一章〜連鎖崩壊〜
消えたと同時に繋がる痛み。それは普通に人生を歩めば得られない程の痛み。
崩壊と消滅と捕食を何かを煮込んだものと一緒に体験するようなもの。
一般的には自我が消え終わっていた。
そう組み立てたし仕組んでもいた。
抜かりはない。
しかしだ。
それに入らない存在。
用意した物や者とかモノが無駄になった。
全てがだ。
計画通りに記憶に齟齬なく現実と同期させた。
なのに。道筋を示しても無視して想定外の行動により勝手に進む。
修正をしても何度も壊す。
こちらの計画を完全に無視していた。
勘弁願いたい。
再構築するよう組んだの物を挿入したが一向に起動しない。
否。
起動してはいる。
だが再構築する前に破壊され崩落され消え去られ異常が蓄積していた。そして食べる穴が発生した。
食べる穴など想定外も良いところだ。穴の影響で世界が崩壊しかけてしまった。
しかしどうにか修正は出来たが。
最終的には強制遮断を走らせたが間に合わず規定を上回る過剰負荷によって強制終了となってしまった。
その御蔭で。乾いた笑いと咽び泣きが同時に聞こえてくる。
誰だアレを使おうとか言ったのは。
自分か。
いやいや。あり得ないだろう。
制御も記憶も無駄なく阻害される事もなく。進行していた。
それを消滅まで追い込まれるとか。
はっ。想定を上回る潜在能力が有るとでも。
否定だ。
あり得ない。
把握していない存在の情報などない。
想定する全道筋を網羅しているのだ。
しかし万が一いや兆が一の可能性もある。
これは調べる価値がありそうだ。
部屋に響く怒号が耳に痛い。
原因が自分の声と認識する迄に僅か。
手に持っている端末を机に叩きつけたい衝動に駆られながら何とか思い踏みとどまる。
画面には一文が表示されるのみで叩いても滑らせても画面は一つだけと突きつけてくる。
何度見ても電源を落としても再起動させても同じ文面だった。
『計画の一時停止とする。』
見直しても痛みを加えても変わらない文字列。
計画の一時停止とする。
何故だ。どうして停止という事になる。
至る経緯は記すだろう。
握りしめる拳。
痛みは怒りに塗り尽くされ感じない。
納得できるかっ。
理由も何も書いていないのだ。
この一文で終わらせられると思われたくはない。
端末を操作し考えうる全てを書き連ね署名し関係各所に送りつけた。
だが、全ての質問に回答されず空欄で送り返されて更に憤慨した。
検体に関する調査を依頼しただけだぞ。
それに対する返答が停止にどう結びつけられるか甚だ怒りを超えて笑いすら溶ける。
いやしかし。これは一つの答えではあるまいか。
此処に思い至り。
溶けた笑いが込み上げる。
そうか。そう言うことであるか。
くかっ。ならば準備を。ん。なんだ。訪問の予定はなかったはずだが。
ぬおっ。
うおっ。これはまた凄いと言うべきか。
そうか納得無理やりしたとて後で蒸し返されるのがわかっている。としても現状では最適解。と言えるか。言えないな。なら落としどころとやらを見つけるしかなさそうな。
てなんの場面だこれは。
知らない知らない。
何故のこれなんだ。
これとは又何なんだ。
そうだ。何時から何処から何からだ。
だからこそ何かを契機に動かしたんだろう。
さて。
誰が得をする。
誰も得はしないだろう。
否定。
確実に一人だけは得をするだろう。
その得は莫大な利益にも繋がる可能性がある。
だからこそ危険視した面々が緻密に計画して全てを無かったことにした挙句にその情報を特殊機密扱いとしてある意味、闇に葬った。
だが、なんだこれは。 くをっ。いきなり、眩しい。
目を覚ますと知らないはずの天井が懐かしさを覚えて涙が目尻を伝い布を濡らした。
「はあ逆戻りですか。んっ。動かない。いえ。これは。」
鎖と革製の拘束具で縛られていた。
「なんですか。この状況は。誰かっ居ないのですか。」
大声を出しても誰も現れず聴こえず語られず。
ため息をして可能な範囲で頭を動かす。
監視装置が天井の四隅と直上に一つ。
これで誰も来ないとなると。理由は。
「放棄されたんでしょうか。いやいや。命ある存在があるのに放置て最悪ですね。」
