一章〜戦場達の終り〜
決めつけがこれを生んだのだろう。
しかしこの結果を受け入れた自分を忌避したい気持ちを曝け出したとして何になるのか。答えなんてのは思ってない。
思ってないが。しかし。この現状は甚だ面白い。
何が面白いのか聞かれたなら最大の笑顔で答える事が出来る。
命の軽さがこれ程の惨状と悲劇と喜劇を生み出すのだから。と。
そんな事を聞かれたなら。
断罪はされるだろう。
それが造られた罪であろうと。
だからこそ人の思考と凌駕する感情は計算式を組み立てたとしても計り知れない無限の研究材料であり永遠の課題なのだ。
さあまだまだ材料へ余りある。何度でも繰り返そうぞ我が宿敵にして最悪の計算式にも組み込めない最低の思考よ。
戦場を駆け回りながら目に見えた敵味方を容赦なく屠る。現状。この戦場に大した意味はない。元々の始まりさえ誰も知らない。だからなのだろうか。この戦場に存在する者達の目的は金ではなく名声。そして繋がる上への階段を登る権利。
なれど、それは生きていればこその話。
命が失えば戦場に残された誰にも知られない何か。
なのにだ。双方入り乱れての戦は誰にとっての盤面なのか。それを知るものは。居る。
確実に存在してる。何故ならばだ。
この盤面と道筋を造った者が居て双方だけに留まらず様々な組織個人へ大小の影響を確実に与えていた。
それは見えない手による因果という糸を手繰りよせ無関係であるはずを牽強付会と言わんばかりに繋げて長い糸を作り混線させ紐を創り完成させたこの戦場。
様々多種多様な手法にてこの場面まで紡がれた誇大物語。
さて脚本は存在するのか。
しないだろう。とも言えてするだろうとも言える。
その脚本が存在するならそれは目に見えない。持てないし捲れもしない。
そうその見えるようで全く見えない脚本があるなら。それは最悪最低悪手にも考える。そんな子供みたいな考えを実現させて、この戦場という盤面を用意したのだろう。
ある意味で尊敬は向けられるだろう。
その一方で忌避もされるだろう。
それ程にこの戦火の規模は大きく果てはなく。
最終目的を設定してたとして完遂できるのかも怪しい。
しかし。そう思い考えを巡らせる方や、それすら組み込んでいたであろうこの盤上達の一つは現段階で目的は果たされるだろう。
では、その目的とはなにか。
それを見つけたとして現在地点では無意味。
この盤上たる戦場の構築が完成する前。それも形の一欠片を形成される前に阻止しなければ意味を持たない。
さて。ともすれば。現在地点にてこの状態を覆せないのであるなら壊して完結させるが最短か。
この規模を盤面の根底をひっくり返す程の材料も持ち合わせてはいないのだ。
手許の札を上手く使ったとして、はて思い通りに運ぶかは何とやらだ。
手を着けるもどう着けるか。
存在を知られていて存在を知られないように振る舞わなければ利がなくなる。
しかし手札は多くない。一つも無駄にできないのなら近くから手を着けるか。
そう行動して最初に向かったのは自軍の将校か陣取る後方最奥。
指揮するのみで前線は数字でしか認識していない。盤面の支配者。だが、これが本当に上位である将校達の更に上。国代表の本意なのか。
何かの違和感が在ったのだがどうしてか霧散していた。
では一番近くの者に聞くという方法が一番に早い。
だが事は簡単には行かないのが現実。
何故なら相手は天上の存在。と言っても過言ではないだろう。
そして自分の現在位置は平民である。
それに通常は慣れない鎧を着させられ前線で無駄な行為をさせられ消耗品として扱われている。
あ、何か苛立ちが。
それを聞かなければ事は進められない。
向かう先には本陣営最奥。幹部が居座る場所。
しかし今は護衛ご周囲を固めて簡単には近づくことが出来ない。
がそれは普通の事。
今は時間も惜しい。なので。
突然天幕が開かれ中で会議していた将校以下は驚いていた。
当然だ。
この場所は本陣営の奥地に設置され、簡単には侵入できないように警備を配置させている。
その警備も其々が信頼に足る不足ない実力者。しかしその者達は現在、侵入者の足下で地面に伏していた。
僅かに動いているので命はあるのだろう。しかしだ。
「何者だ。」
この場を何と心得ている。
と続けうとして。
「ああ、時間も惜しいので簡潔に。アンタラの上。国の代表は之を望んでいたのか否か。其れだけを答えてくれたら消えるよ。」
その言葉に一人は動揺し、それを見逃さなかった。
「お、アンタは何か知ってるな。」
動揺した一人を残して気絶させ。
近づき手を首に充てる。
「答えてもらおうか。惚けないで貰いたい。穏便に済むなら此方もこれ以上の危害は出来るだけ可能な限り加えないと約束しよう。」
