじゃない。ドロー、1枚をセメタリー[カードを捨てる場所]に捨ててエネルギー2つチャージ。『光機・エアロソウル』を前衛にコール。効果により、デッキから『竜』と名の付くウェポン1枚を手札に加える。続けて『剣竜機・Xカリバー』を後衛にコール」
「………これは」
「エネルギーを1払い、マスター『竜滅化・機戦姫アリストス』を前衛にコールする」
竜と一体化した少女が描かれている煌びやかなカードが、もう片方の前衛エリアに顕現する。
「まさか1ターン目にマスターをコールするとはね。コールされたマスターが破壊されれば、破損率の数値に関係なくゲームに敗北するというのに────ということは、狙いはワンターンキルか」
「さらに、アリストスのサモンオーダー[マスターが前衛に出た際に得られたり、発動したりする能力]を発動、デッキからカード1枚を手札に加え、シャッフル後に1枚ドロー。そしてアリストスにXカリバーを装備合体」
後衛のXカリバーを前衛のアリストスの下に重ねる。これにより、アリストスは更なる効果を得る。
「『歪曲機・フォトンα』を後衛にコールして、さらにエネルギーを2払ってウェポン『竜装・ドラゴニックセイバー』をアリストスに装備。システム発動、『アーマード・リペア』。セメタリーの1枚をアリストスに下に重ね、エネルギーを+1。これでバトルフェイズに入る」
「存分に来なよ」
「それじゃあ遠慮なく…フォトンαの効果で、手札1枚をアリストスの下に重ね、破損率10%修復、1ドローする」
「だけど、修復はできない」
「承知の上だよ。アリストスの効果で、私の場のカード全ては効果でタップと破壊はされず、パワー+10000、撃破値[相手の破損率とシールドにダメージを与える数値]+20%される。さらに、Xカリバーの効果によって今のアリストスの撃破値は50%──────アリストスで、光琅のマスターにアタック!」
尚無鏡はアリストスのカードをタップして攻撃を宣言した。されどすかさず、光琅は手札のカードを使った。
「残念だったね……シールドを20%破損させて、システム『アンチブレイク』を発動。フォトンα、アリストス、ウェポンのドラゴニックセイバーの撃破値を-30%だ」
【オーガウルフの破損率・0%/シールド・70%→50%】
光琅の発動したシステムカードによって撃破値が減少してしまったが、その攻撃は止まらない。故にオーガウルフを守るシールドの値を減少させる。
【オーガウルフの破損率・0%/シールド・50%→30%】
「アリストスの2回攻撃!」
【オーガウルフの破損率・0%/シールド・30%→10%】
「エアロソウルもマスターに攻撃」
エアロソウルは唯一システムカードの効果を受けていない。よって撃破値はそのまま入る。
【オーガウルフの破損率・0%→20%/シールド・10%→0%・消滅】
「フォトンαもアタック」
本来であれば、後衛にコールされた機体はマスターには攻撃することができない。だがフォトンαはそのルールを否定する能力を持っている。されど、
「エネルギーを1使い、システムカード『フェイトチェーン』。このターン中、四回目以降の攻撃はオーガウルフには届かない」
「それなら────っ」
そう呟き、尚無鏡はドラゴニックセイバーをタップさせる。光琅はそれに対し、
「攻撃は届かないと言ったはずだけど?」
「ドラゴニックセイバーは、バトル終了時に1枚ドローして10%修復、さらに相手のマスターに10%のダメージを与える効果がある。修復はできないけど、効果ダメージは受けてもらうよ」
【オーガウルフの破損率・20%→30%】
「流石だね。でも、その程度じゃ、オレには勝てないよ?」
「もちろん────だからもう一度!」
ドラゴニックセイバーをアンタップさせて、もう一度タップする。これもまた効果ダメージ。つまり先ほど同様に通る。
「くっ……」
【オーガウルフの破損率・30%→40%】
