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仙華頌籟 -A fateful reunion beyond a millennium-  作者: 織葉りんご
第一部 第二章 約束の蒼炎
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39話 変装潜入、緊張の集会

 シャン無鏡ウージン陳湛チェンジャンウェイイーファンの三人は、石板を所持している組織が陣取っている場所まで来た。そこは野営地となっており、簡易的な施設が並んでいる。草木に隠れて様子を見ながら小声で話す。


「ここが、石板を持っている組織のいる…」

「ええ。かなり広く土地を陣取っているわ。二人とも、ちゃんと着けてるわよね?」

「もちろんです」

「もちろん!」

 シャン無鏡ウージンは答えた後、すぐにウェイイーファンに質問をする。


「それでどこから潜入するの?人気が居ない場所を探す?」

「いいえ、この正面口から行くわよ」

「ええ!?だ、大丈夫なの?」

「寧ろコソコソしてるところを見られる方がやばいのよ。ここは堂々と真正面から突破するわよ──────!」


 そう言い、ウェイイーファンは二人の腕を掴んで遠回りをし、道なりに沿って野営地へ向かう。

 野営地に入って、石板の在処を探らないと。と考えていると、隣を歩いている陳湛チェンジャンが私の耳元で呟いた。


「組織の雰囲気的に仙華様のような元気な人は少し不自然かもしれません。会話はできるだけ控えて、ここは私達にお任せください」

「────ありがとね」


 そうしている内に野営地に近づいていく。緊張が迫る。バレなければいいけれど……。

 木でできた門を潜る。目前には組織の連中が歩いているのが確認できる。刹那。


「おい、待て」

 と左後ろから声がした。振り返って見てみると、どうやらここの門番らしい。軽装ではあるがずっしりとした長柄武器を立てている。その門番はじっと私達を見ている。目は上から下に、そして再び上に戻って。するとウェイイーファンに向かって門番が口を開く。


「お前、どこかで見た格好だな…」

 すると、後ろからやってきた男が割って入ってくる。

「それに、ここに居る連中より派手な格好だな」


 冷汗が背筋を伝う。心拍数が上がり、唾を飲みこむ。沈黙がしばし続いた後、門番が言葉を放つ。


「気のせいかもな」

 割って入った男も、

「こういう奴も居たっけか。通っていいぞ」

「おい!それを言うのは俺の仕事だぞ!」

 と言い合っていた最中、野営地の奥から叫び声が聞こえてきた。


「おーい!ライ様が集まれってよー!早くしろ!」

 その声を聴いて門番と男は焦り交じりにこちらに向かって、

「おい!さっさとこっちに来い!」

 と言ってきた。


 走っていく彼の背中を追うように、私たち三人も駆け出した。ライ?誰のことだろうか。男の慌てようを見るに、もしかしたら組織の長なのか?

 追っていると集まりが見えてくる。ざっと数十人はここにいるだろう。男の後に続き、後ろの方で止まった。

 次の瞬間、前にある施設の扉が開き、中から髭を伸ばした大男が出てきた。彼がライか。そして彼の姿が見えた瞬間、ここに集まっている者が一斉に歓声を上げた。その声量は凄まじく、空間が震える程だった。ライは大きな手でもう片方の手を叩き、空間を沈黙へと変貌させた。


「よく聞け貴様等!短日衛団の連中が、俺達が石板を持っていることに感づいた可能性が高い!いいか!誰であろうと俺の邪魔をする者は全て殺してしまえ!」


 そして再び歓声が巻き起こる。


「さらに!奴等は外からの客人を招いたそうだ!見つけ次第ぶち殺せ!」

 こいつ結構情報を知っている!しかも、この集団の中でこういう服装をしている者は我々しかいない。私は陳湛チェンジャンウェイイーファンに耳打ちをする。


「ここはちょっと身を隠した方がいいんじゃ…?」

「でも下手に動くとかえって危ないですよ」

「そうよ!ここはじっと──────」


 瞬刻、こちらに強い視線を感じた。この気迫は間違いない、前に立っているあのライだ。


「おい!後ろの女ども!」


 まずい!目立ってしまう!


「その派手な格好─────よく見ると衛団の将軍にそっくりだな。ん?なるほど!そういうことか!」


 もうダメだ、お終いだ…!


