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第1話 雨のせい

 もしも、未来がどうなっているか分かるのなら…

俺はもう少しまともな行動をとっていただろう。


_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ 


「えー、今配ったプリントの2枚目見てください…」


 教師の話し声はむなしく、授業中だということも関係なし

に騒ぎたっている。

 ここは田舎の地方高校の中でも指折りの底辺高校だ。

自分の家から近いという理由だけで選んでしまった

ことを後悔した。

 ………いや、実際は自分が選べる立場でなかったのだ、

家が近いというのもただの言い訳でしかない。


「えー、この地方の伝承として古くから言われている…」


 授業は総合、この地方の歴史について学ぶというもの。

正直言って全く興味は無く大した成績もつかない。

(無駄な授業だな……)


「とくに、金剛神社で言われている伝承で、人生の一度だけ

 過去に戻れるという言い伝えが……」


 くだらない、でもタイムマシーンがあるのなら

俺は未来にでも行きたいな………。


『キーンコーンカーンコーン』


「はい、ありがとうございました」


教師は即座に教室を後にする。あれでも一応この

クラスの担任なのだが…。


「まじでダルかったんだけど、もはや総合の時間

 いらなくない」

「そうだよね」


 授業時間に増して騒がしくなる。


「てか、プリント全く書いてないんだけど……」


 クラスのリーダー的女子がニヤリと表情を変える。


「ねー八神さん、プリント見せて」

「うん……」

「サンキュー」


 クラス全員に見せつけるかのようにする。

今のは小さなことだがこのクラスではいじめが起きている。

 しかもその相手は……。


「ねえ石田君…」


 急に自分の事を呼ばれて動揺する。


「今日当番だから黒板消しお願いね」

「わかった八神…」


いじめを受けている少女、八神琴乃は俺の幼馴染だ。

 いつからだろうか、苗字読みに戻ったのは…、

中学の時は名前で呼んでいたが。


「それくらい自分一人でしろよ、なー石田君」

「えっ、ははっ……」


 やめろとか、いじめるなと言う正義の味方

ではなく俺は傍観者になった。


「あーマジでイラつくわ」

「真莉その辺にして……」


「はっ、なに」

「いや………」


 加害者の杉山 真莉。

 俺と同じ傍観者、一星すず


 俺はこの学校、俺自身に…失望した。


_ _ _ _ _ _ _ _ _ _

《7月3日》


 翌朝、雨が激しく降っている、自転車登校には

すこし面倒くさい。

 雨のせいでやや遅刻気味になり教室に入ると

いじめの主犯格の杉山がいない、

またいつものさぼりか。

 

「はい、ホームルーム終わるぞ」


 遅刻した俺をチラ見しながら教室を出ていく。

ふと、八神の方へ目を向けた。

(なんか濡れてる気が………)

 少し震えている手を抑えていた。


 嫌な奴がいないと時間は案外はやく過ぎるもので

あっという間に1日の授業が終わる。


 帰り道、雨はまだ止まず激しさを保っていた。

カッパをすり抜けた雨が汗と混じり何とも言えない

気持ち悪さが残る。

 母親と2人で住むアパートに着くとすぐさまカッパを

脱ぎ捨て居間に座り込こんだ。親は仕事でいない、母子家庭なので

中学のころから一人でいることが多かった。


『ピンポーン』


 

 チャイムの音でようやく立ち上がる。

いったい誰か…………。


「え、なんで…」


 ドアの前には雨に濡れた八神の姿があった。


「ちょっ、どうしたんだよ」

「石田君…どうしよ…」


 声が雨の音にかき消されそうになる。


「とりあえず中に入れ」

「…………」


 八神の顔は憔悴しきっている。


「ゆっくり話して、ちゃんと聞くから」

「私……」


 雨の音で消えてほしい、その言葉は

あまりに唐突だった。


「人を殺した…」

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