表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【史上最大のしっぽ取り開始】マスターリング ~復讐の操獣士~  作者: 高村孔
第一章 復讐の操獣士と黒い翼のピュセル

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/362

#62 TS主人公現る

「すげー、本当に妖精だ。ファンタジーだ。ちっこいなー」


確かにファンタジー世界の定番を具現化したようなドリアードをぼくの肩に認め、そいつはさっそく手を伸ばしてちょっかいを出す。ドリアードが見えているということは、こいつもそれなりに特別な存在だということになる。


「精霊よ。ドリアード様と呼びなさい」


肩から飛び離れてそいつの手から逃れつつ、ドリーはべえっと舌を出す。可愛いでしかない。


思わぬ再会を果たしたそいつとぼくは、互いに警戒を解き、とりあえずの安全を確認して話し始めたのだった。


ドリーの反応を受けて快活に笑う明るさも、元の世界にいた風間蒼依その人の資質に違いなかった。口を横に大きく開き、白い歯をむき出しにする笑い方にも見覚えがある。しかし。


「あの、」


「どこに行ってもお前の噂を聞くよ、勇者も倒せなかったドラゴンを退けた影の英雄って。清吾はいい面の皮だな」


自分の思いついた順に言葉を並べる癖も変わっていないようだ。


そして、()()()()()()()()()()()()()()()()容姿で、()()()()()変わっていない大きな瞳をリッカに向ける。


「で、君が使い魔――スレイヴって言うんだっけ?」


「リッカだ」


変わり果てた姿の友にどういう口調で話せばいいのか定められないまま、とりあえず紹介だけはする。


野生動物の警戒心が残っているのか、人見知り気味なリッカはぼくの後ろに隠れてしまった。


「初めまして、オレはアオイ。ご主人様の友達だよ。さっきは悪かったな、強かったぞお前」


アオイ――確かにその名前だけならば、今の姿にも違和感がない。疑問符ばかりが脳内を飛び交う状況で、しれっと友達扱いされたことは嬉しかったのだが。


しかし、幼女の姿をしたリッカに目線を合わせるためにかがみ込んだとき、()()()()()()()()()()()()()()()()()()が揺れ、目の毒でしかなかった。一体全体、何がどうしてそうなっているのか、そろそろ問わずにはいられない。


「風間蒼依だよな、お前。……なんでそうなった?」


「ん? ああ」


ぼくの視線を追って、アオイ――本人の名乗りに合わせ、とりあえずそう呼ぶしかない――は、自分の体を見下ろす。どことなく中東の民族衣装を思わせる服で、露出が多いながら、ところどころあしらわれたレース素材の意匠が涼やかで上品だ。どこかで、見覚えがある。


しかし、その服も、そして服に包まれた褐色の体も、もはや男のものではなかった。細身で引き締まった体躯ながら、()()()()()主張する部分は大きく、色んな意味で目のやり場に困る。


「そういや、お前こそ一目でよくオレだと分かったな」


「いや、名前出るだろ、ゲームっぽい表示」


実際はろくに確認していなかったのだが、何となく言い訳してしまう。


「そういやそうか」


そして()()は、元の姿よりも一オクターブ高い声で、ころころと笑うのだ。


「ラノベだとあれだな、異世界転生したら親友が女になっていた件、ってところか?」


「唐突に面白そうな別作品をねじ込んでくるなよ、主人公気質め」


あと、細かいことを言えば、ぼくの場合は転生ではなく転移だ。


「そんなに褒めるなよう」


口を横に開いて笑う癖はそのままだったが、褐色の肌には白い歯が余計に映えていた。


とても理解が追いつかない状況ながら、親友呼ばわりされて嬉しかったのは本人には内緒である。


そして、決してついでで済ませられることではないが、その姿には、夢で見たサウジーネ姫の面影があった。彼女がぼくと同い年のころは、こういう美少女だったのではないか、と言う程度の。


ついでに美少女ではあるが元は男なわけで、それよりもどうやってここまでたどり着いたとか、聞くべきこともあり、何からどう情報を整理していいのか、皆目見当もつかなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