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冒険者教育論  作者: ゆきつき
1章ダンジョン探索
7/30

7.ダンジョン探索

 いっっったあああ。

 ……いや、痛いで耐えれてる。つまり生きてる。良かったぁ。


「って、フォーセさんは!?」

「大丈夫。ヴァン君がクッションになってくれたおかげで、怪我もない」

「そ、そう」


 ……。こんな状況でも、やはり男と言う事かッ!?興奮を、抑えられないッ!?おpp、お胸のお柔らかさが尋常じゃないでございましてよ。というか、なんというか、普通に体全身がお柔らかでござんす。とても女性らしいと言うか。いや女性の体なんてものを知らないけど。


 ん゛、ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!?


「どうしたの?」

「い、いや。体を支える時に、腕に風穴開いたっぽい」


 俺の武器は、先端の直径75cmぐらいの球体に衝撃時に棘がでる仕組みのある球体側と、鎖の先端に鋭さのある、まあ刃が付いている。こちらも色々とギミック付だけど、一つは鉤縄みたいに、崖とかに引っかけたりする事ができる。

 で、そんな様々なギミックが重なって、フーコとかを抱えて鎖が伸びきった時の衝撃が、丁度球体から棘がでる程度の衝撃があったのだろう。だからまあ、腕にその棘が刺さった。

 まあフーコを投げた時だとかダンジョンで安全装置なしフリーフォールを経験させられたり等の、腕の怪我を気にしてる余裕が無かったから、気が付いてなかった。


「包帯は、」

「治療系はフーコが持ってる」

「マジでか。どーしよ、ってちょいちょいちょい、服を破るのは何故?」

「ん?包帯替わりにする。汗をかいてるから清潔じゃないかもしれないけど、止血するにはこれぐらいしかないの、許して」

「い、いやぁ、許すもなにも、少し以上に刺激的と言いますか」


 服の裾辺りをビリビリッっと破いちゃって、おへそ辺りが見え、見え、見えない!


「というか、服を破るなら俺の方でもよかっただろ。女性ものの方が服って高いじゃん。俺弁償とかできないよ?」

「そんなの良い。今は手当が先」

「いや、それぐらいなら俺でもでき」

「片腕じゃちゃんと結べないでしょ。ほら、じっとしてて」

「うっす」


 仕方ないとは言え、とてもフォーセさんが近づいちゃって、え?俺、汗臭くないかな?大丈夫かな?臭い男だと思われたりしないかな?


「これでよし」

「ありがとう」

「で、ここどこなんだろ?」

「少なくとも、30階以上の広いエリアに出ていない以上、30階より下の階層ではないはずだけど」

「それでも、今の私達で、ダンジョンをまともに攻略できるほど体力が残って無い」

「俺は一応戦えるぐらいには体力が残ってるはずだけど。うーん。30階より上の階層なら既に攻略済みだろうけど、俺達にそんな階層の地図なんて与えられてないし」

「もちろん頭に入ってるはずもない。なにせ私達学生にはダンジョンに縁がない」


 そーなんだよなー。ダンジョンってのは、ちゃんとした冒険者以外は入る事ができない。俺達学生は例外で、学園所有のダンジョンを、学園の許可さえ下りれば入る事ができる。けどこういう学園主催の遠征とかじゃない限り、ダンジョンに入る許可は下りない。

 だから、ダンジョンの地図なんて頭に入ってない。だってあっても活用する機会なんてないんだし。

 まあ頭に地図が入っていても、薄暗い一本道を見て、ここが何階のどのあたりなのかなんてわからないだろうけど。


「困ったな。俺は水をいくらか持ってはいるけど、食料が」

「モンスターを食べれば良い」

「とは言っても、火を起こす術もないし」

「ライターはあるけど、火種がない」

「ってなったら、自給自足も無理、と」


 さてどうしたものかね。

 いくら最短で階層を繋ぐ階段を見つけたとしても、1日で地上へ帰還できるであろう階層は7階まで。それもモンスターと出くわさない、道を塞がれない、分かれ道とかに出くわさずに1時間から2時間ぐらいで階段を見つけられたら、の話なんだけど。

 そしてまあ、何も食べずに動いてられるのって、どうなんだ?せいぜい3日とかで、空腹感でまともなパフォーマンスができなくなる。多分。何も食べずに過ごすってのは1週間ぐらいなら経験してるけど、その中で全力で行動しなければならないって言うのは、どうなるのかわからない。


「まあ食料事情もここが何階なのかも、正直どうでも良い。この階のモンスターに対して、どれぐらい戦えるのか、だ」

「自慢じゃないけど、そこそこ戦える自身がある」

「とは言え、だ。もしここが30階の一個手前、29階だった場合だ。そのレベルの階層だと、中堅冒険者ですら手こずるようなレベルのモンスターがわんさかいるんだ。わかってる?今の俺達じゃ、せいぜい10階のモンスターですら倒せるか危ういはずなだぞ?まあどんなレベルか知らないけど。少なくとも俺達は新米冒険者のレベルにすら到達してないはずなんだ」

