序章~始まり~1
形ない依頼書。
それは相当に古い過去からの現在に向けられた依頼でした。
事の始まりは気づくと端末の受信箱に入っていた一通の手紙が何時から届いていたのか。少なくとも去年の内では無いことは確かだろうと思いますけど。
怪しいな。
そう思いながら好奇心には勝てず最期には開いてしまい。
開いた画像には。
『ある存在を助けて欲しい。』
という一言だけ。
別の時に受信した内容は最初が同じだけど続きがあって記された空白を下へ進むと。
『報酬は成功と見なした場合に振り込まれる。』
それはつまりですよ。主観的というか僕が成功と認識してそれを証明できても客観的視点な視点で失敗となれば、また無駄働きかと。
理不尽すぎますよねえ。
でもどうしてか受けないといけないような感覚になって最後は受けることとなりました。
どうしてこうなり至ったのか。その紆余曲折を思い出してみましょう。
最初の始まり。
それは忙殺されてた年度末に気晴らしとして端末を弄っていました。
課外授業の一環とした例の事柄に対する課題を作成していた時、ふと受信箱に一通の手紙が届いていた事に気づいたのです。
何か手を触れてはダメな気がしたから放置するという選択をして。少しの間は忘れていました。
でも別の時にこの事を思いだし、そして開けました。
そうして記されていたのが。
最初の一文。
何これ。というのが感想でした。それ以外の言葉はなく、でも何か言い知れない感じがして直ぐに消しました。
消してから更に数日した春の休み期間でふと。再び思い出して端末を操作するとまた受信していて何気に警戒しながら開くと同じ様に一文が記されていました。
さらに文面の続きが記されていて二言目が明言されていました。
少し考えてから消去して忘れました。
嫌な予感がしました。
また届いていたので今度は見ずに消去して頭からも消しました。
それを数回繰り返して諦めて開くと。
意識に反して頬を冷たい水が流れていきました。
それは涙だと解して文面を読み返して又、頭で反芻して理解して。息を吐き出して端末を。
一歩の所で思い止まり。呼吸を整えて最期に読んでも変わらず。代わらず。換わらずに。
一文だけ。
それは、
『契約完了』
という言葉。
心が小さく成っていくような感覚。
縮小してから小さな塊を残して大きくなって元の大きさより少し大きな何かになって心に留まる。
そして痛みの無い痛みが大きくなるようで。
つまりは不安が的中していたのです。
いつ契約完了していたのか。
下へと読み進めると手付金として数千万入金されていました。
心が終わりそうです。
返金できないかなぁ。
無理か。
あぁ思考停止して眠りたい。
でも現実から逃げても心が終わって追い付かれて潰されるのが見えてるし。長い笑いと溜め息が同時に出そう。
何が誰が組織的なものでしょうか。
ねぇ。誰か。
なんてどうせ意味ないだろうね。
応援なんて。
項垂れながらどうしようか。
と自問自答していると端末に差出人不明の連絡が届きました。
放置。というのを考えましたけど、諦めて開くと。
「うあぁ。」
出頭指示書だった。
制服に着替えて部屋を出る。
誰も居ない廊下を歩いて階下に向かうけど何か怒りが込み上げてきたので何回かその場で軽く飛んで窓を突き破って外へ飛び出ました。
「あぁ。そうだった。」
勢い任せは後悔の始まり。
寝ていたのは。何時もの寮ではなく。監禁されていた校舎最上階でした。
諦めの言葉を吐きながら落ちていく。
「人生諦めが、ぐふぅ。」
諦めようとして横からの軽い衝撃と柔らかく包む感触。
毛玉に包まれ風に流されるよう眼下を見ると。
見知った景色で向かう先を聞かされ軽く目を閉じた。もう限界だったのです。
到着という知らせに開ける。
「これで何度目かなぁ。はあなんでこんな事。引き受けたんでしょう。」
思考を明後日に向けようとして、止めて現実に向き合う。
気を入れ直して下ろされたのは小さな林。誰の目も無い着地点には何もなく少し埃を払い林を出て目的地へと向かいました。
少しの距離でありました。でも思ったより時間は掛からず目的の見知った場所には遠目に判る人影があったのです。
短い挨拶をして質問したのです。
「運ばれてくるまでに聞きましたけど、まさかこの短期間でこうも立て続けだと疲弊しそうなんですよ。」
「おぉ、戻られたか管理人。」
「うん。それで其が例の。」
「潜入者でフ。す。」
「それで何処まで。」
「視覚聴覚嗅覚を遮断。周囲にャも同様の遮断措置を展開されていますのレ。」
「そうですか。で何者かは。」
「していません。先程引っ掛かりこうして拘束。必要な事をして待っていました。なので次なウ指示を。」
「うん。なら先に人目があるかもだから中で降りましょうか。」
「では糸繰りを使用しま。」
「良いよ。」
「さいこまで。」
「もう少しかな。」
目を伏せて気を取り直し一枚の布を出し潜入者に被せると宙に浮き一緒に建物の敷地内へと入っていったのです。
「と前にねぇ、残りは、もう処置済みですか。なら纏めて入り口に入れといて下さい。連絡も忘れずに。うん。じゃご苦労様。後で差し入れするよ。」
そうして庭を横切り塵の山へと向かったのです。
周囲が全て見えるよう配置された光源は目に悪いですよね。