再び巡らして何もなかったので一先ず眠ることに。
次に目を開けると世界が一変していた。
「心が終わる感覚とはこういう事なんでしょか。」
殺風景な場所で何も無くあるのは、いや、見えるのは前方の崖と後方の境界。これ見よがしな小石。
短い悪辣と侮蔑を込めた笑いを背後に置いて境界へ思い切りの蹴りを放つ。
亀裂の走る音は一瞬で修復される。
足に痛みがあるような。
「ない。かな。」
判断材料は乏しく思うが一連の行動にて答えは一つ出た。
「現実であり非現実である。」
地面を殴ると軽い痛みが拳を伝ってくる。
しかしその痛みは麻痺した様に消えていく。
「痛覚遮断ですか。いえこの場合は痛覚軽減ですか。」
なら。全力で崖へ向かって走り飛び降りた。
肉体が損壊ないしは弾け飛ぶかと考えていた。
結果は。
五体満足にて超高度の距離を無事に着地した。
傾げるしかなく。はて。という言葉が自然と口に出た。
全力。捻り千切る気持ちで頬を殴った。
視界が高速回転して生きていた。
皮膚は説明不要であり、内部の筋肉断裂に加えて神経や血管も千切れ骨は回転により筋肉の圧迫で粉砕されている。
その状況で普通に息をして普通に動いている。
先程の行動もあり得ない。
捩じ切れ掛けた首通り普通に声がでる。
納得した。
して泣きたいような笑いたい様な。
いや。怒りが表層へ上り爆発するように地面を踏み砕いた。
地面の下が存在した。
それは世界の果て。若しくは死者の国。
そんな場所の様に見えた。
地下世界。というのもあり得るか。
それでもここは生きている存在が居なかった。
彷徨い歩くそれが俗に云うゾンビと言えるかは甚だ疑問符が付いてしまう。
それは生身の部分が一切ない。人工物と言われたら素直に受け入れる事が出来る見た目をしていたのだ。
だが着用しているものは服の呈を成しておらず。
違うのかと考え直した。
衣服であったが長い年月で擦り減り布が張り付いている。という表現がしっくりとくる。
進むしかない。
戻るとしても上へと続く道が階段を探すか。
「それとも。」
人工物達は動いている。
止まっているのも居るが殆どが彷徨うように動いている。
試しに拾った物を遠くへ。放物線を描くように投げてみる。
地面に触れ音がなる。
が反応なし。
移動しながら声を出してみる。
これも反応なし。
何に対して反応するのか。それを見極める時間は正直、無い。
反応しないなら行くしかない。
足踏みして時間を無駄にしたとして解決するか。
時間が解決する可能性も無くはないが終わりが見えないなら進むしかない。
選択を誤った。
後悔したとして遅い。全力で無限とも思う数の人工物達を相手に逃げながら潰している。
一定の範囲を移動していたと今更に思い出していた。
だからその範囲に入らなければ問題無かった。
気づくのは遅く全ての目が向いていた。
一つの範囲は全てに繋がる。
逃げに徹していたら簡単だった。しかし進路にもいるのだ。回避するとして無駄に気力を使うなら倒したほうが楽である。
しかしただ倒すのは面白味に欠けすぎる。なれば。
と考えながら行動していた。
一歩が百層とするならこれは。
万層大乱崩壊。と呼ぶのかどうか。
そして一帯全てが消え去り。
残ったのは生者の。
涙と無数の光。
「はぁあ。かったるい。」
言いながら目的の地が消えた場所で無意味な程に無価値だと理解しながら微睡みの様に向かっていくのは。
何処か。
それらを知る術は手元には。
ない。
「お、戻ったかな。」
試しに頭を殴る。
笑ってしまった。
凄く痛みがある。
現実に戻ってこれたと。
安堵したが。
また笑って呆れてしまった。
「痛覚付与状態で戻ってないのか。」
言葉通りに現在存在しているのは上空である。
しかし落ちる気配が一切なく歩くと普通に空を歩いていける。
足に感じる地面か床の硬い感触は感覚が狂っているのだろうと思うに納得できる材料で。でも視界には空。同じ視線に雲。
照りつける太陽。は無くとも昼のように明るい。
遥かに続く空階段でも在るなら登っても見たいと思うのは間違いだろうか。
考える足下は確実に床か地面のような硬さが存在している。
