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【魔王デーヴァプッタ編更新中】マスターリング ~復讐の操獣士~  作者: 高村孔
第三章 誰がISSを墜としたか

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#366 封印術士ネリスの献身4

――前回までのあらすじ!


――…………。


――最強ハンサムパパの思い出の場所をついに訪れ、自らの出生の秘密に触れたノアだったが、性悪魔族ゴモリーの奸計によって封印の杖に閉じ込められてしまう! 図らずもゴモリーの口から超絶最強ハンサムパパの危機を知らされたノアは、居合わせた眼鏡萌えママの魔導騎をともに駆り、超絶最高最強ハンサムパパの元へと急ぐが、魔導騎は眼鏡萌えキュートママの膨大な魔力を受け止めきれず暴走してしまう! 果たして二人は超絶絶対最高最強ハンサムパパの危機に間に合うのか!?


 情報量が多すぎて、逆に情報量のまったくないリュート(推定)に対する修飾語が、小学生男子が考えた必殺技みたいに無計画に増えていることだけが印象に残った。超ウルトラスーパーなんとかビーム、みたいな。勢いだけで喋り倒せるメンタルの強さがうらやましい。


――……登場人物の私すら知らない情報だらけのまとめありがとう。ツッコミたいところばかりだけど、とりあえずあなた自分で勝手に封印されてたよね?


――……間に合う、のか!?


――勢いでごり押される会話パターン苦手だなあ……。


 私視点ではここで初めて名前が判明したゴモリーという魔族(ということも初見では分からなかった)から逃げていたノアが、とっさに隠れる先として選んだのが、よりによって私の封印の杖だった。私がすごいわけではないので自慢してしまうが、異世界転移で女神とやらから授かったチートアイテム、すでに魔将軍が持っていた魔王の遺骸なるパワーアイテムを封印したという実績がある。

 もっとも、その時はアニマの扱いに長けたリュートが取り出してしまったので問題なかったのだが、私の技量では封印するだけで取り出すということができない。技量を磨くことも王国騎士団に入った目的の一つだったのだが、これまで騎兵隊に慣れるのに精一杯だった――という言い訳のせいで進捗が芳しくないのは反省材料だ。

 ただ、ノアがどうやっているのかは分からないが、リュートがスレイヴ相手にやっているという念話と似たコミュニケーションが成立しているので、こうして会話などしつつ、横転した魔導騎の具合を確かめていた。いかにもオートバイ然とした姿から近未来SF風の流線形のボディに変わり果てた姿は、ノアの語ったあらすじ(?)のとおり、その膨大な魔力を注入されて変形したものだった――。



――あっかんべー。


――それ、口で言う人初めて見たなー。


 ゴモリーの去った方を見ているのか、封印の杖の中でどうやって知覚しているのかと、いちいちツッコミどころの多いノアに対して、こちらも厳密には口で発声してはいないという綻びのある返しをしながら、停車していた魔導騎にまたがった。


――魔力を込めるって、どうやって?


――こう、ゆんゆんゆんって、念を凝らす感じ? 美味しくなーれ、萌え萌えキュンって。


――食べるんかい。って、どこでそういう知識を得たの。


――えーとだから、もにょもにょとか、ごにょごにょとか、何かいい感じにやって。


――駄目だこの人感覚派だ、教えるのが苦手なタイプだ。デザイン系のリテイク出されたくない相手でもある。


――……この話し方に慣れてない? そういう体を装って言いたいように言ってる?


――萌え萌えキュン。


――本当に言った。


 言ってないけどね、とこれは胸中でツッコみつつ、だいぶノアとのコミュニケーションにも慣れたところで、彼女の言うとおりに念を凝らしてみれば、体の中から何かが抜け落ちる虚脱感とともに、魔導騎が光り輝き、瞬時に変形した。


――すごーい、一発でできた! パパが大好きそうなヤツ。


――……これ、隊の備品なんだけど何て報告すればいいんだろう……。


 確かにリュート(推定)が好きそうな造形だな、と思いつつ、試しにスロットルを回してみた。私がしたのは本当にそれだけだったのだが。


――あ、出力が上がっただけで制動とか制御系は元のままだから気をつけて――えええええぇぇっ!?


――それ、早く言ってえええええぇぇ――っ!



 ……一気に出力を解放した魔導騎は制御を失って、爆音を轟かせながら空高く舞い上がった。空中で何度もきりもみ回転しながらどうにか立て直そうとしたが甲斐なく、あっという間に砂漠の空を駆け抜けて不時着した、という次第だった。


 その後、どうにか起こした魔導騎のなれの果てを今度は慎重に起動し、超高速ながらどうにか安定して走らせることに成功した。そもそもスロットルを回さず、ノアに教わったように魔力を込めるだけで走り出したのだ。


――というわけで、竜宮城で約束したように、パパは私に名前を付けてくれたんだよ。すごいよね、時間を遡ったせいで順序が逆になったのに、パパは初対面の私に約束を果たしてくれたの。


――……ああ、そうなるのね。リュート視点ではシンシアの店で会ったのが初対面で、ノア視点では黒龍? として対峙したのが最初で。


――その辺は覚えてないんだよねえ。サヨリちゃんたちに後から聞いただけで。目が覚めたら竜宮城のベッドの中で素っ裸で、パパと一緒に寝てたの。だから私的には、そのとき自分が生まれた感覚。


――それだけ聞くと相当いかがわしい展開だね……。


 何故か脳内にドヤ顔をした赤ちゃんのネットミームが思い浮かぶ。で、俺が生まれたって訳って言ってるヤツ。


 道中、例の如く立て板に水を流すようにノアが話し始めた内容は彼女の来し方にまつわるもので、彼女の覚えていない伝え聞きから始まって、最初は三つ首の黒い巨龍で、何者かに調教の呪いを受けて古代日本に送り込まれ、そこから各時代を渡りながらリュートと戦い続け、壇ノ浦の戦いに巻き込まれたところで安徳天皇と一緒に海底に沈んだ。リュートのおかげでその呪いは解かれ、マルスガルドにリュートが転移するまで、再会の時を待っていた、と言う。

 素戔嗚尊にヤマトタケル、源義経と、まるで現実味のないビッグネームが飛び交っていたので、話半分に聞いてしまったが。


――だから、初対面のパパに合わせて演技してみたけど、ミステリアスに振る舞うのがちょっと楽しくて。見た目はパパの方がちょっと年下でしょ? そう思ったら可愛くなっちゃって。


――分かる。母性本能くすぐられる感じよね。私は同い年だけど。


――そうそう! 私こんなカッコでしょ? チラチラ見ては目を逸らすのも可愛くてさー。


――それも分かる。本人はバレてないと思ってるんだよね。


――ね。ママも大きいもんねー。どことは言わないけど。


 曖昧な情報だがリュートの危機と聞いておきながら、同世代の女子とも交わしたことのない他愛のない会話を、思いがけず楽しんでいたのだった。

 ただ、そうしてノアが楽しげに出自を語るのを聞きながらも、私は懐に妙な熱というか、気配がわだかまっているのを気に掛けていた。そこには、とっさにしまい込んで持ち出してしまった、ノアが見ていたシンシアのノートが収まっていた。


 ――そのとき、ノアが急に黙り込み、何かに集中する気配を見せたのは、あるいはその私の気掛かりが伝染したものかと杞憂した。

 時空の裂け目。そうとしか呼びようのない、暗黒の虚空を覗かせる大きな直線状の何かが、不意に遠くの空に浮いているのが見えた。心臓が殴りつけられるような不安感に襲われる。


――急いで。

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