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悪魔の王子

オレは悪魔の王子だ。


「おい!ばぁさん!

理科の教科書ていうのはこれだけかー?」

オレは電気のページから目を離さずに階下のばあさんに聞く

「そこにあるだけだよ!

あんたも珍しいわね。中学校の教科書をそんなに読みたがるなんてっ」

階下から人間のばぁさんのやかましい声が聞こえる。

しかし、この部屋は宝の山だな。

ベッドと収納がまとまった合成木材の机、様々な戦士のちいさな像があるが

なんといってもこの本達だ!

40年前に死んだばぁさんの息子の部屋だって言ってたな。

この中学理科という本だけでも、ものすっごい興味深い!

人間の科学知識を体系的に把握できる。

人間の魔導書と言える!

さらにこの中学校社会科地図帳!帝国書院編集部編!!

この日本という国のほかに様々な国があり、その位置と大きさが詳細に記されている!

それにこの新しい社会歴史!人間の歴史をこの一冊で学べるではないか!!

それ以外にもこの小さな部屋に文学、文化あらゆる知識が記された本であふれている!

「そんなとこに引きこもって本ばっか読んでないで

ご飯が出来たわよ!!降りてきなさい!!」

ばあさんが大声で呼びかける。

「おおっ!!ご飯!」

ズダダダダダ!!転げるように階段を駆け下りる。

「食事はなんだ!」

オレはこの世界に来て驚いたのは食事の美味さだ!


「昨日のカレーだよ」

「ぬおっカレー!!!!ばぁさんわかってるなっ!」

オレは急いで食卓に着く。

「ん?」

「ばぁさんこのカレーの上にのっている馬鹿でかいのはなんだ?」

オレはその皿の上から大きくはみ出している茶色い物体を指さす。

「なんだ?とんかつも知らないのかい?」

「とんかつ?」

「そう。今日はカツカレーだ。豚肉の衣揚げをトンカツって言うんだ!あんたは勉強熱心なくせにそんな所は疎いんだネェ。まずは食べてみな!」

「おっおう。」

「いただきます!」

「そう。いただきます。」

おれはここで覚えた食事の挨拶をし華やかなスパイスの香りを放つカレーとその上に乗るかすかに甘く何やら香ばしいとんかつを凝視し生つばを飲み込む。このカレーはなんと言っても具がデカい!拳大のジャガイモや親指大のニンジンそして一口では食えない極厚肉!!ばあさんの料理は色々デカい!!

そして完璧に使えるようになったこの「はし」をつかってとんかつをつまむ。

「あら。ずいぶん上手になったわね。はしの使い方!」

「それはそうだ!」「おれは悪魔の王子!史上最年少で悪魔の称号を授かるほどの天才だぞ!はしなどたやすい!」

そう言って、白い肉が大きく見えるそのとんかつの一切れを大きな期待をもって口に入れる。


びかーーー

なっなんですかコレはッ!!

サクッと歯触りのいい食感!グッと噛むと肉汁が溢れて口を幸せで満たす!!