しかし、見えない。ということは終わり。が解らない。と言うこと。それは足踏みをする。という無駄時間が。
くくく。と短く。
そして気が抜けるように息を吐く。
肩の力を抜いて屈伸運動。
その場で軽く飛んでから一歩目を踏み砕くように力強く前に出す。痛みがある。
それが何。
と言いたいが聞いてくれる相手など空の上。当然にして居るはず無く。
力強く前に歩いていく。
痛み続ける身体。しかし痛みはあれど疲労は無く寧ろ高揚する感情が留められないし止まらない。
止めようという感情など遥かな時に置いてきた。
そして飽きていた。
反しての高揚は止まらない。収まることもないその衝動に動かすように意思をもって動く。
不安不信恐怖。
何よそれ美味いかとかさ聞かれたらこう答えるね。
ああ美味しいとは言えるね。
だからその一歩を踏み外すと瞬間の浮遊感と直後の落下。
命。知らんよそんなの。
だからこそ。全力解放。全方位。絶滅投下。
全身に当たる風圧。延し掛かる重力。表情も終わっていく。
速度など知らない。次第に終わりが近づいて全身を壊す様な痛みを思い描いて溺れていた。
指を組み目を見開いていたが景色は疎ら。欠けて。伸縮して飛び散り。残骸も残さず色を失い細切れとなって霧のように散っていった。
次は。
水中だった。
前触れなく変わり呼吸の為の息は空気の変わりに大量の水を肺に溜め慌てて水上を目指した。
水面に顔を上げると同時に肺に溜まった水を吐きだすため噎せて体外へ吐き出し一通り終わると周囲を確認する。
海。ではないだろう。
塩の味がない。なら湖か。
それも途轍もない途方ない大きさの。
捻る。唸り肺に空気を吸い込み一気に吐き出す空気の玉は水面を割いて遠方まで進んで消えていった。
終わらない。その後も複数回も咆哮を行い最後は上空に溜め。
それはそれまでの咆哮より大きく密度も比にならない。
威力も当然に。
規模も。
正面を向いて放つ。
時間差により窄むそれまでと異なり全てを維持したままに進む塊は距離を進んで遥かな遠くの何処かで着弾し爆発爆音を届けて時間差で爆風を運んで水面を波立たせ後悔した。
攫われて水面に激しく揺られ渦に巻き込まれて底へと運ばれて。
すさんでいく心に従って水底を壊す。
しかしこれまでと違い何か。
触れては成らない何かを壊したような感覚で景色が一変した。
次は本当に何もなかった。地面や空。空気さえ。
色も無いに等しい。
移動しようとしても、目的地さえないので意味はないと思うが何もしないというのも又、無駄と知っていてから移動してみた。
足は動いているが足から伝わる起点が無く進んでいるのか解らない。立ち止まり少し考えてみる。
両手を上げて言葉を紡いでみる。
何も起こらない。
少し考える。
構えて拳を強く握りしめ。足下を破壊する気持ちで振り抜いた。
何も無い。
虚空を通過するように力は遠くへ。
傾げながらもう一つ。
つま先を軽く下を叩くようにし気持ちを落ち着かせるように呼吸を整え片足を上げて踏み抜くと。
何も感じず踏み外しているのに留まっていて落ちているのにその場所に立っていてしかしやはり何かが崩れて落ちていくという感覚はあって。でも身体に当たる風圧もないのて落ちてはない。
踏み抜いたと思う場所も床か地面がある。存在はしている。
悩んで傾げてると直接頭に警告の言葉が刻まれるように聞こえた。
『警告。本筐体の構成核が破壊された事により後僅かで本筐体は完全停止します。よって本計画は度重なる内部異常により全てを再構築するため繋がる全てを一度初期化するため繋がる筐体を一度連鎖崩壊します。内部に残された方は自力での脱出を行ってください。尚、本件に関する汎ゆる事柄に関して責任一切を負いませんので自己責任にて対処してください。それでは初期化まで2、1。装置起動。これより全ての筐体に内蔵されていた崩壊が連動し本体含めた全ての構築された世界が消滅します。』
元々見えないものが感覚さえ無くなり自分の終わりを実感しながら落ちていく。
理不尽すぎて泣いていいのか怒るのか笑っても咎められないか。と思って途中で思考すら切れた。




