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第11話 あの日の神社

「はい、この間の続きから……」


 先ほどの騒動があったにもかかわらず、担任の教師は

気にも留めぬ様子で授業を始める。


「あそこの神社の伝承について、夕方のとき過去に戻れるなんて

 話があるが……」


 誰もこの話を真に受けて聞いているものはいないだろう。

しかし…この話は本当だった、夕方の時人生で最も戻りたい時間に

戻ることができる。人生で一度だけ…。


 そう、奇跡は一度だけ…もう2度とないチャンスなんだ。

 この一度だけという言葉が何度も頭にうかぶ。


 今日の小野寺の件は何とかなったものの

まだ、琴乃への誤解は残っていた。

 これを解かない限り琴乃の学校生活、いや人生設計にも影響がある。


 あの小野寺の怒りに満ちた目…。

自分が恥をかいたことを俺と琴乃への怒りに変換して攻撃してくる

可能性も十分にある。


 授業はあっという間に終わり休み時間に入った。

今朝のことでクラスは非常に静かになっていた、話し声がしても

ちらほら聞こえてくるがまたすぐに静かになる。


 いつもならこの状況では寝たふりか机に教科書を並べ

時間が過ぎるのを待っていたが今日はそういう訳にもいかない。

 すっと、息を吐き立ち上がる。


「なぁ琴乃」


 静かな空間に穴をあける。


「帰り道ちょっといいか」


_ _ _ _ _ _ _ _ _


 学校が終わってすぐに琴乃を連れ出す。

琴乃はすこし不思議そうにしながら二つ返事で了承してくれた。


「ごめんいきなり」

「全然いい、というか意外だった

 優太から話しかけてくれて」


 そんなことないはず…いや、俺がタイムスリップしてからは

あまり話していなかったか。


 時間を超えてきた世界での日常にまだ慣れていない。

 しばらくして目的の場所につく。


「この神社…」


 琴乃が死ぬ前に一緒にきた場所、そしてその時は分からなかった

SOSを出していたところでもある。


「なつかしいねーここ」

「そうだな」


「小さい頃よくここで遊んでいたよね」

「そうそう」


 この神社で琴乃は過去に戻りたいと言った、それは

何気ない一言だったが確かに琴乃のSOSだった。


「あ、おぼえてる?授業の話」

「過去に行けるとかのやつか」


「私この話好き」

「そうだな俺もだ」


 自分が体験するまで全く信じていなかったが…。


「優太はどっちに行きたい、過去か未来」

「そうだな…」


 考えることもなく答えはあった。


「今は過去かな」

「へぇ、なんで」


「今まで…見て見ぬふりをしてきたこと、言いたくても言えなかったこと

 いっぱいあったけど…全部に蓋をしたんだ」


 琴乃のことだけではない、俺の人生のほとんど…言えばキリがないほどある。


「ほんと今更って思うけど、蓋をしたもの全部をやり直したい」

「…そっか」


 ただ…今はチャンスが来たんだ、もう絶対に離さない。


「琴乃は?」

「私は……」


「私も過去かな、優太と同じかな…やり直したい」


 苦しそうに笑った。


「私なりに実は頑張ってみたんだ、友達関係のこと…でも」


 杉山の言葉を思い出す、誰でもよかったのなら琴乃に落ち度は

なかったんじゃないだろうか。杉山の自分勝手な…。


「杉山さんにあぁ言われたら…どうすればよかったんだろう…」


 誰でもよかったのなら、きっといじめを阻止する方法は

ほぼ無いと言っていいだろう。


「また…一人になるかもしれないって、ずっと…」

「…………」


 俺におくられた手紙を思い出す、俺への謝罪…

俺を一人にしてしまったと…。

 琴乃の手をにぎる。


「琴乃は一人じゃない」

「…………」


「琴乃がしんどい時は俺が横にいる、何もなくても俺を

 頼ってくれ」

「優太…」


「だから大丈夫…」


 琴乃の目から涙が溢れ出る。


「一人にはしない」


 これは琴乃が俺にしてくれたことだ、今度は

俺が琴乃を支える番だ。


「ありがとう…」

「一緒に乗り切ろう…」


 初めからこうしておけば…後悔してももう遅い。

だが、前より少しはマシな選択が出来ただろうか。


 琴乃と分かれ家へ歩き出す。

明日からの平凡な生活をただ望んだ。


_ _ _ _ _ _ _ _ _

《7月5日》


 早朝6:30

学校の門を越え早足に中へ入った。


 この教室の後ろの扉は隙間に定規をねじ込むと

簡単に開けることができる。

 教室に入るとその静かさに驚く…いや、そんなこと

どうでもいい。


 とある机を見る…、あーイライラする。

勢いよくその机を蹴り飛ばし教卓の方へ向かう。


 黒板は薄汚れていてかなり年季のはいったものだ。


…思い出したらまた腹が立つ。

 あのくそ女、あとあいつも……。


 チョークのはしる音が教室に響く。

黒板いっぱいに文字を書くと少しイライラがおさまった。


 あぁ、朝になったらあいつらどんな顔するか…。


 廊下の方から物音がする、すぐにこの教室から

飛び出した。

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