第2話 約束
《7月3日 赤松高校 女子生徒 転落死》
雨の激しさが増す。
あまりに唐突で頭の整理がつかない。
「私…人を殺した…」
何を言えば、どうすれば…。
「え…、冗談じゃなく…」
「ごめんなさい、ごめん…」
「…………」
「…………」
「…とりあえず、警察に」
「うん…」
そうだ、まずは警察に……。
いや、彼女は俺に話してきたのだ、まさか
なんとなく殺したなどという理由ではないはず。
「…いや、何があった」
八神 琴乃は少しづつ話し始めた。
_ _ _ _ _ _ _ _ _ _
私は今日、言わなくてはならない。
いつもとは真逆の通学路で待っていた。
「あ…、杉山さん」
階段からゆっくりと登ってきたのは
杉山 真莉、顔も見るのも恐怖を感じてしまう。
「は、なんでいるの」
ビニール傘越しからにらめつけてくる。
「あの画像消してください」
「え、まじでなんのこと」
もうこの手には乗らない、そうして学校中に
広がったのだ。
「あー、もしかして前のコラ画像のこと」
「それもだけど、また新しいのを作ってるって
友達が」
「え、あんた友達いたの」
「話をそらさないで!」
「は、」
もういちど、にらみつけてくる。
2か月ほど前に学校中にある画像が出回った、
私の顔とAV女優の写真を合成したもの……。
「何でこんなことするの」
「あー、前のはやりすぎたって」
へらへらと笑いながら続ける。
「で?、どいて」
「おねがい、消してよ!」
それは学校に出回っただけではなく
中学の頃の友達にも知られていた。
「まじうざい、そんなに言うんだったら
また、ばらまいて……」
「やめて!」
杉山の手にあったスマホを奪い取ろうと
飛び出す。
「おまえ、ふざけんな!」
雨でずぶ濡れになりながら取っ組み合い
何度も手を伸ばした。
「くそやろ……」
「え…」
雨が降っていたから。
地面が濡れてたから。
そういう言い訳すら出てこない。
音を立てながら階段から大きく滑り落ちていった。
「ごめんなさ………」
一瞬で地面に大量の血が広がる。
このとき今思えばすぐに駆け寄って誰かを呼ぶべき
だったのだろう。
しかしこのときの私は……。
逃げ出してしまった。
_ _ _ _ _ _ _ _ _ _
「ごめん…もうどうしたらいいのか」
「…………」
何が悪いとか客観的に見れば八神にも非は
あるのだろう、ただ……。
俺の中には怒りしかなかった。
「なあ八神、警察行くのやめよ」
「え……」
もはや俺には八神が悪役になる理由が
分からなかった。
「八神は……、悪くない」
「でも、それは…」
「隠し通すんだ、八神は人を殺していない」
「…………」
彼女の目からは涙があふれていた。
「なにもなかった」
この選択が世間一般から見ればダメなことなの
だろう、しかしこの八神の姿をみてこう言わずには
いられなかった。
「約束だ、一生をかけて隠そう」
「…うん」
「俺も背負う」
本当に浅はかな考えだったのだろう。
《7月8日 赤松高校 女子生徒 自殺》




