6.トラップ
宝箱があるとフーコに言われ来てみた。
「あれ、マジで紫か?」
「この薄暗がりで紫を断定できると思う?」
「そりゃそうだ」
確かに宝箱はある。しかも待ってましたと言わんばかりの、この先行き止まりの場所に。
けど色が何色なのかまでは、流石に断定する事ができない。
「ほら、見な。どう見たって紫じゃんか!」
「能力使う余裕は残ってたのな」
「いや、これがラスト」
「じゃあ使うなよ!」
フーコの能力は、火だ。まあ火を操ったり火を出したり等々、結構色々な事ができる、普通に優秀な能力だ。
「まあ確かに、紫に見えなくもない」
「でも、火の明かりを頼りに見ている分、青だとしても紫に見える、なんて事もなくはないんじゃないか?」
「もー、二人とも硬すぎ!どー見たって、紫の宝箱じゃん!ささ、中身を早く持って帰りましょ」
まあ宝箱が本当に紫なら、ありがたい事だけどね?既にばててるフーコにこれ以上無茶させなくて済む訳だし。
けど、時間が時間だからなぁ。これが紫色の宝箱じゃなかった時の時間のロスがヤバい。下手な賭けは結構厳しかったりする。
「ちょ、馬鹿、いくら学園側が設置したとは言え、罠がないとは限らないだろ!」
「フーコ、興奮しすぎ」
「それを止めに行く二人も警戒心ないだろ」
そうは言われましてもね?止めるには言葉じゃなくて行動でやらないと。
「「「は?」」」
宝箱の目の前。突如として、浮遊感を味わう事になった。
「おい、ヴァン、大丈夫か!?」
「な、なんとか3人無事だけど、正直耐久は無理」
咄嗟に、俺の武器の鎖側の先端部を天井に突き刺せた。突き刺さったと言うよか、いくつも連なった層に、刃が引っかかったって感じ。いつ落ちてもおかしくない。
「フーコ、大丈夫か?」
「うう、うち、ずっとヴァンの手を握ってられる自身がない」
「ってな訳だ、リヒト。フーコから飛ばすから、ちゃんと受け取れよ!」
「わかった」
ああ、腕が痛い。痛いけど、このままどこに落ちるのかもわからない状況で、3人一緒に落ちるわけにはいかない。
「おら、飛んでけっ!」
片方で武器を握って体を支えながら、10m近く人を投げ飛ばすなんて荒業、正直俺にできるとは思えない。
しかも片足にはフォーセさんがしがみついている状態。体のバランスが物凄く悪い。
こんな状態で、そもそも投げれるのかも怪しい。
「か、風?」
「うをっっと。しっかりとフーコさんは、って、鎖が、繋がってない」
「え!?じゃ、じゃあ、うちを助けて、二人は落ちたって事!?」
「今の突風のおかげでフーコはここまで飛ぶ事ができたけど、その突風のせいで、壁に引っ掛かっていた鎖が外れた、という事だろうか。けど一体、どこまで落ちたんだろうか?」
「そ、そんな事より、2人は無事なんよな?大丈夫よな?」
「ボクも焦っているんだ。ちょっとだけ黙っててくれ。思考を纏めたいんだ。いくらなんでも、学園がこんなトラップを仕掛ける事はない。なんたってダンジョンの壁はどのような手法を用いても欠片一つ持ち帰れないような壁で床だ。だからこんな質の悪い落とし穴は、学園が用意できるはずもない。じゃあダンジョンが?こんな前例を聞いたことがない。……前例を聞いたことがないと言う事は、こういうトラップに掛かった人達は皆、生きて帰れていないと言うこと?」
「ちょ、不吉な事言わんといてよ!」
「と、とにかく。ヘルプを使おう。解決にはならなくとも、現状を伝える事ぐらいはできる」
少ししてから。
「また風を感じた。あれはフォーセさんの能力なのか?」
「い、いや、うちが聞いた限りだと、風は使えなかったはずだけど」
「つまりヴァンがこの緊急事態でようやく能力に目覚めたと言う事。そしてここでもう一度風を感じたと言う事は、なんらかの事態が発生したと言う事。無事である事を祈るしかない」
「うう、無時でいてよ、フォーセ」
__________
あああああああああああ。
「あああああああああああ」
なんで俺は天上がそんなに高くないダンジョンで、紐無しバンジー、又はパラシュート無しスカイダイビングをしなきゃならんの?しかもフォーセさんを守らないといけない状況とか言うのも理解不能。
「私、手を離した方が良い?」
「……中途半端に空ではぐれるのも困るから、このままで」
け、決して、死ぬかもしれないから、どうせならフォーセさんと一緒に、とか思ってない。足だけだけど温かみを感じて嬉しくとか、こんな状況で思ってないから。思ってないから!
「ああ、風よ。どうせなら、もう一回力を貸してくれ。俺達が死んで、フーコ達に重荷を背負わせる訳にはいかないんだ」
ああ、床が見えてきた。ダメだ。死ぬ。どんぐらいの高さから落ちたのか知らんけど、少なくとも10秒以上は落下してる。流石に人間の強度的にも、そんなに落下してごつごつの地面に叩きつけられたら、絶対に死ぬ。
せめて、フォーセさんだけでも、なんとか。ならんか?いや、やるしかない。でもどうやって?やっぱ風がもう一回助けてくれないと。
「なんとか、頼む」
ちなみに生死は不明な状態ではあるものの、二回目の風が吹いているので、ヴァンは能力を使う事はできてます。まあメタい事を言えば、死ねば物語が進みません。まあここで主人公(仮)が死ぬのも、新しくていいと思いますこれ。
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