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一章〜脱路〜

眠っていた。そして久方の肌に触れる柔い感触。もっと眠っていたいがその意識を吹き飛ばし目を開ける。が暗くて見えない。しかし闇に浮かぶ二つの光。それが瞳と気づくに時間を要せず。短く言葉を紡いだ。

「なんでいるのですかイズネ。」

寮に住んでいる番獣。

犬と狐を合わせた容姿から合わせて少し捻った名を与えられたもの。

それがどうしてかいてその柔らかな体毛に包まれていた。

気づくまでもなく今いる場所が一月以上も過ごした檻ではないと。

何かが原因で落ちたと考えて、今いる場所の検討をしても意味が無いことを思い出していると小さく鳴いて、いやこの場合は泣いているのか。

寂しさからくるのか頭を擦り付けて甘えているようだった。

「止めなさい。」

止めると止めたかがまだないていた。

何時以来でしょうね会ってないのは。

とこの一月以上の拘束という休息を半分満喫していた事。

仕事の心配しかしなかった事。寮の事は考えてなかったということに今更思い出してイズネの毛を引っ張った。

当然泣くかなと予想したのに泣かずに大口を開けて頭から加えられ口内で無限にしゃぶられた。

嗜めるように言うと口内から解放され胸から上が唾液塗れで不愉快だ。と言葉にしようとして諦めて軽く殴った。

思ったより吹き飛んで泣き飛んで戯れてきた。

止めて。と思ったが諦めて好きなようにさせた。


あの後、三回加えられてしゃぶられ垂れた唾液により全身が。

「うぅ気持ち悪い。嬉しいのか怒っているのか知らないですけどどうしてわぐ。」

言っている途中で毛に包まれてしまう。

「殴り潰すぞ。」

というと距離を開けて離れた。

だが直ぐに戯れてきた。

これを何度と繰り返していると何かの光を見つけた。

漏れている光へ向かおうとしてイズネが叩いて飛ばしてしまった。

止めようとしたのか。

飛ばされた方は。

傷なく全裸。


冷める感情は無言の暴力という形で答えられた。

この時、この場所で悲鳴と享楽が共演していた。


闇に浮かぶ光に近づいて前を通り過ぎていく。

見たい衝動はあるのだがイズネの行動の意味を考えて汲み取った結果、前を通り過ぎるという形の無視と決めた。

数歩歩くと背後で何か激しく。物凄い激しい叩く音がしたが無視して更に奥へと進んでいく。

激しい叩きは一層増して聞こえた音の最後は全てを震わせる程の威力だった。

しかし何も思わず考えず進んでいく。


光を過ぎた先は闇しかないので適当に歩いていたがイズネに静止させられた。

手を伸ばすと硬い物に触れる感触がした。

行き止まり。と考えてそれはないと否定し左右に道が続いているか何方かに曲がっているか。

調べようにも暗くて見えない。

しかしイズネに服を引っ張られてた方に向かうと今度は上から光が漏れていた。

悩んだ。

漏れた光の元が電灯なら良い。 しかし獲物を誘引する何かであった場合は正直、面倒くさい。

だから。イズネに軽く触れて合図する。

と唸り一吠えする。

空気を渡り上からの光が遠ざかるように消えていった。

何も無いかを確認するため待っても何も起こらなかったので先を進んでいく。


手を横に沿わせながら進んでいくと今度は床と両壁から光が溢れていた。

そのものが光っているようにも見えていた。

何故か笑ってしまった。

イズネに飛び乗って合図する。すると前脚を軽く上げて床を軽く叩く。

そうイズネに取って軽く。

だが、その一叩きは凄まじく、周囲に亀裂が入ると同時に砂粒と化して下へと落ちる。

事はなく。砂粒に飛び乗り跳躍して上へと登っていく。

「くおがぁぁぁあ。」

と吠えながら登る。触れているその手に伝わる感情は高揚。

楽しいのだろう。

が。楽しいのは良いが勢いがあり速度もあり捕まっているだけで腕が痺れてくる。落とされないように既に持っていた刃物で。

一刺し。

だが予想に反して柔らかく包まれて弾かれて、勢いのままに落とされた。

沸点が低かったのか。

知らずに既に持っていた柔らかく硬くそして嵌め込む形の物でイズネの複数ある尾を掴みそのままの状態で登りついた。


電気が通っているのか明るく。

その場には複数の目線。

そして複数の重火器。

囲むように配置されたその数は数えるのも嫌になる。しかし現在地は外に非ない。

どっちだよと誰かが言いそうだが。

現在地は天井を床にして武器を構えている相手を見あげていた。

安全装置は解除されている。

構えから引き金を引くまで僅かもない。

そして銃口から射出される弾丸は間違いなく標的に向かって放たれた。


