第8爆
それは、アイシアが以前まで所属していた冒険者パーティー『セイクリッド・ハーツ』のメンバーだった。
「おいおい、見ろよ。誰かと思ってきてみれば……うちのパーティーを追放されたアイシアちゃんじゃないか!」
「あらら、こんなところにいたんですか。奇遇ですね」
二人はアイシアを見て嘲笑する。
アイシアは何も言わず俯いた。
「ふむ、君たちは知り合いなのかな?」
そんな中、リオだけが冷静に訊ねる。
「んんっ? なんだ、このガキ」
「ぷぷっ。アイシア貴女、パーティーを追放された後はこんな子供の世話をするようになったのですかぁ? ぷぷぷっ」
「ぎゃははは!! まあ、お似合いなんじゃねーのか? もっとも、チビ二人が並んでるとどっちが世話されている方なのかよくわかんねーがな!!」
『セイクリッド・ハート』の二人は、リオのことを馬鹿にするかのように笑う。
「……」
アイシアは悲しげな表情を浮かべていた。
「……なんだよ、その目は? 文句でもあるのか? この俺様に?」
「いいえ、なんでもありません」
アイシアは小さく呟く。
「はぁ~っ。なんかシラけちまったな……。おい、さっさと依頼を終わらせて帰ろうぜ」
「そうですねぇ。さっさと見つけて帰りましょう」
『セイクリッド・ハート』の二人は、そう言ってその場から離れようとする。
だが――、
「ちょっと待ってくれないか? 女の子を馬鹿にしておいて、そのまま立ち去るつもりかい?」
リオが二人を呼び止めた。
「あん? なんだ、お前?」
男はリオを睨みつける。
「僕はその子と同じ、『女神スキル』所有者だ」
「『女神スキル』所有者だと……?」
男が眉根を寄せた。
「そうさ。そして、その子は僕のパートナーだ」
「はっ、ふざけるな! そんな何人も『女神スキル』所有者がいるわけないだろ」
「いや、事実さ。現に、ここにいる大蛇は全部僕が倒してみせた」
そう言ってリオは、指差した方向にいる大蛇の死体を見せる。
そこには確かに、巨大な蛇の死骸があった。
リオの言葉を聞いた二人は驚愕し、息を飲む。
その額には冷や汗が浮かんでいた。
「な、なぁ、冗談だろ?……だって、おかしいだろ。そんな子供が、こんなでかい魔物を倒すなんて……」
「……」
男の質問に対して、リオは答えなかった。
代わりに、リオは男を見つめ返す。
その視線には明確な敵意が含まれていた。
リオの目を見た瞬間、二人は思わず後ずさってしまう。
リオが放つ威圧感に当てられたせいだろう。
「う、嘘……? まさか、本当に……」
「ちっ! ……おい、行くぞ」
「えっ!? は、はい!」
二人は踵を返して走り出した。
「……行ったか。これでもう大丈夫だよ」
二人の姿が消えたことを確認すると、リオはアイシアに声をかける。
「ありがとうございます」
アイシアは深々と頭を下げた。
「別に大したことはしていないよ。それより、君はこれからどうするつもりだい?」
「……」
アイシアは無言になる。
すると、リオが何かを思い出したかように口を開く。
「もし良かったらだけど、僕の家に来るかい?」
「えっ!? でも、ご迷惑では?」
「いや、ちょうど人手が欲しかったんだ。それに、君を放っておくことはできないからね。まあ、無理強いはできないけど……」
「いえ、お願いします」
アイシアは迷わず即答する。
「うん、決まりだね。それじゃあ、行こうか」
こうして、アイシアはリオの家に行くことになった。
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