だが答えなかった。
「ふむ。忠誠心は結構だが時と場合と置かれた状況を考えて適切な判断を願いたいね。では質問を変えようか。」
それは核心に触れる事。
最後まで答えなかったが、それ自体が返答であった。
何かを察してため息吐いて。
充てがっていた手に力を入れる。
話が違う。と。
しかし。
「確かに危害を加えないとは言ったが、出来るだけ可能な限りと言っただけで絶対に加えないとは言っていない。」
そして力を込めて肉を断裂させ他の者も似たように全ての処理を終えてから立ち去った。
森の奥地。そこには植生の狂った場所があり更にその一部に開けた場所があった。
その場には何も無かったが前触れなく複数の気配が同時に現れ全ての表情が平等に焦りの色を隠せないでいた。
一人が話すと堰を切ったように事態の自身の管轄区域に関する出来事を詳細に話し出した。
それはこの者たちが何かの関係者だと証明していた。
一人が話し終えると残りも報告し、全ての報告が終わると沈黙が流れる。
黙り続けるのは無意味と知っている。
「くっ。これでは計画に大幅な修正と改善をしなければ成らない。時間も残されてないだろう。そうなれば執行部隊に何をいわれるか。」
「言われるだけならましだろう。考えても見ろ。失敗は命の奉仕。即ち捧げ物としての役割だ。」
「しかし何故にこの様な浅ましい事態に発展しているのだ。誰も気付かなかったのか。」
「それを判るというのは無理だろう。混戦到達時点で後、出来るだけ事は全ての行動を縮小し撤退の準備を進めるだけだ。現段階で実行中の他の戦場という実験場も終わる手筈だったんだぞ。下手に新たな不確定含む情報は逆に他の探求者を混乱させ動きが統制出来ない。だからこその放置という方向で調整したのだろう。」
「しかし、ここに来てこの状況は有り得ない。想定していた結果より悪い結果を我々の管轄全てが、だ。まさか上はこういう状況をも想定していたのか。」
「いや、それはない。使い捨てで無い限りは無駄をしない。その至りまでは遠いだろう。それに情報統制もされていた。全てが機能してたのだ。それは理解しているのだろう。」
「だが現実に不測過ぎる事態に陥っているのだぞ。ここで手を出さねばどうあっても我等は。」
「ではこうしよう。情報統制は継続。しかし不測もまた事実。修正可能であれば即座に実行。無理であるならふぅ。仰ぐしか無い。」
「それは、たが。そうだ、な。仕方ない。それしか無いなら。」
「では方針はこれで決定という事で。」
安堵の空気が流れる中で不意に空気が変わる。
「間者。それは即ちスパイ。即ち諜報員。更に工作員。とも言われる。国を飛び越えての暗躍。さてさて。君達は何処の組織に所属する、のかね。」
不意の言葉の発生源は容易に検討するまでもなく付いた。
何故なら話し合っていた場所の中央に現れたから。
そして認識と同時に全員が動けないよう確りと全身を拘束されていた。
口には硬い何か。鼻の片方には柔らかい何か。耳には蠢き這っているような音が聞こえて。全身に寒気。
目は何もされていない。
「うんうん。やはり各国に潜入していたのね。この世界での言い回しなら。そうだね。陰の計画者。とでも云うのかね。さてさてさて。だ。この状況に至るまでの全て話してもらおうか。なあ。その目を通して観ている諸君もな。」
反応はない。
「あぁまさかとは思うが自分達は安全圏に居るから実害はない。とか思ってる。ふはは。ははは。そんな訳にはいかないだろう愚か共。」
拘束した一人の顔を掴んで軽く力を入れる。すると身体は振るえて目を限界まで見開き、手足の爪が砕けて血を流し全身から汗が流れ白い毛が地面に全て落ちていき、軈てその者は干からびて命を終えた。
しかし其れだけに留まらず。その拘束していた者の目を通して観ていた全ての者は同じような工程を経て絶命していた。
そういう事を残され拘束された者達に説明すると。
何かを受け取ったのか、次第に振るえて首を動かし始めた。
「ふむふむ。何か言いたいのかな。でも、ダメーッ。そんな必要は皆無なの。選択を誤ったのなら素直に受け入れ呪いながら命を終わらせようか。」
そして残った中の一人の頭に指先を差し入れて頭の中をほじ繰り返すと何かを理解して抜くと少し考え同じことを残りにも。
そして最後に残ったのは狂い手足や羽を毟り取られた虫の様に無様にのたうち回る陰の計画者達。
それを観察する冷徹な目を向ける者。
暫し観察するする様に、しかし飽きたのかのたうち回る陰の計画者達を放置してその場を去っていく。
懇願の言葉は風に流されても届いていたであろう。だが聞く理由もなくどの道助かる事は元からなかったのだ。
