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第2爆

「ここか……」


 アイシアは目的の人物の家の前にいた。

 目の前にある建物は、周囲に建物が無いこともあり一際目立っていた。

 しかしこの辺り一帯は人通りが少ない場所であり、その中でも更に森の奥にある大きい屋敷なので、殆どの人がここに建物があることに気づかないだろう。


「失礼します」


 意を決すると、アイシアは扉を開き、家の中へと入る。

 すると、そこには一人の老婆がいた。

 白髪で腰が曲がっており、一見すると優しげな風貌に見えるが、彼女の放つ威圧感は凄まじいもので、一目見ただけでも只者ではないことが伺える。

 おそらく、この老婆がランジュの言っていた魔法使いだろうとアイシアは思った。


「どちら様かな?」

「突然の訪問をお許しください。私はアイシアと言いまして、あなたにお願いがあって参りました」

「私に? ……ふむ、何かね?」


 アイシアは、老婆にこれまでの経緯を全て話した。

 自分自身のこと。パーティーメンバーから追放されたこと。そして、これから先どうすれば良いのか分からないことを全て打ち明ける。


「なるほど……そういうことだったのね」

「はい。私はどうしても力が必要なのです。私にはもう頼れる人が他にいないので、どうか力を貸して頂けないでしょうか?」

「……」


 アイシアの言葉を聞いた老婆は黙り込む。

 そしてしばらくの間、沈黙が流れた後、老婆は口を開いた。


「……あいにくだけど、他を当たるのね」

「そうですか。やはり私などでは力不足なのですね……」

「いいえ、誤解しないで。貴女には力がある。けれど、今の貴女のやり方ではダメだというだけよ」

「どういう意味でしょうか?」

「簡単なことさ。強くなるには何が必要だと思う?」

「それはもちろん、鍛錬して経験を積むことでしょう」

「確かにそれも大事だね。でもそれだけじゃないんだよ。もっと大事なことがあるのさ」


 そう言うと老婆は、アイシアに手招きする。


「ついて来なさい」


 そう言われ、アイシアは言われるがままにその後について行く。


「あの、どこに行こうとしているんですか?」

「それは着いてからのお楽しみだよ」


 アイシアの問いに対し、老婆は悪戯っぽく微笑んだ。やがて二人は廊下を抜け、地下室へと向かう階段を下りる。


「ここは……」

「見ての通り、魔法使いの実験室さ」


 アイシアは、恐る恐る部屋を見回す。

 部屋の隅の方には、不気味な液体が入った瓶や謎の装置が置かれており、壁には動物の皮らしきものが貼られている。


(うっ……なんだか怖い……)


 室内は薄暗く、得体の知れない器具の数々に、アイシアは恐怖を感じずにはいられなかった。

 そんなアイシアの様子を察したのか、老婆は安心させるように語り掛ける。


「大丈夫、別に取って食おうってわけじゃないから」

「は、はい……」

「まずは座ってくれるかしら」


 アイシアは椅子に座り、老婆は部屋中に聞こえるような大きな声で呼びかける。


「ドーチェ! いるかい!?」

「はい、ここにいますよ」


 老婆の声に反応したかのように、暗闇の中から一人の少女が現れた。

 身長は、肉体年齢13歳のアイシアよりも低く小柄だが、凛とした顔立ちをしており、どこか大人びた雰囲気を感じさせる。

 背中まで伸びた長い黒髪をポニーテールにした彼女は、青い瞳をしており、肌は透き通るように白い。

 一見すると、まるで人形のような容姿をしている。


「紹介するわ。彼女は私の助手のドーチェよ」

「よろしくお願いします。……シャリー、この人は誰ですか?」

「ああ、彼女はアイシアと言ってね。訳あって私が相談に乗っている子なの」

「そうなんですか。初めましてアイシアさん。ボクはドーチェといいます」

「あ、こちらこそ……」


 アイシアは戸惑いながらも、なんとか挨拶を返す。まさかこんな場所にこんな小さな子がいるとは思わなかったので、アイシアは驚きを隠せなかった。


「それで、今日はどういったご用件なんですか?」

「実は彼女に魔法を覚えさせてほしいのよ。『人工精霊』を使ってね」


 その瞬間、ドーチェの表情が変わった。

 それまで穏やかだった彼女だったが、老婆の発言を聞くと急に真剣な面持ちを浮かべる。


「……本気なの? いくらなんでも無謀すぎると思うけど」

「ええ、分かってるわ。でも、試してみる価値はあると思うの」

「どうしてまた急に……。もしかして、彼女を新しい実験体のするつもりですか?」

「いいえ、そういうわけではないの。ただ、彼女にはその力が必要だと直感的に思ったから。それに対して、彼女がどんな答えを出すのか、少し興味もあるしね」


 シャリーと呼ばれたその老婆は、不敵な笑みを浮かべながらアイシアを見る。

 対するアイシアはというと、二人の会話の意味がよく理解できず、ただ呆然としていた。


「はぁ……分かりました。そこまで言うならボクから言えることはありませんしね」

「ありがとう、ドーチェ。じゃあ早速、始めましょうか」

「あの……何をすれば良いのですか?」

「今からあなたには、『人工精霊』と契約してもらうのよ」

「契約……? 一体どうやって……」

「まあまあ、とりあえずやってみれば分かるから」


 戸惑うアイシアに、シャリーは優しく笑いかける。

『本作を楽しんでくださっている方へのお願い』


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