#12 彼らは何を手放したか
赤土の砂漠からなだらかに盛り上がったはげ山を、リュートは去って行く。
広大な大地に比べればごま粒のように小さい姿は頼りないようで、しかし不思議とその背中は大きく見えた。
「やっと行ったか」
小高い丘から見送っていると、清吾が声をかけてきた。この人物に、ジークフリートの名はふるいすぎだとオリヴィアは思う。
「アクティブスキルとパッシブスキルって分かる?」
悪戯心というか、リュートの意趣返しを少しでもできればと、そんなことを聞いてみる。
「パッシブが、何もしなくても発動するやつだろ? 能力値アップとか。アクティブが意識的に発動するやつだ。魔法とか、剣技とか」
「そう、後は鑑定とか――」
たっぷりと、間を置いてやる。
「――ファッシネイションとか、ね」
清吾の表情が硬くなる。どうやら、この話題についてくるだけの理解力はあるらしい。
「鑑定でスキルの詳細が分かるみたいなんだ。ファッシネイションは任意発動型のアクティブスキル。代償として、MPを99も消費する。リュートは昨夜のドラゴン戦で大分レベルアップしたみたいだけど、それでも最大MPは75だった」
「……それがなんだよ。成長次第で今後は使える可能性があるって事だろ」
「でも、昨夜は使えなかった。使ってないんだ。ぼくらがスキルを使うとき、法具が青白く光るよね? リュートが龍を下したとき、マスターリングは光っていなかった。少なくともぼくは」
地平線を揺らす陽炎の中に、やがて小さな姿は溶け込んでいく。
「マスターリングが光っているところ、見たことないな」