「システム『エンジェル・ギフト』発動。デッキの上3枚から1枚を手札に、残りをセメタリーに置いてエネルギーを2つ獲得する。さらに発動『シフト・アゲイン』。ドラゴニックセイバーをアンタップさせ、再攻撃!」
再び、効果ダメージが光琅の使役するマスターを襲う。
【オーガウルフの破損率・40%→50%】
「光琅────私の勝ちだね。エンドフェイズ!」
「まさか……っ!」
「3つのエネルギーを払い、発動!」
このゲームには、マスターが場に出ている時にしか発動できないシステムカードが存在する。それは強力な効果を有し、相手に大ダメージを与えることができる。故に必殺。
「『シューティング・フルリベレイト・ストリーム』!」
勝利を確信した声と共に、手札から勢いよく必殺のカードが発動される。だがそれと同時、光琅もまた手札のカードを素早く使用する。
「────エネルギーを1つ支払い発動、『虹の罰』。鬼狼餓爪を破壊し、破損率を20%修復、そして1ドロー」
【オーガウルフの破損率・50%→30%】
カード効果によりオーガウルが修復された次の瞬間、発動された必殺の一撃が襲い掛かる。
【オーガウルフの破損率・30%→80%】
『シューティング・フルリベレイト・ストリーム』は、いかなる場合であってもダメージを無効化されることの無いカード。だがそれを受けて尚、光琅のマスターは健在だった。
「そんな………修復手段を残していたなんて…」
「言ったでしょ?念には念だって」
「…………私のターンは、これで終わり」
「それじゃあオレのターンだ。ドロー、2ターン目だから、手札を1枚捨ててエネルギー1つ獲得、そしてもう1枚ドロー……このままバトルフェイズだ」
「機体をコールしない……?」
「いや、オレの機体はこれから現れる─────コール、『破壊者・オーガウルフ』」
光琅の前衛エリアに突如としてマスターと名の似た機体がコールされた。
「オレのバトルフェイズ開始時、場に機体がなく、『ロストコスモ』と名の付くエリアシステムが3枚以上あるなら、セメタリーの『破壊者・オーガウルフ』はノーコストでコールできるんだ」
「だからさっき機体をコールしなかったんだ」
「そうだよ。さらに、この効果でコールした場合、このカードの攻撃は無効化されない」
「でも、思う様にはさせないよ。アリストスの効果発動。下に重ねているカードが2枚以上ある時、それを全てセメタリーに送ることで、このカードをマスターゾーンに戻すことができる。これで私にダメージを与えるにはまず前衛の機体を破壊しないといけなくなったね」
「確かにそうだ……だが、効果ダメージならそれも無意味だ──────エンドフェイズ」
「えっ!?」
場にあったあるカードを手に取り、自身の顔の前に持ってくる。
「セメタリーからコールされたオーガウルフは、エンドフェイズにこのカード以外の『オーガウルフ』と名の付くマスターをこの上に重ねてコールすることができる。エネルギーを3使い、マスターをコール、『消滅者・オーガウルフ』」
この状況で、彼のマスターがフィールド上に顕現した。
「オーガウルフのサモンオーダーを発動。このカード以外のカードを全て破壊し、破壊した枚数分このカードの撃破値をX0%アップさせる。さらに、この効果がエンドフェイズで発動した場合、このカードも破壊対象となり、本来アップする撃破値分の効果ダメージ+10%を相手のマスターに与える─────ありがとう、楽しいゲームだったよ」
破壊した枚数は全部で6枚。故にオーガウルフの撃破値は60%。そこに10%が足されて効果ダメージは70%。その数値がアリストスを襲う。
【アリストスの破損率・65%→100%】
負けてしまった。
しかし、この敗北の仕方に妙な感覚が訪れる。巨大な狼への必殺の一撃を、七色の光によって阻まれる。その後の自爆も………。
光琅と出会った後、度々体を駆けるこの懐かしさは一体────────