「……」

「無言の圧力はやめて欲しい。俺に効く」


 なんか普通に会話できてた、ってか威圧的になってた。反省、はあとで。今は今やるべき事をやるべき。


「話を戻すけど、俺達はせいぜい、中堅と新米の間ぐらいの実力だ。もっとあってほしいと願ってるけど、結局俺達は学生だ。できる事に限りがあるんだ。己惚れるぐらいなら、過小評価しているぐらいが丁度良い」

「うん、わかった。けど、今からどうする?私達じゃ、モンスターに勝てない。でも勝てないと、どうにもできない」

「そーなんだよなー。逃げるにしても、最低限の実力がいるけど、その実力に到達しているのかどうかもわかってないんだもんなぁ。それに助けが来るまで待つ、って選択もなくはないけど、あんなトラップで落ちた場所が、既に発見されてる探索済み領域って可能性も低そうだしなぁ。さてどうしよっか」

「それがわかれば、苦労はしないよ」


 そーなんだよ。俺も散々否定だけしておいて意見を出すべきなのはわかってるんだけどさ。どーっしよっか。


「このまま二人で過ごす、ってのも」

「ありだね」

「え、あの、冗談のつもりなんだけど」

「うん。私も冗談」


 冗談で笑わせようとしたら、こっちがダメージ喰らった。心臓に悪い。


「とにかく、無時だって事をあの二人に伝え、……」

「天井、塞がってるね」

「さっきあそこから落ちてきた、なんて誰も信じてくれなさそうだな」


 まあ、聞いたことない出来事だったし、誰も信じなさそうだけど。


「とりあえず、移動します?」

「そうだね。この時期だと冒険者と出会えるかは期待できないだろうけど、ここに居ても見つけてくれないだろうから」

「りょーかい」






__________






 最初に出てきた敵は、ケルベロス、頭二つバージョン(バーサーカー)。

 俺は正直、足を引っ張てた気しかしないけど、フォーセさんのおかげで、なんとか生きて居られた。


「はー。自身無くすわぁ」

「ん、どうしたの?勝てたんだよ?」

「そーですね。こいつを持っていったら、討伐証明になるかな?」

「ならないでしょ。だって討伐対象じゃないんだから」

「一応、ギャグと言いますか、場を和ますつもりで言ったつもりなんだけど」

「あ、」

「……」


 ギャグにマジレスで返されると、とても悲しい気持ちといたたまれない気持ちでいっぱいになる。


「とにかく、行くよ」

「わー、おいてかないで」






____________






 今現在、落とされた階層から、2階は上がった。既に15時間以上は経っているはず。


「一応、モンスターは二人でなんとか倒せるね」

「二人というか、ほとんどフォーセさんが一人で倒してる感じだけど。自身なくすわー」

「ん?ヴァン君がいないと、私もここまで戦えてない。それに、ヴァン君がいなかったら危なかった場面もいっぱいあった」

「フォーセさんがそう思ってる倍ぐらいは、俺は助けられてるんだけどなー」


 男なのに、女子に守られるなんてのは、なかなかに悔しい所存でございますが。それも好きな人に守られてるってのは、余計に辛い。

 けどそうしないと、既に俺は死んでたかもしれないから。


「違う。私もヴァン君も、一人じゃ既に死んでる。お互いがいなかったらダメなの」

「……その発言は、なかなかに勘違いを起こしますよ?思春期男児には特に」

「だって本当の事じゃん」

「余計に性質が悪いよ!」


 惚れてまうやろ!


『う゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛』

「この咆哮、人間じゃないよね?」

「モンスターのだろうな」


 逃げるべきか?でも逃げるって言っても、どこへ?下の階層?それじゃあ逃げても先に進めないから、結局詰みと言うか。


「おいおい、軽い地震なら起こせるってかよ」

「ね、ねえ。私達、ここで死ぬの?」

「ビビる事はない、って言えたらどれだけいいかね」


 正直、俺一人なら、腰を抜かしてしょんべんまき散らす自信があるな。ギリギリ、横のフォーセさんがいて、俺と同じかそれ以上に怯えていて、俺を頼ってる感じになっているおかげで、なんとか平静を保てていると言うか、見えを張っていられる。


 ダンジョンの天井は、高いとも低いとも言えない、3,5m。その天井すれすれの高さの、ミノタウロスのモンスター。片腕が無いけど、筋肉隆々で歴戦の戦士みたいな感じに、体の至る所に傷が残っている。

 手には血が付いて錆びてる鉈がある。それも2mぐらいある大きさの鉈。遠いから半端な情報になるけど、刃こぼれが激しい鉈だ。

 そして俺達は、まあ、ある意味優秀な学生だから。自分の実力と相手の実力差ってのを、ある程度ならば理解できてしまう。まあ言ってしまえば、そんなの勘でしかないんだけど。その勘が一番嫌な囁き方をしてくる。『逃げる事すら敵わない』。


「マジでどうしよっか」

「私、死にたくない」

「……覚悟を、決めるしかないよな」

 ヴァン達は一刻も早く上の階層へ行きたいので、マップを作るとかしてません。勘で突っ走ってただけです。それで上へ行く階層を見つけつつモンスターからも逃れ倒しを繰り返してます。普通に優秀だったりします。


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