驚くしか無かった。

放たれた弾丸は全て弾かれる事なく。ましてや命中する事もなく世界から消えたのだ。

動揺は身体の動きを緩慢にし次への行動を遅らせる。

認識した時に身体は乖離し、しかし意識は確かにあり自分の身体が弄ばれる光景を言葉を出す事もなく命の終焉まで見せられた。


絶叫の多重層。

魂の叫びのように全員が喉を潰し倒れ痙攣し口から赤い泡を漏れ出し気絶した。

イズネは大口を上げに向けながら何かを食す様な動作を繰り返して喉を鳴らし続け最後に口周りを舐め回して鳴いた。

何か満足したらしい。


全員の命はある。

しかし心が無事とは限らず、だからと言って助ける義理も義務もない。

でも邪魔だろう。と考えて壁際に寝かせて持てる武器を回収して先へと進んだ。


階段を見つけたので昇り上の階層に来たのに何もなく。

扉も無い。

あるのは永遠と続く廊下。それも入り組んでいるので今は進んでいるのか戻っているのか。登っているのか降りているのか分からない状態だった。

階段への戻る道なんてのは忘れている。

イズネに聞いても自信なさげに短く鳴いて申し訳なさそうに伏せてしまった。

感覚を研ぎ澄ますよう指示しても首を振った。

何かが邪魔しているのだろう。と検討を付けているが。それが何かまでは判らない。

仕方なく壁に手を当てながら進んでいく。


この方法に間違いはない。

何故なら壁伝いに進めば何れは出口に。

しかし現実は不愉快な程に不理解すぎた。

時間が掛かろうとも出口には向かっている筈なのに。一向に出口が見つからない。

見つからないというよりも出口自体が無いのかもしれない。

という考えが過るが払拭する様に歩いていく。


慎重過ぎたと反省して。

イズネを見ると体調も良くなった様に見受けられ合図して毛を掴む。

初速から最高速度。

口から変な声が出た。

掴む手に力が入る。

振り落とされないようだが。

何か心が。

消え、る。


起き上がる。

周りには机二つ。

他にはイズネが離れた位置で寝息をたてていた。

身体に傷などはなく、しかし妙に怠さを感じて横になろうとして胸に痛みが走る。

「ひぐっ。」

一瞬の痛みだったが横に成ることを諦めるに充分。

呼吸を数回して整え次第に痛みの余韻が引いていく。

整え終わると改めて見てみる。

自分の居る位置から見て机が左に離れた位置。その反対側にイズネが寝ている。

そして壁と天井に床と。

それだけ。扉も窓も通気孔さえない。密閉された部屋。

冷たい汗が流れる。

頭を振り立ち上がりイズネに近づき触れて揺する。

しかし中々に起きない。

軽く叩いても毛を数本抜いても。最後には力任せに叩いてみても起きない。

寝息はしているので生きてはいる。

生きているように見えている。

悩む。

それはない。

だから躊躇なく一突きで核を砕いた。

するとイズネの形は崩れ去り寝ていた場所から発光し内部機構が作動して扉が開いた。

悩んで時間を労するより先に体が扉の先へと。


落ちる感覚もなく。妙な浮遊感に気持ち悪さを感じながら直後に嘔吐して遠くから音が聞こえて足に硬い何かに接地する感覚を認識して閉じていた目を開けると。

綺麗な地面の上に立っていた。

しかし、狭い地面だと気づいて何かの話し声が聞こえその方向へ行くと眼下に談笑している人達。そして地面と認識していたのはどうやら箱のようでその上に出ていたらしい。しかし先の檻とは違い楽しそうな人達の話し声に気が緩んで声を掛けてしまった。

その瞬間。


それはまさに悪意に満ち満ちた。

世界を覆るような舞台。演者は兵士。

違う。それは軍人。それも大隊規模のである。

対して観覧者は寂しくも一人。

その一人だけの観覧者に対しての意識は黒くて重く、見える全べてを壊して余りある悪意の塊を向けられたその存在は。

「ふはあっくふうっ。」

欠伸と伸びを同時にして立ち眩みで足下が縺れていたが立て直して遠くを見て乾いた笑いを大隊に向けて手を振った。

逆撫でしかなく。

更に激しく向けられる物理と物質。

乾く心があるなら見てみたい。

そう考えていると頭を掴まれる感覚と同時に後ろへと引き抜かれた。


意識は認識を上書きし視覚を指定して幕間を楽しむ事を勧められた。


戻った意識の最初に見えたのは倒れ伏し息も動く事を止められた軍人の姿。

何も動かす事はなく只、地面に倒れていた。

振り返ってみても居たはずの綺麗な箱はなく荒野が広がるのみで空には雲が僅かに流れ太陽は自身を照らし続けていた。

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