魔力と薬草
魔力が確認できたのは18種類のうち3種類の植物だ。
これはばあさんのチョイスがいいのか、この世界にも相当な種類の魔力を持つ植物があるのかはわからない。
ライオンハートがドクダミを煮出したお茶を飲んでわずかだが魔法を使えたように魔力を直接取り込む事が出来た。
これは元の世界でも同じように魔力に効く薬草と同じだ。
それに魔力は持たないが治癒や強化の効果がある植物もあるかもしれない。
効能の判定はまた今度やってみよう。
いずれにしろこの世界と元の世界は同じ原理が通用する!
よーし!いいぞぉ!
「アレス!魔法が使えるぞ!」
「ああライオンハート。魔法が使える!」
そして
「これで元の世界に帰れる。」
「アレスそれは本当か!?」
ライオンハートが驚きの表情でオレを見つめる。
「オレたち悪魔には異世界をまたぐ高度な転移魔法がある。」
「異世界をまたぐ・・・そんなものがあるのかい?」
ライオンハートは勇者だが人間だ。悪魔の事には一般的な事しか知らないようだ。
「サタンとベルゼブブは知っているな?」
「ああ。知っているよ。5000年ほど前の神話の時代に突如現れた大悪魔だよね?出自不明、悪虐非道、人間の悪の心を利用して魂を喰らい当時の全人類の3分の2が死に絶えたんだっけ?」
オレは悪魔の歴史講義を思い出した。
「そうだ。ライオンハートにとっては神話だけど、悪魔のオレらには歴史だ。まあそれでも古代史だけど。サタンとベルゼブブは人類の大半を食い尽くしたのに飽き足らず別の世界に手を伸ばした。それが異世界の人間狩りだ。オレの仮説だけどな。」
「まさかその異世界って・・」
「そう。ここだ。オレはばあさんの息子が残した書物でいくつもサタンの痕跡を確認した。とても分かりやすいし絵で読む豪華版の歴史書もあった!複数の書物で表現が違ったり姿も性別も違ったりしたがあれはサタンだ!サタンはこの世界で人間狩りをしていたんだ!間違いない!」
ライオンハートは少し思案しているようだ。
「なぁ。アレス。大悪魔って事はサタンはお前のご先祖様って事だよね?」
「はぁ?それ無知な悪魔差別だぞー。オレがなんでサタンみたいな脳筋野郎の子孫なんだよ。先祖でも子孫でもない!」
「違うのか?悪魔の王子だって言ってたよね?」
ライオンハートは意外そうな驚きの表情だ。
「悪魔。つまり悪魔の称号をもつ魔族って事は魂を扱える魔族って事だぞ。魂をどう扱うかは決まっていない。それに扱えるのは悪に染まった魂だけだし。」
「そうなんだ。」
「まあサタンの印象が強すぎて悪魔イコール食人鬼みたいな扱いなのは否定しないけどな。」
少し冷えて来たな。
人間の体は寒さに敏感だ。
「それで、その悪魔の魔法の中に異世界への転移魔法があると。」
「そうだ。元の世界では2000年間サタンは姿を見せていない。」
「ヘルマージュか。」
ライオンハートは少し険しい目をした。
「そうだ。大半の人類を食い尽くしたサタンとベルゼブブがその世界自体を滅ぼしかけたヘルマージュ。それが失敗してから姿を見せていない。死んだのか、逃げたのか、どちらにしろ消息不明になった。」
「それがこの世界にいた・・・」
「ああ。オレの仮説だ。元の世界で消息不明になった時期とこの世界で姿を現した時期が一致する。まぁ書物ではこの世界でも数100年は目立った記載はなかったから、もういないのかもしれないけどな。」
「よし!アレス。まずはまとまった魔力が必要になるよね!あの庭にあるドクダミだけじゃ足りないだろう?」
「そうだ。かなり高度な転移魔法になる。必要な魔力も膨大だ。」
「おばあさまに協力してもらおう!」
「ただ、もう一つ問題がある。」
「問題って?」
「オレはその転移魔法を使えない!」
「えぇえええ〜!!昼間試してたのじゃないの??」
「アレは一般的な転移魔法だ。世界をまたぐ事は出来ない!」
オレは胸を張った。
「そうなの?・・・さっき元の世界に帰れるって言ってなかったっけ?」
「高度な転移魔法が使えればな!簡単に世界をまたげるとおもうなよ!」
ヒュー。
夜風が寒い。
「・・・・・」
ライオンハートの視線も痛い。
「あっ当たり前だろうっ!歴史上の大悪魔が使う転移魔法だぜ!スッゲェ高度なんだぞ!」
「えっ今まで出来ないのに得意になって話してたの?」
オレは開きなおった。
「ライオンハート。聞いてた?オレ王子だけど自分の才能の限界を悟ったから勤勉で多彩なんだぜ?」
「そ、そうだよね・・・・・」
オレはさらに胸を張った。
家に戻ったらどうもばあさんが慌ただしい。
「ばあさん何してるんだ?」
「あらおかえり!」
「おばあさま。これは?」
ばあさんが家財道具を抱えている。
「男の子が二人もいるんだ。2階はちょっと手狭かと思ってね!私の部屋に寝ておくれ。その部屋に布団を敷いたよ。私はこっちの部屋で寝るから。ああ風呂入っちゃいな。パジャマも出しておいたよ。サイズは合うと思うよ。ちょっと古いかも知れないけどね。ふふ。」
ばあさんはうれしそうだ。
「おばあさま。手伝います。」
「あらあら。」
「ばあさんオレも手伝うぜ!」
オレたちはばあさんの部屋の引っ越しを手伝う事にした。
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