「てかっアツ!!!」

「ははははは!!揚げたてだからねっ!!そりゃアッツアツよ!でも美味いだろ!」

おれは口をハフハフさせながらばあさんのドヤ顔にばあさんに教わった親指を立てた握り拳で応える。


「ウメェ!!ウメェ!!」

カレープラスとんかつという悪魔的な組み合わせにおれは手が止まらない。

「ばあさん天才だな!!宮廷料理人として召し抱えてやっても良いぞ!!」


「そうだったね。あんたは悪魔の王子って設定だったね。」

「設定じゃない」

「まあいいさっ。あんたも色々あんだろうしさ。

現実逃避ってのも自分を守る為には必要な時もあるさ。」

そう言ってばあさんはおれの前に座っておれを見る。

「なんだばあさん食わないのか?」

「あんたの食べている顔を見てるのさ。」

「フーン・・・なあ、ばあさんそれ食っていいか?」

「良いよ。」

そう言ってばあさんは嬉しそうにカレーを差し出す。

「ウメェ!!ばあさんコレはいくらでも食えるぜ!!」

「なんでばあさん笑ってるんだ?」

「久しぶりなんだよ。」

「何が」

「私の料理をこんなに美味しそうに食べてくれるのがね!」

オレはカレーを食べ終えて皿を置く。

ばあさんがつぶやく。

「40年・・息子が生き返ったみたいだね。」

「ばあさんの息子って幾つで死んだんだ?」

「14、事故だったね。」

「14・・・・なんだ俺と同じじゃねぇか。まあ、オレは悪魔だから人間のばあさんの息子と一緒にされるのは気に入らんけど。こんなうまい食事が出るなら毎回食ってやってもいいぜ!」

「悪魔ねぇ。それじゃぁわたしの料理で悪魔を虜にしてやるよ!」

「ははは!望むところだ!」


「これ頼まれてた乾電池」

ばあさんがそう言ってテーブルの上に乾電池を置く。

「おお!サンキュ!これが乾電池か!!」

そういっておれは乾電池を受け取り二階の部屋に走る。


机の上にあるノートを開きいくつも書いた過去の失敗作をパラパラとめくり見ながら

まだ何も書かれていないページを机の上に広げる。

オレはまず「エネルギーを実体化させよ」という最終的な実行命令を書いた。

そしてその周囲を囲む様にエネルギーにどの様な性質を与るのか?またそれをどの様に増幅させるのかを命令にして書いた。

最後にその外周にエネルギーを取り出す印と取り出す為の方法を命令として書く。

エネルギーを取り出す印は魔法陣を囲む様に上下左右4箇所ある。

我ながら上手く描けた。

命令文と定型化された命令を省略するための記号とそれぞれの段階を区分けし、ノートいっぱいの魔法陣が完成した。

「コレで48個目の魔法陣だ。高度な魔法は使えない事はわかった。生体変換による魔法実行も出来なかった。何故ならこの体には魔力が無いからだ!」

かたわらにあった理科の教科書を取り上げる。

「体だけでは無い!そもそもこの世界には魔力というものが存在しないし、魔力を使った魔法が存在しない!」

理科の教科書の電気の章のページが簡単に開く。何度も読んでいるからだ。

電気を知った衝撃と喜びは計り知れなかった。

この世界で魔法が使えなかった事には落ち込んだが代わりに電気がある事を知った!

 電気を使い様々な事が出来るこの世界。

そしてその電気は魔力のような性質を持っている事をこの本から学んだ!


今オレは魔法を使えない。

だが魔法を使う方法は知っている。

もしかして魔力を扱うように魔法で電気が扱えるのではないか?

そうすればこの世界で魔法に匹敵する力を使えるのではないか?

そう直感的に思ったんだ。


オレは乾電池4本を魔法陣の周囲に描いた、エネルギー取り出し印に置いた。

右手を中央の最終命令に置き深呼吸をする。

「ゼオターク!!」

魔法陣の起動呪文を唱える。


最終命令分が青黒く光った。

そしてその光は魔法陣をたどるように各命令へ流れ乾電池が置かれている取り出し印にたどり着いた。

ブーーーン

4本の乾電池が光りだす。

「思った通りだ!いままで書いた魔法陣のなかでも基礎の魔法陣はこの世界でも起動する。

そして魔力に代わるエネルギーがあれば!!」


ブッ


「ああああ!!?」

魔法陣と乾電池からは光がブッと消えそれ以上動かなくなってしまった。

「クソッ!!魔法陣が電気を拒否した!?

エネルギーを取り出せなかった・・・・電気は魔法では扱えないのか??」


また、やり直しだ。


「こんな事じゃ、あいつに勝てない・・・あいつを倒せない・・・オレの全てを奪ったあいつを・・・」

そうつぶやきオレは天井を見上げた。

「面白い!」

「続きが気になる!」

と思っていただけましたら、

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