生理
私が、中学1年生のとき
一番困っていたのは、休み時間の短さだった。
もっと言えば、生理だった。
たった5分で、『移動教室』があるのに
どうやって、トイレに行けというのか?
私には、わからなかった。
さらに、中学校では、日直が
先生を呼びに行くという習慣があった。
この習慣も、意味がわからなかった。
けれど、これが遅れると、授業も遅れてしまうし
怒られてしまう。だから、遅れるわけにはいかなかった。
そして、授業が終わったあとも
『授業評価』を聞きに行かなければならなかった。
それだけで、3分くらい使ってしまう。
10分休みだって、事実上ないようなものだ。
だから、日直と生理が重なった日は
最悪だった。
授業で、起立するごとに
漏れていないか、心配になった。
私は、真面目に軽減策として
ナプキンの他にも、トイレットペーパーを丸めて
敷き詰めていたが、不快感を増すだけだった。
なので、日直と生理が重なった日は
それだけで、休みたくなった。
けど、日直の日に休むことで
余計に目立ってしまうから、ついに休めなかった。
・・・そして、これには続きがある。
トイレに行こうとする私には
さらに、もうひとつの障壁があった。
「トイレ一緒に行こう。」
友達からの、誘いだ。
私は、その誘いが、とても嫌だった。
トイレに行きたいのは、そうなのだが。
その誘いが、本当に、嫌だった。
なんで、一緒にトイレに行かなければならないのだ。
ばれたくないのに、ナプキンを交換する音で、ばれる。
「ああ。この人、今日生理なんだ。」と。
自意識過剰かもしれないが、そう思われるのが嫌なのだ。
友達も、同じ思いをするのならまだいいけど。
友達の方からは、知っている限り
ついに音が聞こえることはなかった。
私は、友達のことを『裏切り者』としか思えなかった。
私だけ、恥ずかしい思いをしていたからだ。
さらに、私だけでトイレに行こうとすると
友達は、狙ったかのように話しかけてきて
無神経に、私の時間を奪いつくすのだ。
そして、「トイレに行く」と言えば
「一緒に行こう」となってしまう。
どっちに転んでも、詰んでいるのだ。
・・・なんであんなに、無神経でいられるんだろう。
同じ思いを、していないのだろうか。
私は、どうしても、そう思ってしまった。
・・・それで、一度だけ
自分から、生理中であることを伝えたことがある。
そしたら、こういう風に返事をされた。
「そんなこと、気にしてないよ。」
それは、優しさから来る言葉だったのかもしれないが
私にとっては、無神経な言葉にしか聞こえなかった。
付き合い方も、変わらなかった。
同じ思いなんて、していなかったのだ。
そして、私は、『そんなこと』で数少ない友達も
ただの無神経で邪魔な存在と感じてしまうようになった。
その友達とも、クラス替えがあるまでの付き合いだった。
私は、2年生になってからは
友達付き合いというもの自体をあらためて、やめた。
私にとって、このつらみは
『そんなこと』では片付けられなかったのだ。