#11 スキルの真価
ふと、鑑定スキルがどれだけ優秀なのか、気になった。
「これさ、鑑定できる?」
差し出したのは、この世界の通貨だ。ごくありふれていると思われる、1ゴールド硬貨である。
「お金? 1ゴールドは1ゴールドじゃない?」
首を傾げながらも、先ほどの人物鑑定の成功があったからか、割と素直にオリヴィアは鑑定スキルを発動する。
「……96セントだ。1ゴールドじゃない。そっか、金属の純度が低いんだ」
計算上は100セントが1ゴールドに相当する。この硬貨は本来あるべき1ゴールドよりも粗悪ということになる。
ゴールドという単位なので紛らわしいが、見た目からして金ではない。
それでも、1ゴールドの基準重量相当の金に等しい価値を持つように鋳造されているはずだ。
製錬技術によってどうしても純度にばらつきが出るだろうし、そもそも原料の価値も変動するだろうから、別にこれが出所の怪しい硬貨というわけではない。
しかし、その価値を正確に見極められるということは。
「ゴールドっていうくらいだから、この世界の経済は金本位制だと思う。たぶん、この世界で君だけが、本当の貨幣価値を保証できる」
オリヴィアは身震いまでして驚きを示した。やはり地頭がいいらしい、ぼくが言ったことがどれほどのことか、感覚で分かったようだった。
たとえば現実の世界で貨幣価値を管理できることが、実際に管理している者が、どれくらいのパワーを持っているか。
「……え、やばくない? もしボクが嘘の金額を言ったら――って、そうか。だからボク、嘘がつけないのか……」
「エルドラ聖教だっけ。宗教権威が強いみたいだから、例えば教会が鑑定スキルの正しさを保証してくれれば、君が金の価値を決められることになる。ぼくも経済とか詳しくないけど、使いようによっては最強のスキルじゃないか? 冒険なんてしてる場合じゃない。そうだな、この世界で初めての銀行を設立して、頭取になるとか」
「…………」
オリヴィアは顎に手を当て、深刻な思案顔になった。考えていると言うよりも、事の大きさを受け止めるのに必死なのだろう。
「……いや、ボクの手には余るよ。経済のこととか、政治も絡むと、知識も経験も足りなさすぎる」
「そう、力を持つってのは大変なことだ。多かれ少なかれ、誰のスキルにも大きなポテンシャルがある。それに対して、ぼくらはあまりに未熟だ」
「……君はすごいな。スキルを鑑定するとか、鑑定の基準になるお金そのものを鑑定するとか思いもよらなかったし、その結果からそこまで分かるなんてさ」
オリヴィアはまた、星空を見上げる。空気が澄み切っているので、頻繁に流れ星が見えた。かえって有り難みがないくらいに。
「この前の期末、一位だったでしょ」
「うん、まあ」
家の経済状況が経済状況なので、学業は身を立てるための最優先事項だと思っていた。幸い遊ぶ友達もいないので、できるだけ支援施設に通って自習していた。
「ボクはいつも二位で、悔しかったんだ。だから、君がいじめられているのを、見過ごしていた。……やっぱり」
「…………」
「嘘つけないって、しんどいな」
オリヴィアはむしろ、嘘をつけないペナルティを逆手にとって、普通なら言いにくい本音を吐露する口実にしたのかもしれない。