「似た格好をして、奴等から石板の情報を聞き出そうって魂胆だな!?関心関心!貴様等も、そんな薄汚い格好ばかりしてないで、もっと女どもを見習え!集会は以上、全員持ち場へ戻れ!」


 そう言って、ライは施設へと戻って行った。開いた口がふさがらないとはこのことか。まさかバレないとは……。


「ど、どうにかなりましたね……」

「ええ、バカで助かったわ。それより、集会は終わったし、石板の在処を見つけ出さないと。いつまでも心臓バクバクじゃいられないわ!」


 辺りを見渡す。野営地には人が多いけれど、多くの人間に石板の在処を聞いたら怪しまれてしまう。聞く人物は厳選しなければならない。すると陳湛チェンジャンが、

「あそこの老爺爺ごろうじんに聞いてみましょう」

 と遠くを指差した。この組織にはあんな年老いた人が居るなんて。三人は彼に近づいて声を掛ける。


「いきなりすみません。私達が持ってる石板について何か知ってますか?」

「石板…?何でそんなこと聞くんじゃ?まぁ丁度、倉庫番を変わった奴等が近くに居るけど、そいつから聞き出そうとするんでないぞ!?これは極秘情報、バレたらライ様にしばかれるからな」

「そんなことしませんよ~」


 三人は目を合わせ、心の中で頷いた。老爺爺ごろうじんに手を振って、その場から離れて小さな声で話を始める。


「これはチャンス、そして時間勝負よ。いつその交代した倉庫番が居なくなるかわからないから」

「そうですね」

「それじゃあ、手分けしてその倉庫番を探す?」

 シャン無鏡ウージンの言葉にウェイイーファンは反対した。

「それじゃ逆に怪しまれるかもしれないわ。少し効率が悪いけど三人で動いた方が良さそうね」


 二人はそれに賛同して、その倉庫番を探すことにした。今は午前中。ずっと倉庫番をしていたと仮定すると、おそらくその倉庫番は食事をしに行ったはずだとシャン無鏡ウージン陳湛チェンジャンに言った。それを聞いていたウェイイーファンは「集会に向かう最中に食事をする場所を見た気がする」と言って、三人はその場所に向かってみることにした。

 ここを曲がればその場所に着く。その時だった。


「ああ~、マジで疲れた~」


 渋い声が曲がり角から聞こえてきたので、曲がろうとする体を止めて耳を澄ませる。


「倉庫番大変すぎだろ…12時間労働だぜ?」

「それは残念だったな。俺なんて裏口の見張りだからめちゃくちゃ寝てたぜ」


 裏口──────。

 倉庫へ入る手段は一つだけじゃなかったのか。


「はぁ!?裏口なんてあったのか!?一体どこに…」

「野営地を囲ってる柵の傍に川がある場所があるだろ?んでその先が少し滝になってんだけどよ、そこを潜ってみ?」

「まじかよ!?何であのオヤジは教えてくれなかったんだ?」

「単に信用されて無かったんじゃねーの?」

「うるせぇ!」


 川の先の滝の奥。

「さっそく向かいましょう」

「うん!」


 あまり急ぐと怪しまれてしまうので、バレないように急ぎ足で野営地から出る。潜入した時と同じように、しばらく道なりに進んでから脇の茂みに外れる。


「本当にバカで助かったわね。川はこの先ずっと真っ直ぐよ!」

「でも、倉庫番が変わったってことは、あそこには別の倉庫番が居るってことだよね?」

「そこなのよねぇ。その倉庫番があいつみたいにだらけてるとは限らないからねぇ」


 彼のように怠けた警備をしていてくれと願いながら木々を抜けて川の傍まで来た。想像していたより結構大きな川で少し驚いた。先を見ると確かに途切れており、覗くと滝が出来ていた。


「周りには誰も居ないわ。念のため私が滝の中を覗いて来るからちょっと待ってて!」


 ウェイイーファンはそう言って飛び降りて行った。そこまで高くないし着地の心配はしなくても大丈夫だろう。

 少し時間が経ってウェイイーファンがこちらに戻ってきた。


「倉庫の裏口は問題ないわ。行きましょう」


 その声の下、三人は下りて滝の中に入った。本当に滝の奥に空間が、そしてその先には扉、そしてその傍に──────


「ん?」

「これは、一体…?」


 倒れている男の人が確認できる。問題ないわ、と言っていたがまさか…

「とにかく、問題ないわ」


 入ってからが心配だなぁと思う尚無鏡シャンウージンであった。

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