そして姿が消える事が契機の様に全員が息を引き取った。
その表情は苦悶一つに彩られ苦しみに果ての命の終わりとしては呆気なく。
しかしこれがこの物たちの宿命であったのだろう。
様々な戦場に様々な仕掛けが作動し世界が混沌へ走り抜けていく。
止める術。
阻む術。
遅すぎた。
そして手元に残った最後の手札を切ることになった。
これが切っ掛けとして全ての戦場に溢れる負の想いは霧散し世界は一時の平穏を手にするだろう。
そう在りたいが。無理だとも考えている。
これがこの世界での最後の仕事。
次へと繋げるための最後の準備。
ああ。内成る自分が目を覚ます。
何時から居るのか定かではない内成る自分が昇ってくる。
走っている。
その目的地は調べ尽くして確定させた。
思ったより時間が掛かったのは欲しい情報が無駄な情報に埋もれていた。
その中から見つける事に時間を要し、更には確定させるのにも時間が掛かった。
そうして苦労して手にした情報か思ったより近くに存在していた。
足下に居たとは思ってもいたか。
しかしそれを認識した瞬間に忘却していた。
それだけにあらず。
時間を使ったが全ての戦場が集結した。
そう全ての戦場という実験は何かの思惑を外れ早期すぎる終結を迎えた。
しかし不測という予測は誰に対しての確実なのか。
それを知るものは現状一人として居ない。
そして世界は進んでいく。
滅びへと。
急いでも距離はかなりある。
しかし焦燥感は不可解な位にない。
何だろう。
くふふ。何をしてるのかな。
走ってももう無駄なのに。なればさ諦めよ。
諦めてさ。もう見てる事で納得しようよ。
そうすれば後は何も残らないから。
これは責任でもないから。誰のとか言っても無意味だよ。
さあ。止まるよ。
ふふくぷっ。
ななにゃに。
はあ。何時からとか今更なんでもう脇に置いとくわ。
なあお前だろ。
お前なんだよな。
必然にして当然な偶然を装う宿命という寄生。
お前なんだよな。
欠片は。
おいおい惚けようとか考えてるよな。お、何でというのは。
どうして走っていて内に手を伸ばして掴んでるのか。
くくくくくくはっ。
簡単だ。今現在。この地点を持って完遂される。そして次へと繋がる最後に欲しかったもの。それは何か。
そう恐怖だ。それも特級の畏怖。これを内包した存在を。物理でも物質でも構わない。
さあこうして蓄積した情報の最終到達点での強制停止。
何時から内包という自我の乖離を隠れ蓑として内成る存在を演じてきたのか。それは最早どうでも良いんだよ。
なあ「」だよな。知ってる。ああ、知っているとも。全てが今までどう足掻いたとして百歩からあと二歩が足りなかった。その答えが内成る存在のお前だ。さてこの手にした瞬間。逃げようと思うなよ。触れた時には終わっている。
んん。何を言ってるのかな。君の心の安寧の為に造られたのが僕だよ。だからこそ僕を切り離す事は。
おいおいおいおい。造られたと、言ってしまったな。本来そこはよ『分かれた』か『切り離された』が正解だ思うのよ。なのに造られたときたか。
造られたと君が無意識に造ったのが自分だと反論するよな。しかしだ内にあるにも俺は今で重圧に感じたことは無い。それは今までも、この先あればずっと。無いだろう。自信を持って言えるな。
不思議と思うよな。
くくく。さあ証明しようかほら。
くぷぺ。
ああ。矢張りアレを観てみろ。
が、がああああ。
お、どうしたよ。逃げた者の一部が剥がれて取り乱すとは。
何時から。
ん。そうだな。言ったろう。それ程の重圧もないし心的心労も無いのに何故かいつの間にか内に存在していた。
気の所為で済ますには大きく。何度か助けられた格好もあったな。決定的なのがあった。
それは作戦の全貌を完全把握してるのが立案した自分自身。仲間には一部しか伝えてなかった。それなのに全貌を把握した上での対策による失敗。さてこの答えが自分で自分を貶めるとは考えられない。ならばだ何かしらの方法で筒抜けに成るというのが答え。そしてその方法が考えられなく有り得ない。それでも確実な方法と言うならこれだろう。だから偽りと真実を捏ね混ぜた作戦を立てたんだよ。
ふはっ。その話をしても良いのかい。それは。
言ったろう。完遂される。とそして完遂した。これよりお前という欠片は次の者から先の手助けになるだろう。
なにを。いや。まさか。そんなっ。
ああ。察しが良いのは助かる。
さあこれから先の時間。愉しみ給え。
否定の言葉に意味はなく。
そして触れていたものは離れ気づくと何も無い何処かに居た。
欠片と呼ばれたその物はこれより遥かに様々なものたちの自我により搾り尽くされても尚、生き続けるのだ。
それは彼の先まで永劫にて。