降りて開いた扉の先には隙間なく並べられた明かりは目を背けたく。でもどうにか我慢して無機質な通路を歩いて終着点へ到着してから壁に手を当てて軽く押したんです。
直後。
「いええぃ。待ってたよぉ。入ってぇ。」
壁が左右に開いて上下に移動して床が抜けた。
もうこういうの嫌なんですけどっ。
色々終わったなぁ。と考えましたよ。
でも。
思い出しますよ。先の事を。
そう、たしか柔らかい何かで受け止められて眩しい光に照されたんですよね。
その場所は。
地下深くに建造された。
調査室。
そう言えば質実剛健て卑猥な感じするよねなんでだろ。
それは置いといて続きだね。
調査室を造ったのは誰の指示だと言っていたかは忘れましたけど地表からの工作調査妨害に対しての防壁は完璧だとか。どういった技術が組み込まれているのでしょうね。
とかを考えながら会ったのは久方ぶり。だと思う相手。
「久しぶり。といった方が良いのですか。」
「ねぇねぇ、数日前にさぁ此処に来たよねぇ無茶な事を押し付けるようにさぁ。」
「そうでしたかね。て、それは何をしているんですか。」
「これかい。ふぅくくぅ。いい素材を提供してくれた人々に感謝だよぅ。こうして研究が捗るうぅ捗るううぅ。」
「はは。で、調査はどうなりましたか。」
「進捗は上々だよぅ。殆ど完了してるしねぇ。でもさぁ最後の方に戸惑ってんだけどねぇ。」
「手こずるではなく。ですか。」
「うんそうだよぅ。こんな単純計測に手こずる人が居たなら会ってみたいねぇ。」
「そうですね。で、進捗の程は。」
「うん。そうだねぇ。これが本当ならさぁ。正直。」
間を開けてましたね。
「世界は壊れる寸前だよねぇ。どうするんだろうねぇ。上のシト達はさぁ。」
「最後は別として。答えは、見つかってますよね。話を聞かせてくれませんか。現地点で構わないので。」
「そうだねぇ。あ丁度、来たねぇ皆もさぁ。」
「ふふ。その連なる甘ったるい言い回しは何時もだけどさあ。さてさて、其が例のかい。」
「はっはは。君は何時も面白い事を提供するな。で何者かを特定したなら話を聞かせてくれないか。」
「そうだ。私の変更地点を更に変更したのは君だろう。謝罪しなさい。」
「いやだよぅ。あれは抑止だし。ねぇ、あのままだと人達に強奪されてたよおぅ。」
「ふ、それを含めての変更だったんだけどな。余計な事をしてくれた。」
「いやいや。あれらはさぁ。知っていて強奪する腹積もりだよぅ。ねぇ。絶望なら種から育てるより始まりからじゃないと意味ないよぉ。」
「そう、か。話が逸れたかな。失敬。では続けてくれ。」
「さて。話を始めましょうか。始まりにして終わりの何か。」
「ねぇねぇ。私の持論だけどさぁ。これが今後に影響するなら放置で良いんじゃないのかなぁ。」
「それは良いですけど。確実に誰かにとっての快楽で終わりますよ。」
「ふうぅん。仕方ないねぇ。それなら説明するしかないなぁ。」
そうして話はこの短期間で捕縛した工作偵察操作していた複数の潜入者を色々な方法で可能な範囲で引き出した情報と推察を合わせて解摘まんで話されました。
この地点での結論。
「わかんないよおおぉぅ。」
でした。
そうでしょうね。運び込まれたのは物も言えない肉の塊。
それをどう料理しようと完成するのは僅かな量。口に含んで飲み込んでも空腹が増大するだけ。生きた者を料理しなければ意味はなかったのでしょう。
なので調査続行となりました。
そもそも、一緒に運んだ者は気づくと物と化して知る機会を失ってました。
所持品も島で調達できるものばかり。
これまで捕縛した物が全部に共通していることですね。
はぁそう言えば。何時からこの依頼を引き受けたんでしたか。
思い出せないけど。
んむむむ。誰かと話して。
いや、話という感じじゃ無かったような。
出会って何も云わせずに押し付けられた。ような気もしない。
朧気で相手が誰だったかも思い出せないけどこうして島への違法入島を取り締まることになっていたのです。
諦めて渡された資料を提出物作成の合間に読み込みまして、そうして春の休みを利用して教寮の住民である先生方に話して協力して貰い、後、何時から居たのか知りませんが何故かいらっしゃる知らない男性の所有する情報線を用いて、少々の力業で中央へと情報を忍ばせて島全体への防護強化を施して貰いました。
それでも堅すぎると躍起になって大規模で壊されることがあるというので一部に穴を開けるよう組んでもらい、情報も少し変えながら流したのです。
すると餌に集る何かが面白いように食いついて。こうして短期間で同じ事を繰り返して今に至ったのです。
でも、情報が中々に集まらなくて、別の方法を模索していた時、何気に端末を弄っていて、依頼人のない依頼の事を思い出したのです。
違います。
頭の端にちらつくその依頼はこの時、まだ内容を読んでいませんので依頼とは判りません 。
しかも付随する題名も空白ですから。怪しすぎですし読む気がしませんでした。
なので幾日も放置していたんです。
なのに、ふとしてこの手紙の事が気になって悩んだ事に対して怒りが湧いて、勢いで開きました。
そうして内容が意味不明すぎて、混乱しながら何度となく読み返しても不理解で。そのままそっと。閉じました。
そうした事を繰り返して諦めて、何度目かで開くと契約完了の言葉が綴られ入金も完了してましたし、先生方の誰かに相談しようとして止めて。悩みに悩んで。数日経過してました。




