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「ふむふむなるほど…」
サブマスに登録されたわたくしは、このダンジョンというものの仕組を次のように理解しました。
1,ダンジョンはダンジョンポイント(略してDP)を使うことで操作できる。
2,ダンジョンのマスター、およびサブマスターはDPを使いダンジョンを運営する。
3,DPは下記のように入手するらしい。
├1,ダンジョンの外からくる人間などの生き物が自然に垂れ流している生命活動エネルギー(アストラルダスト)を回収
├2,魔術の行使によってダンジョン内へ還元される魔力をダンジョンが自然に回収
└3,例えば強い人間はたくさんのアストラルダストを出すので、長期的に滞在させるだけでお得だったりするらしい
4,DPでダンジョンに行えることは、主に下記の4つ
├1,ダンジョンの構造(部屋や通路を使って迷宮を作れるなど)変更
├2,罠の設置(罠の構造によってDPのコストはまちまち)
├3,モンスターを生み出すモンスタースポナーの設置
└4,その他スペシャルなモンスターの召喚
5,ダンジョンの構造や罠、スポナーの維持などには維持するのにDPコストがかかる
6,DPはマスターの魔力をつかって無理やり手に入れることもできる
なるほどー、大体わかりましたわ。
わたくしこれでも学園の学科は良い方なのですのよ。
そしてー、今のダンジョンのDP収支を見ると、なんと真っ赤な大赤字の状態なのでした……。
DP収入はゼロDPなのに、なぜかDP支出はざっと1億DPくらいなのです。
しかも所持DPも5千万DPくらいしかないんですのよ!!!!
いったいどういうこと????
維持コストの支払いは、今日の24時ですの!!!!
どうやって、あと5千万DPを稼げばいいんですの????
そしてそして、なんとDPの維持ができなくなると、どうなるかというとですね……。
本に書いてあったのですが、たった一言「ゲームオーバー」と書いてありましたわ。
しかし残念ながら、ゲームオーバーがいったい何なのかは、書いてありませんでした……。
ですけど、これすごいなんか嫌な予感がするんですのよね……。
この世界、ゲーム的な要素が多分に含まれているじゃあないですか?
だからきっと世界の維持にこのダンジョンが必要だったりとか、神の作ったルールでそうなってるとか、そういう感じのなにかに抵触しちゃって、終末なイベントが発生しちゃうんだと思うんですの。
ですので、これまでこのダンジョンを維持してきたはずの暗黒竜にどうするつもりなのか聞いてみましたの。
「すいません、ただいまこのダンジョンの収支を確認していたのですが……、明日の維持DPはいったいどのようにお支払いするつもりなのでしょうか?」
「あー、そうじゃキサマ、わしのことはベアトと呼ぶがよい、ベアトリーチェでベアトじゃ、わかったか?」
「あ、はい、ベアト様……それでは、わたくしのことはシャルとお呼びください」
「おお、なるほど、わかった。シャルか、シャルな……。わかったが、あー、ワシ物覚えがわるいから、もし間違ったら指摘するが良いぞ。サブマスターじゃしそれくらい許す」
(なんかいきなり距離感が縮まりましたわね)
「はい、ありがとうございます。それで収支の方なのですが……現在このダンジョンにはDPの収入が0のようなのですが、明日のダンジョン維持コストはどのようにお支払いする予定なのでしょうか?」
「うむ、それな、安心せよ。ワシの膨大な魔力をほぼ全てDPに変換することで、このダンジョンは維持可能である!!!!偉大なる暗黒竜とは、このダンジョンを維持可能な者の称号でもあるのじゃ!!!!ワシは毎日寝る前にすべての魔力をDPに変換し、このダンジョンの維持に当てておる!!!」
「ええええ!?!?!?」
な、なるほど、さすがは暗黒竜と称されるだけはあります。おそらく途方も無い魔力量をつかって、ゴリ押しでDPを生み出してるのですわ……。
「ちなみにシャルに隷属の首輪をつけたのは魔力が空になったワシをシャルが殺さないためでもあるのじゃ!!!!どうじゃ?ワシ賢いじゃろ?」
(あぁ、なるほど、そういう理由があったのですね)
「それでじゃな、シャル、魔力がギリギリでダンジョンを維持せねばならぬから、ワシは一人ではこのダンジョンが運営が難しい状態なのじゃ!!!」
「は、はぁ、なるほど?」
「もともとな、オヤジがこのでかいダンジョンを維持してたのじゃが、死んだじゃろ?それでな、世界の理が、この世界に生きてる普通の黒竜の中からこのダンジョンを維持可能な唯一の存在としてワシを選んだのじゃ、その結果、ワシは暗黒竜、そしてダンジョンマスターになったわけじゃ。しかし維持のための魔力がかなりギリギリなものでな。ワシは身動きがあまり取れん。オヤジが死んでから、お前を攫うまで、けっこう時間あったじゃろ?あれはな、ちょっとずつDPをためてだな、余剰魔力をすこしずつ作って、そこまで遠征できるようにしたんじゃよ」
(お、おぉ、なるほど?なんか世界の理とか重要そうなメタ設定が飛び出してきたが、きいていいんだろうか?)
(それより、やっぱわたくしを狙って攫ったんですね……)
「すいません、ちなみになんでわたくしだったのでしょう?」
レモンサワーの原液の瓶が…空でした。
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